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第119回 取引先が破産した場合の対応方法

H25.2.19 山下 和哉

ご存知の方も多いと存じますが,中小企業金融円滑化法(※)が,平成25年3月31日をもって終了します。同法の終了を目前にして,資金繰りに窮されている企業様からのご相談や,逆に,取引先が自己破産したので,これに対する対応方法についてのご相談が増えつつあるように感じます。

そこで,今回は,取引先が破産した場合の債権者としての対応方法について,ご説明いたします。

  • 債権者の立場から見た破産手続き

    債権者の立場からすると,破産手続は,多くの場合,[1]債務者代理人からの受任通知の受領,[2]破産手続開始決定の通知の受領,[3]債権届出,[4]財産状況報告集会への出席,[5]配当金の受領と進んでいきます。

    概ねのスケジュールについては,事業規模,関係者数,事務処理量等により様々ですが,平均すれば,[1]債務者代理人からの受任通知の受領から破産申立てまで2週間〜1か月程度,破産申立てから[2]破産手続開始決定の通知の受領まで2週間〜1か月程度,[2]破産手続開始決定の通知の受領から[4]財産状況報告集会まで1か月〜4か月程度,[2]破産手続開始決定の通知の受領から[5]配当金の受領まで,(訴訟等長期化する要素がなければ)1年程度かと思われます。

    債権者の立場で,破産した取引先に対して質問・協議等したい場合,[1]債務者代理人からの受任通知の受領時点では,債務者代理人の弁護士が,そして,[2]破産手続開始決定以降は,裁判所から当該破産手続を進めていくために選任された破産管財人の弁護士が,それぞれ窓口になります。

  • [1] 債務者代理人からの受任通知の受領

    (1)  受任通知

    債務者代理人からの受任通知は,当該債務者が「自己破産の準備」をしていることを示す通知です。各債権者は,受任通知の受領によって,債務者が各債務の支払を停止したことを認識するに至りますので,それ以降に当該債務者より個別に弁済を受けたり,従前有していた債権と受任通知の受領以降に当該債務者に対して負担した債務とを相殺したりすることは,法的に問題がある場合がありますので,注意する必要があります。

    なお,取引先における混乱を防いだり,公租公課庁による差押えを回避する等のために,受任通知を送付せずに,破産申立てをする例もあります。

    (2)  債権調査票

    受任通知には,「債権調査票」といって,債権者が当該債務者に対して有する債権の額・種類等を記載する書面が添付され,これを返送するように指示されることがあります。

    債務者代理人は,返送された債権調査票に基づき,破産申立書類を作成しますので,自社が有する債権の金額を正確に伝えるためにも,債権調査票の返送には積極的かつ早期に協力をした方がよいといえます。

    (3)  商品・原材料等の引揚げ

    受任通知が届いた時点で,既に納品した商品や原材料等の引揚げを請求することはできるのでしょうか。

    これは,契約内容等にもよりますが,基本的には,納品とともに所有権が移転することが多いと思いますので,債権者は,納品した商品等を引き揚げる権限を有さないことになります。これを債務者の承諾なく,強引に引き揚げた場合には,窃盗罪,恐喝罪等の犯罪行為に該当し,また,民事上の損害賠償責任の対象にもなりますので,十分にご留意いただく必要があります。

    ただし,債権者が納品した商品がまだ債務者の手元にある場合には,債権者は,当該商品に対し,「先取特権」という担保権を有することになりますので,当該商品を競売してその代金を弁済に充当すること等が可能となります。また,債務者が当該商品を第三者に転売していれば,「先取特権」に基づき,債務者が第三者に対して取得する転売代金債権から支払を受けること(物上代位)も可能となります。

    さらに,契約書の条項に「商品の所有権は代金の支払が完了するまでは,移転しないものとする。」という「所有権留保特約」があるときには,所有権留保の目的物については,所有権留保売主において,他の物件とは区別して権利主張できますので,債務者代理人が引揚げに応じる場合もあろうかと思われます。

