ホーム > コラム > 企業法 > 外国法 > 第105回 英文契約書の基本の基本(タイトル,頭書編)

コラム

コラム

第105回 英文契約書の基本の基本(タイトル,頭書編)

H24.9.25 平良 夏紀

近年,取引の国際化により,様々な場面で英文での契約書作成が求められることが増えています。

もっとも,英文契約書のひな型を見ると,他では目にしない古典的な英語が使用されていたり,和文契約書とは異なった特殊な構成をとっているため,何が守らなければならないルールで,何がポイントなのかが分かりにくいかもしれません。

このコラムでは,数回に分けて,ひな型をもとに契約書を作成する場合や,取引の相手方から提示された契約書の内容を確認する際のヒントになるように,英文契約書の基本の基本を解説致します。今回は,タイトルと頭書です。

  • タイトル

    「契約書」の英訳としては「Contract」がまず想起されますが,「〜Contract」よりも「〜Agreement」というタイトルの契約書の方を多く見かけると思います。その理由としては「Agreement」(合意書)の方がより柔らかく聞こえるからであるといわれています。

    それでは,どのようなタイトルを付けるのが望ましいのでしょうか。

    和文契約書においても同様ですが,理想的なタイトルは,簡潔であり見たときに何の契約であるかが伝わるものです。

    売買契約の場合に「〜Purchase and Sales Agreement」と記載するのは,「Purchase」には「Sales」が伴うことは明らかなので,単に「Purchase Agreement」とすれば足りるとされています。また,「Purchase Agreement」だけでは,何の売買であるかが不明なので「Asset Purchase Agreement」と売買の目的物によって特定するのが望ましいでしょう。類似の取引を複数行う場合には,かっこ書きでたとえば売買が行われる地域等を記載して特定することも考えられます。

    もっとも,和文契約書と同様に,タイトルによって契約書の内容が変化したり制約を受けたりすることはないので,複雑な内容の契約書で適切なタイトルが見つからない場合には,単に「Agreement」というタイトルでも特に問題はありません。

    なお,タイトルには,日付,当事者の氏名や名称,定冠詞(the)や不定冠詞(a, an)は不要です。

  • 頭書(The Introductory Clause)

    タイトルの次には,たとえば「This asset purchase agreement is made and entered into this 25th day of September, 2012 by and between A and B」というパラグラフが続きます。頭書の書き出しとしては,「This」に続き,小文字で契約書のタイトルを記載するのが一般的です。

    (1)  日付の記載

    「This…agreement」に続いて,「is made and entered into…」というように,契約の締結を意味する「is made」と「entered into」という語が並べて記載されることありますが,これは英文契約書ではよく見られる同義語を並べた表現なので,単に「is made」または「is entered into」のみでも問題はありません。

    「is made」または「is entered into」のあとには,日付が続きます。日付の記載方法は,「25th day of September, 2012」であっても,「September 25th, 2012」であっても構いません。ただし,「9-25-2012」というように,単に数字を羅列するのは避けるべきでしょう。国によって年月日を記載する順番が異なるからです。たとえば,日本では年,月,日の順で記載するのが一般的ですが,ヨーロッパでは,日,月,年,アメリカでは月,日,年の順で記載するのが一般的なので,単に数列のみで日付を記載することは混乱を招きかねません。

    また,そもそも日付を記載する場所は,頭書である必要はありません。和文契約書では,末尾の署名押印の前に日付を記載するのが一般的ですが,英文契約書でもこの方法を用いることには問題はありません。ただし,注意しなければならないのは,頭書と契約書末尾の両方に日付を記載する場合です。日付が一致していれば特に問題は生じないかもしれませんが,頭書の日付と契約書末尾の日付にずれがあった場合に,契約の成立はいつであるのかという問題が生じかねません。したがって,日付はどちらか一か所に記載する方が安全でしょう。

    (2)  当事者の記載

    日付の後には,「by and between A and B」という当事者の記載が続きます。「by and between」は,前記同様に,同義語を並べた表現に過ぎないので,単純に「by」や「between」のみでも構いません。また,「among」という語が使用されることもあります。当事者が2当事者以上の場合であっても,これらの語を使用しても構いません。

    当事者の記載は,当事者の氏名や名称のまえに住所を記載する場合や,設立準拠法を記載する場合がありますが,これらは当事者を特定するために記載しているものです。個人であれば同姓同名の者と区別するために住所を記載するのが一般的です。法人の場合でも,異なる地域に同じ名称の会社は存在し得るため,法人の名称に加え,法人の形態(LTD,GMBH等),本店所在地は最低限記載する必要があります。船舶金融などにおいては,○○国の法律に基づく適正な設立,法人が現存していること,登記・登録機関における登記・登録番号,設立の年月日等が記載されることもあります。

    また,当事者の名称の直後にかっこ書きで「(hereinafter referred to as“A”)」と記載し,定義する場合がほとんどです。また,単に「(“A”)」と記載することも可能です。和文契約書では,当事者を甲乙丙と記載することが一般的ですが,英文契約書では「Party of the first part」や「Party of the second part」という表現は,現在ではあまり見られません。個人であれば名字もしくは名前(敬称(Mr. Ms.)をつけてもよい),法人であれば略式の名称を使用するか,または,「Seller」や「Buyer」等契約における立場を表す語を使用することも可能です。なお,「Seller」や「Buyer」等の一般的な名詞を使用する場合には,定冠詞(the)を付しても付さなくても問題はありませんが,付すなら付す,付さないなら付さないで契約書をとおして統一するべきでしょう。

次回は,WHEREAS,NOW THEREFOREで始まる前文です。

このページの先頭へ