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第12回 許せない刑事裁判

H21.11.12 幸寺覚

すでに高等裁判所の控訴審判決が確定し,被告人は,10年という長い懲役刑に服することになってしまいました。我々弁護人3人も被告人の無実を信じ,約3年に渡って弁護活動に専念してきただけに,この結果は辛く,重いものとなりました。もちろん,第一審の有罪判決にも不満は多々ありますが,特に,高等裁判所の控訴審の審理はひどいもので,噂には聞いたことがありましたが,実際に経験してみると,刑事裁判の終焉であると思われるものです。

我々は,第一審の有罪判決を覆そうと必死で新しい証拠を提出すべく捜し,実際証拠請求しました。しかし,裁判所は,何一つ採用しようとせず,最もひどいのは,弁護人が請求し検察官も証拠として取り扱うことに同意している書面まで,裁判所は証拠採用を却下したのです。控訴審の法廷では,事前の十分な準備とは裏腹に弁護人の証拠請求はすべて却下され,無実を訴えている被告人が唯一しゃべれる被告人質問も認めてくれず,弁護人のすべての請求を却下したうえ,数十分程度で審理を終了し,結審して終わりました。当然のごとく再び有罪判決となりました。いみじくも被告人が言っていたように,「他人の裁判のようだった。」という言葉が深く私達に圧し掛かってきます。当然ですよね,被告人本人は法廷に出て来て,無実を主張しているにもかかわらず,一言もしゃべれず,何らの新しい証拠調べもしてくれず,審理が数十分で終わったのですから。刑事裁判官は,被告人を刑務所に送るのであるなら,被告人を説得して,被告人が納得して送る努力をすべきではないかと思います。

 法的には,刑事訴訟法の観点からの控訴審での制約は当然あるのですが,この話しを聞いて頂いた普通の市民の方々がこれはおかしいと思って頂けるなら,やはりこの裁判のやり方はおかしいのではないでしょうか。裁判員裁判が始まりましたが(控訴審では裁判員裁判はありませんが),裁判官に半ば常識となっている非常識を,市民の力で常識に戻して頂きたいと思います。そんな意味でも,刑事裁判に新しい風を送れる裁判員裁判に期待したいです。

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