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第106回 会社法改正要綱のポイント

H24.10.2 虎頭 信宏

本年9月7日,法制審議会の総会において,法制審議会会社法制部会が8月1日に決定した「会社法制の見直しに関する要綱案」が承認され,正式に「会社法制の見直しに関する要綱」(以下「改正要綱」といいます。)として法務大臣に答申されました。

改正要綱は,大きく分けて,(1)企業統治のあり方(改正要綱第一部),(2)親子会社に関する規律(改正要綱第二部),(3)その他(改正要綱第三部)から構成されており,その全容は法務省のウェブサイト
http://www.moj.go.jp/content/000102013.pdf
において閲覧できますが,その内容は多岐にわたりますので,今回のコラムでは,多くの企業にとって重要であると思われる改正のポイントについて,簡単にご説明いたします。

  • 監査・監督委員会設置会社制度(仮称)

    (1)  株式会社の新たな機関設計として,「監査・監督委員会設置会社制度(仮称)」が創設されることとされています(改正要綱第一部・第1・1・(1))。

    (2)  監査・監督委員会設置会社は,取締役会および会計監査人を置かなければならないものとされ,他方で,監査役を置いてはならないものとされています。

    また,監査・監督委員会は3名以上の取締役から組織され,その過半数は社外取締役でなければならないとされています。

    (3)  上記のような監査・監督委員会設置会社の仕組みは,現在の監査役会設置会社における監査役会を発展させた制度,あるいは,現在の委員会設置会社の3委員会(指名委員会,報酬委員会,監査委員会)を監査・監督委員会に置き換えた制度(ただし,委員会設置会社のように執行役制度は採用していません)と言えますが,制度のメリット・デメリットが十分に議論されているとは言い難く,会社法改正後,すぐに監査・監督委員会設置会社に移行する企業は多くはないのではないかと考えます。

  • 社外取締役・社外監査役に関する規律

    (1)  今回の会社法改正にあたって,最も注目されていた「社外取締役の義務付け」については,大きく報道されていたとおり,改正要綱では見送られました。

    (2)  ただし,公開会社で,かつ,大会社である監査役設置会社のうち,有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において,社外取締役が存しない場合には,「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告の内容とするものとされており(改正要綱第一部・第1・2・前注),実際に,これをどのように事業報告に記載するのか議論になりそうです。

    また,改正要綱とは別に,法制審議会会社法制部会の「附帯決議」において,東京証券取引所等の金融商品取引所の規則において,上場会社は取締役である独立役員を1人以上確保するよう努める旨の規律を設ける必要があるとされており,上場企業においては,今後の動向に留意する必要があります。

    (2)  上記(2)のほか,改正要綱においては,社外取締役・社外監査役の要件が厳格化されており(改正要綱第一部・第1・2・(1)),中でも,「親会社の関係者でないものであること」が要件として追加されていることは,中小企業においても実務的に大きな影響があると考えます。

  • 多重代表訴訟

    (1)  前記1と2は企業統治のあり方(改正要綱第一部)に関する改正ですが,親子会社に関する規律(改正要綱第二部)において注目されていたのが,多重代表訴訟です。

    (2)  多重代表訴訟について,改正要綱においては,株式会社の最終完全親会社(株式会社の完全親法人である親会社であって,その完全親法人がないもの)の総株主の議決権または発行済株式の1%以上を有する株主が,当該株式会社の発起人,設立時取締役,設立時監査役,取締役,監査役,会計参与,執行役,会計監査人または清算人の責任を追及する訴えの提起を請求することができるとされています(改正要綱第二部・第1・1)。

    (3)  多重代表訴訟制度の創設により,親会社の株主がその子会社の取締役等の責任を追及することが可能となり,親会社株主の保護に資することとなりますが,上記(2)等の要件により,当該制度が利用される場面は限定されると考えます。

  • 監査役の監査の範囲に関する登記

    (1)  なお,前記1ないし3の「企業統治のあり方」「親子会社に関する規律」(改正要綱第一部,第二部)以外に,その他(改正要綱第三部)の改正において,監査役の監査の範囲に関する登記について,「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社について,当該定款の定めを登記事項に追加するものとする」とされています(改正要綱第三部・第3・2)。

    (2)  この点,既存の多くの中小企業においては,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定している一方,登記上は一律に監査役設置会社として登記されていることから(会社法911条3条17号参照),上記(1)の改正が実現すれば,各企業において対応を要することとなり,実務的には影響が大きいのではないかと考えます。

今秋の臨時国会にも会社法の改正法律案が提出されると思われますので(流動的な政治情勢もあり,成立がいつになるかは不明ですが),具体的な条文の中身や施行規則との関係等,今後も皆様にお伝えしていく予定です。

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