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第109回 平成24年度の労働契約法改正

H24.11.7 名倉 大貴
  • はじめに

    本年9月に閉会した通常国会では,消費税増税法案をめぐって与野党の激しい駆け引きが行われた印象が強く残っていますが,その一方で,労働者派遣法,労働契約法,高年齢者雇用安定法等の労働関連法について,実務上の影響が大きい改正法案が成立しました。今回のコラムでは,その中から,労働契約法の改正について取り上げたいと思います。

  • 労働契約法の改正内容

    労働契約法の改正は,有期労働契約に関するものであり,主な内容は,以下のとおりです。なお,「有期労働契約」とは,1年,6ヶ月等の期間の定めのある労働契約のことを意味し,そのような期間限定のない労働契約を,「期間の定めのない労働契約」といいます。

    また,下記の(2)については,公布日である平成24年8月10日に施行され,(1),(3)については,公布日から1年以内に施行される予定です。

    (1)  有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(改正労働契約法18条)

    ア   同一の使用者との間で締結された有期労働契約が通算して5年を超えて反復更新された場合に,当該労働者が,使用者に対し,現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に,満了日の翌日からの期間の定めのない労働契約の締結の申込みをした場合には,使用者は,その申込みを承諾したものとみなされます。

    留意点としては,現に締結している有期労働契約の期間満了よりも前に労働者の申込みが必要であり,期間満了よりも後になって期間の定めのない労働契約への転換を申し込むことはできないこと,上記の5年のカウントは,改正法の施行日以後に開始する有期労働契約が対象であり,施行日前に既に開始している有期労働契約は5年のカウントには含まれないこと(改正法附則)が挙げられます。

    イ   上記アの労働者の申込みにより成立した期間の定めのない労働契約の労働条件は,期間の定めの部分及び「別段の定め」のある部分を除き,従前締結されていた有期労働契約と同一の労働条件とされることになります。

    ウ   同一の使用者との間で締結された有期労働契約と有期労働契約の間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(空白期間)が6ヶ月以上ある場合には,その空白期間より前の有期労働契約は,上記の5年のカウントには含まれないものとされています。ただし,上記の「6ヶ月以上」というのは,契約期間が1年以上の場合の規律であり,契約期間が1年未満の場合には,その期間の2分の1以上の空白期間があれば,それ以前の有期労働契約は,5年のカウントには含まれないものとされています(詳細は,厚生労働省令で定められる予定です)。

    (2)  「雇止め法理」の法定化(改正労働契約法19条)

    ア   従来より,使用者がそれまで反復更新されてきた有期労働契約の更新を拒否した場合(雇止め)に紛争が生じることが多く,判例の集積により,雇止めの有効性について一定の判断枠組みが設定されてきました。今回の改正では,この判断枠組みが条文化されることとなりました。

    具体的には,以下の[1],[2]のいずれかに該当する有期労働契約については,その契約期間満了前に労働者が有期労働契約の更新の申込みをした場合,又は,契約期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合で,使用者がその申込みを拒絶することが,「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないとき」には,雇止めの効力が認められず,従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新又は成立したものとみなされることになります。

    [1]  過去に反復更新された有期労働契約で,その有期労働契約を更新せずに終了させることが,期間の定めのない労働契約の場合の解雇と社会通念上同視できると認められること

    [2]  労働者において,有期労働契約の契約期間満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められること

    イ   以上の内容については,上記のとおり,判例に基づく判断枠組みであり,[1][2]に該当するか否かの具体的な判断については,今後も従来の裁判例が参考になるものと考えられます。

    (3)  期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(改正労働契約法20条)
    有期労働契約を締結している労働者の労働条件が,同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働条件と相違する場合には,その相違が不合理なものであってはならないとされ,その判断にあたっては,以下の要素を考慮するものとされています。

    [1]  職務の内容(労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)
    [2]  当該職務の内容及び配置の変更の範囲
    [3]  その他の事情

  • 労働契約法改正の実務に与える影響

    (1)  上記2の改正のうち,(2)の「雇止め法理」の法定化については,すでに判例で確立していた考え方でもあり,実務にただちに大きな影響を与えるものではないと考えられます。

    (2)  一方で,上記2(1)の有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換については,大きなインパクトがあるものと考えられます。継続性が必要な業務について,有期労働契約の更新で対応していた場合には,当該有期労働契約を期間の定めのない労働契約へ転換していくことが必要になると考えられますし,今後は真に臨時的な業務に限って有期労働契約を活用するという工夫も必要になると考えられます。また,有期労働契約が期間の定めのない労働契約に転換された場合の労働条件についても,従来の有期労働契約の条件と同一でよいのか,それとも,就業規則等で差異を設ける(「別段の定め」)べきかの検討が必要になります。

    (3)  また,上記2(3)の期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止についても,有期労働契約を締結している労働者の労働条件と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働条件には,手当等の面で一定の相違があるのが通常であり,それらの相違の合理性の検討が必要になると考えられます。

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