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第117回 賃貸借における解約違約金の定め

H25.1.23 芳田 栄二
  • 違約金の定め

    債務者が契約に違反した場合,債務者に故意または過失があれば,債務不履行による損害賠償責任(民法第415条)を負うこととなりますが,その場合の損害額(債務不履行がなければ債権者がおかれているであろう財産状態と債務不履行があったために債権者がおかれている財産状態との差額と考えられています)は,債権者において,立証しなければなりません。

    そのため,債務不履行があった場合に債権者が請求しうる損害賠償額をあらかじめ合意しておくと,債権者にとっては,損害を立証しなくて済むこととなって便利ですし,債務者も債務不履行の際に賠償すべき額があらかじめ決まっていれば安心となります。民法第420条第1項では,このような理由から,損害賠償額の予定の制度を定めています。

    契約においては,違約金という名目でかかる金員の支払が約される場合が多く,違約金は,厳密には損害賠償額の予定と異なり,本来の損害賠償に加えて支払われるものですが,実際には,損害賠償額の予定と推定されるため(民法第420条第3項),通常は同じ扱いになります。

    違約金額の設定の仕方については,法律上,特に制限する規定は設けられておらず,契約自由の原則から,金額も原則として自由となりますが,それがあまりに過大であれば,公序良俗(民法第90条)に反して,無効となると考えられています。

  • 賃貸借契約における解約違約金
    (1)  解約違約金

    賃貸借契約においては,貸主は,購入費や建築費等の投下資本を賃料によって回収するところ,違約金の設定方法は様々であり,期間の定めのある賃貸借契約においては,契約上で期間内解約を認める多くの場合,残存期間の損失をカバーすることを考慮した違約金額が設定されています。

    この場合も,上記のとおり,後述する消費者契約法の規定を除いては,特に制限する規定は設けられていませんが,公序良俗に反する過大な金額であれば,無効と判断されることとなります。

    (2)  裁判例

    裁判例では,XがYに対し,期間4年,賃料(共益費込)月額190万円前後(具体的な金額を決めて,1年程度おきに増額を予定),保証金3,700万円(契約時に500万円を支払い,その後は月額50万円程度に分割)の内容で建物を賃貸した事案で,以下のとおり,残存期間である3年2ヶ月分の違約金の支払についての約定を一部無効として,一年分のみ有効であると判断しました。

    「建物賃貸借契約において,1年以上20年以内の期間を定め,期間途中での賃借人からの解約を禁止し,期間途中での解約又は解除があった場合には,違約金を支払う旨の約定自体は有効である。しかし,違約金の金額が高額になると,賃借人からの解約が事実上不可能になり,…賃借人に著しい不利益を与えるとともに,賃貸人が早期に次の賃借人を確保した場合には事実上賃料の二重取りに近い結果になるから,諸般の事情を考慮した上で,公序良俗に反して無効と評価される部分もあるといえる。…以上の事実によると,解約に至った原因がYにあること,Yに有利な異例の契約になっている部分があることを考慮しても,約3年2ヶ月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は,賃借人であるYの解約の自由を極端に制約することになるから,その効力を全面的に認めることはできず,平成6年3月5日から1年分の賃料及び共益相当額の限度で有効であり,その余の部分は,無効と解する。」(傍線筆者)

    (3)  違約金額

    上記裁判例では,違約金条項は,保証金の分割払いの合意がなされていたという特殊性についても指摘されましたが,貸主(X)は,解約後,数ヶ月で,新しい賃借人に建物を賃貸しており,違約金額の限界については,賃貸人が解約後に新たな賃借人を確保するまでの間の損失という面が重視されていると思われます。

    解約後に通常どの程度の期間で新しい賃借人を確保できるかは,当該建物によって異なると思われますが,違約金を設定する場合には,その点での注意が必要と思われます。

  • 消費者契約法

    なお,上記のような違約金の定めについて,消費者契約法が適用される場合,違約金額は「平均的な損害」を超える部分は無効とされ(同法第9条1号),その際の「平均的な損害」は,裁判例においては,次の入居者を獲得するまでの期間として,賃料1ヶ月分程度とされています。

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