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第118回 養育費の変更・親権者の変更

H25.1.31 木下 雅之
  • 養育費の変更

    (1)  養育費の支払義務

    離婚により親の一方が子を引き取り監護することになっても,親の子に対する扶養義務(民法877条1項)は何ら影響を受けませんので,親権者とならなかった親も子の監護に要する費用を負担する義務を負います。これが一般に「養育費」と呼ばれるものです。

    養育費の額は,お互いの収入や財産,これまでの子の監護にかけた費用の実績,子の進学等を踏まえた将来の見通しなどを考慮して,父母の協議(話し合い)によって決めるのが原則ですが,双方の主張に隔たりがあり,話し合いでの合意が難しい場合には,家庭裁判所における調停や審判手続によって決めることとなります。

    養育費の対象となる子は「身体的,精神的,経済的に成熟化の過程にあるため就労が期待できず,第三者による扶養を受ける必要がある子」とされており,必ずしも「未成年者」という概念と一致するものではありません。

    したがって,子が成年に達していても大学在学中である場合などは,大学卒業時までの養育費の支払義務が認められることもあります。

    以上のとおり,養育費の支払義務の終期を,例えば子が高校を卒業する「18歳になるまで」とするのか,あるいは「大学卒業時まで」とするのかなどについては,個々のケースごとにそれぞれの事情を踏まえて決めることとなります。

    (2)  養育費の変更

    では,離婚の際にいったん決めた養育費は,その後一切変更することができないのでしょうか。上記のとおり,養育費の支払義務は子が大学を卒業するまでなど一定の長期にわたって負担するものです。この間,子が私立学校へ進学したため,学費が想定していたよりも多くかかったり,あるいは,リストラなどで養育費を負担する義務者の収入が減ったりといった事情が生じ,養育費の額を取り決めた離婚時から状況が変わることは十分にあり得ることです。

    この点,離婚当時に予測し得なかった個人的・社会的事情の変更が生じたと認められる場合には,養育費の増額ないし減額,終期の延長等を相手方に対して求めることができます。なお,増額請求の場合には,負担義務者において増額に応じることができるだけの経済的な余力があることも必要です。

    離婚時に予測し得なかった個人的事情の変更とは,父母の失業,親や子の病気による長期の入院,負担義務者の再婚による再婚後の家庭の生活費確保の必要性などの場合をいい,社会的事情の変更とは,物価の急激な上昇による養育費の増大などの場合をいいます。

    養育費の増減額も,父母の協議によって決めるのが原則ですので,まずは事情の変更を相手方に説明し,養育費の増額または減額などについて協議することとなりますが,協議が整わない場合には,家庭裁判所に調停を申し立てることが可能です。

  • 親権者の変更

    離婚をする際には,父母の協議により,その一方を子の親権者として定めなければなりません(民法819条1項)。

    しかし,例えば離婚後に,親権者となった母親が子を虐待したり,あるいは子が親権者となった父親との生活環境になじむことができず,母親との生活を希望したりするなど,親権者の変更を必要とするような事態が生ずる可能性は十分にあり得ます。このような場合に,いったん決めた親権者を変更することはできるのでしょうか。

    この点,上記のとおり,離婚時の親権者の指定は父母の協議により決めることができますが,いったん決めた親権者のその後の変更については,父母の話し合いだけでは変えることができず,必ず家庭裁判所に対し,子の親権の変更に関する調停を申し立てなければなりません。

    家庭裁判所の調停においては,あくまでも「子どもの利益のためにどうすることが最善か」という観点で,親権者の変更を認めるべきか否かの判断がなされます。

    具体的には,親側の事情として,居住環境や家庭環境,子に対する愛情の深度,子に対する監護態度等,子側の事情として,子の年齢,心身の状況,親に対する愛情,学校交友関係,環境の継続性,子の希望等の事情を総合的に考慮して判断されることとなります。

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