    他方,原材料等を債務者に預けているだけという場合には,基本的には,自らの所有権に基づいて返還請求ができると考えられます。中には,債務者代理人が,「破産管財人が就任するまでは,引揚げを認めない」と頑な姿勢を取る場合もありますが,当該原材料等を今すぐ引き揚げないといけない高度の緊急性があることを説明して交渉したり,又は,せめて対象物を他の財産に混入しないように,現場で写真撮影,自社の原材料であることがわかる印を付ける等の保全策を取ることを求めることで対処することが有用かと思います。

  • [3] 債権届出

    破産手続開始決定後,裁判所から,破産手続開始通知とともに,多くの場合,破産債権届出書の用紙が送付されます。

    債権者は,破産債権届出書を裁判所に提出しないと,配当を受けられません。また,破産手続開始通知に,破産債権届出書の提出期限が記載されていますが,この期限内に提出しないと配当を受けられなくなる可能性があるので,期限内に提出するようにしてください。

  • [4] 財産状況報告集会への出席

    破産手続開始通知書には,第一回目の財産状況報告集会の日時・場所が記載されています。

    財産状況報告集会では,裁判官立会いの下,破産管財人から,破産会社の役員・従業員等への聴き取りに基づき,破産に至った経緯,破産会社の財産状況,今後の破産手続の進行予定,配当の見込み等について説明がなされます。また,場合によっては,破産会社の代表者より,謝罪の言葉等が述べられることもあります。

    債権者としては,財産状況報告集会に出席することで,破産会社についての事実関係を理解することができるとともに,不明な点がある場合には,破産管財人に対し,質問や追加調査の依頼をすることもできます。

    そして,財産状況報告集会が終われば,次回の集会の日時が指定され,破産手続が終了するまで,破産管財人より定期的な報告がなされることになります。

  • [5] 配当金の受領

    最終的に配当がある場合とない場合があります。

    これは,最終的に形成された破産財団からの支払に,次のとおり,優先順位があるからです。

    順位 名称 具体例
    (1) 財団債権 手続費用・管財人報酬・公租公課・労働債権の一部 など
    (2) 優先的破産債権 財団債権に属しない公租公課・労働債権 など
    (3) 一般破産債権 商取引債権・貸金債権 など
    (4) 劣後的破産債権 破産手続開始決定後の利息 など

    (1)財団債権及び(2)優先的破産債権を支払ってもなお,破産財団の財産に残余がある場合は,(3)一般破産債権に対して配当があります。この場合,破産管財人から各債権者に対し,配当額及び配当日時が記載された「配当通知書」が送付されます。

    これに対し,(1)財団債権及び(2)優先的破産債権の合計額に破産財団の財産の額が満たなければ,(3)一般破産債権への配当はないまま破産手続は終了します。この場合,破産手続を廃止(異時廃止)する旨の決定がなされ,同決定書が破産者及び破産管財人に交付されます。もっとも,破産手続廃止決定書は,破産債権者に対し,自動的に送付されるものではありませんので,場合によっては,破産管財人連絡して,同決定書の送付の依頼をする必要があります。

    破産者が法人である場合に,債権者が破産債権についての損金処理をするためには,上記「配当通知書」又は「破産手続廃止決定書」が必要とされますので,受領の確認をし,不明な点があれば,破産管財人に問い合わせをするなどの必要があります。

  • 最後に

    以上のとおり,取引先が破産した場合,破産法その他関係法令において,様々な規制が設けられており,皆様においても対応に戸惑う事態が起こる可能性が大きいと思われます。もっとも,上記のとおり,受任通知が送付された時点での素早い対応等により,取引先の破産によって被る損害を最小限に抑えることができます。

    そこで,取引先が破産した場合には,まずは,弁護士等の専門家に相談することをお勧めいたします。当事務所でも数多くの破産事件を扱ってきた経験と実績がありますので,必要な場合にはご遠慮なくご相談いただければ幸いでございます。

※:中小企業金融円滑化法とは,中小企業などの借り手が,返済負担の軽減を申し入れた場合,返済期間の延長や元金返済の一定期間の猶予,金利の軽減等,条件変更にできる限り対応するよう金融機関に求めた法律です。

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