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第120回 英文契約書の基本の基本(Recitals編)

H25.3.5 平良 夏紀

前回のコラム(第105回「英文契約書の基本の基本(タイトル,頭書編)」)に引き続き,今回は,「WHEREAS」等ではじまる「Recitals」と呼ばれる部分について解説致します。

  • タイトル

    英文契約書の頭書のあとには,通常,「WHEREAS」等ではじまり,契約の背景事情等を記載する「Recitals」と呼ばれる部分があります。

    「Recitals」と呼ばれる部分には,「WITNESSETH」「RECITALS」「BACKGROUND」等のタイトルが付いている場合が多いですが,タイトルが付いていないこともあります。「WITNESSETH」は古典的な英語なので,「タイトルを付けるのであれば『RECITALS』や『BACKGROUND』の方が分かりやすくてよい」または「そもそもタイトルは付ける必要はない」といわれることもありますが,記載内容から「Recitals」にあたる部分であることが分かれば,タイトルは問題にはなりません。タイトルが付いているかいないか,どのようなタイトルが付いているかによって,「Recitals」の性質や機能が変わることはありません。

  • 「Recitals」とは

    そもそも,「Recitals」とは一体何なのでしょうか。

    「Recitals」は,当該契約を締結するにあたっての背景事情,当事者の目的,当該契約の位置づけ等のうち,当該契約にとって重要と思われる事項を記載する部分です。単純な取引の契約書であれば,「Recitals」は1パラグラフで足りることもありますし,場合によっては,「Recitals」を省略することも可能です。反対に,複雑な取引である場合や,大きな取引の一部として締結される契約書であれば,「Recitals」は10パラグラフ以上になることもあり得ます。

  • 「Recitals」の種類

    「Recitals」は,大きく分けて3つの種類に分類できるとされています。一つ目は,(1)当該契約を締結する際の背景事情の説明を記載するものです。つまり,当事者がどのような事業を行っているのかを説明するもの,当事者の組織関係(たとえば,親子会社関係等)を説明するもの,当事者間で行われた過去の取引を説明するものは,この分類に属するといえるでしょう。

    二つ目は,(2)当該契約を締結する際の当事者の目的の説明を記載するものです。当事者が当該契約の締結によって何を達成したいのかを説明するものは,この分類に属するといえるでしょう。

    三つ目は,(3)並行する取引の説明を記載するものです。一つの大きな取引の一部として当該契約が締結されることを説明するもの,基本契約に基づいて当該個別契約が締結されることを説明するものは,この分類に属するといえるでしょう。

    もちろん,一つの契約書にこれら2種類または3種類の「Recitals」が混在することはあり得ますし,1種類のみの場合もあります。契約書を起案するときには,3種類の「Recitals」を意識することにより,パラグラフごとに記載する内容および目的を分け,「Recitals」の各パラグラフの記載内容を分かり易くすることができるでしょう。

  • 「Recitals」の記載方法

    「Recitals」の各パラグラフが「WHEREAS」ではじまり,一つのパラグラフがセミコロン(「;」)で終わる契約書をよく目にすると思いますが,これは,古典的には,「Recitals」を「Witnesseth that, whereas…, whereas…, now, therefore, …」という長い一文で表わしていたことに由来するものです。したがって,現代の契約書では,「WHEREAS」という語には特に意味はありませんので,この語を使用する必要はありませんし,一文一文をピリオド(「.」)で終わらせることにも何ら問題はありません。

    また,次項で解説するように,「Recitals」は,単に事実を記載する部分であり,権利義務等を記載する部分ではありませんので,「Recitals」の一文一文は,シンプルかつ端的に事実を記載するようにし,物語のように事実の流れが分かるようにするとよいとされています。

    さらに,通常,「Recitals」の各パラグラフには番号を振りません。これは,次項で解説するように,「Recitals」は契約の解釈に有用なものであるに過ぎないため,契約書の本文で「Recitals」のパラグラフを参照する必要がないからです。

  • 「Recitals」の意義

    「Recitals」には,契約当事者に権利義務を発生させる法的拘束力はありません。したがって,「Recitals」には当事者の権利義務を記載することは無意味であり,「Recitals」の記載に違反した場合や「Recitals」に記載されている事実が虚偽であったとしても,そのことを理由に当事者が債務不履行責任を負うことはありません。 

    それでは,「Recitals」を記載する意義はどこにあるのでしょうか。

    前述のとおり,「Recitals」には,当該契約の位置づけや背景事情や当事者の意図等が記載されますので,契約書本文の解釈に資することになります。つまり,仮に,契約書本文のある条項の解釈をめぐり当事者間で紛争が生じた場合には,裁判所は,「Recitals」に記載されている事実から読み取れる当事者の意図をもとに当該条項を解釈することになります。このような場面で,「Recitals」を記載することには一定の意味があるのです。

    なお,契約書の中には,「Recitals」において,契約書の当事者が「本契約に従って(in accordance with this agreement)」ある特定の行為を履行することを目的としている旨の記載がされることがありますが,これは,単に,「当事者は契約書本文に定めた内容を履行する」ということを述べているに過ぎないので,無意味な記載になってしまいます。

  • 「Recitals」の記載内容に法的拘束力を持たせる方法

    先ほど,「Recitals」に記載されている事実が虚偽であったとしても,そのことを理由に当事者が債務不履行責任を負うことはないと述べましたが,仮に,「Recitals」に記載した内容を契約締結のための絶対的な条件としたい場合や,「Recitals」の記載内容に虚偽があったときには契約を終了させたいと考える場合にはどうすればよいのでしょうか。

    契約書の中には,「Recitals」の内容を契約書本文に摂取するという内容の条項を契約書本文に入れたり,「Recitals」の内容が真実であることを表明するという内容の条項を入れたりするものもありますが,このような措置に頼ることはリスクがあります。「Recitals」に記載した内容を契約締結のための絶対的な条件としたい場合や,「Recitals」の記載内容に虚偽があったときには契約を終了させたいと考える場合には,「Recitals」に記載した内容を契約書本文の「Representation and Warranty(表明保証)」等に記載することで,法的拘束力を持たせる必要があります。

    前項でも解説したように,「Recitals」には,法的拘束力はありませんので,仮に,「Recitals」の内容に法的拘束力を持たせたい場合には,その内容を「Recitals」には記載せずに契約書本文に記載するか,「Recitals」に記載した同じ内容を繰り返し契約書本文にも記載する必要がある点に注意が必要です。

次回は,「Lead-in」と呼ばれる部分です。

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