ホーム > コラム > 企業法 > その他企業法 > 第123回 株主総会における質問者の抽選方式

コラム

コラム

第123回 株主総会における質問者の抽選方式

H25.3.27 小野 法隆

企業総務担当の皆様、いかがお過ごしでしょうか。
早いもので、今年も株主総会シーズンがやってまいりました。
さて、今回は総会議長の質問受付の順番のお話です。
議長が「それでは株主の皆様からのご質問を受け付けます」と言った瞬間に会場のあちらこちらから手が上がりますが、どの質問から取り上げるかは、会社によっても違いますし、議長の個性によっても違います。前のほうから、右のほうから、前後左右均等に、などなど、状況に応じて適宜の判断がなされています。
挙手した株主全員に質問の機会が与えられれば、それに越したことはないのですが、会議体としての制約から、いずれかの時点で質問を打ち切らなければならない場合もあります。そういった場合の株主の不満を解消するため、最近では、事前に質問希望者に整理券を配布して質問できる人を抽選し、質疑の場で順番に指名したり(自動車メーカー)、質問希望者だけが特定の座席に座り、質疑に入った時点で座席番号を抽選して、番号を読み上げられた株主が質問をする(食品メーカー)などの工夫がこらされるようになってきました。

ところで、議長は、議事の主宰者として議事運営権を持っていますので(会社法315条)、質問者が多数になることが見込まれる場合には、できるだけ多くの株主に質問の機会を公平に与えるために、各株主の発言時間を制限するとともに、場合によっては質問の数自体を制限することも可能です。
ただし、総会において会議の目的事項について発言することは、株主固有の権利ですので、質問数の制限が認められるには、一定の条件が必要です。たとえば、議題が多く、出席株主からの多数の質問が予想され、予定される相当な時間内に審議が終了しないおそれがあり、かつ、質問数を制限しても、議題を合理的に判断するに必要な程度に質疑が尽くされ、議題の公正な審議を損なうおそれがないような場合に限定されます。

また、複数の株主が挙手または起立して発言を求めたときは、それが議事運営に関する手続的動議である場合を除いて、どちらを指名すべきかは、議長の裁量に属します。通常は、会社提案に賛成の者と反対の者とを交互に指名して公平を図ったり、まだ質問をしていない株主を優先させたりする取扱いがなされていますが、前述のように事前の抽選によるというのも一応の合理性はあると思われます。

ただ、抽選に当選しなかった株主が議場で質問を思いついたような場合(たとえば、A株主の質問に対する取締役の説明におかしなところがあって、B株主がその点を追及しようとするような場合)、議長がB株主が抽選に漏れたとの理由だけで質問を制限することは、場合によっては取締役等の説明義務違反として、決議取消事由となりかねないというリスクがあります。
さらに、根本的な問題として、仮に大多数の株主が質問者の指名方式に同意していたとしても、そもそも個々の質問が株主固有の権利に属する以上、それを議場の多数決により奪うことはできないのではないかという疑問もあります。

質疑の打ち切りについては、会議体として十分に成立しうる時間が経過した時間、すなわち「平均的な株主が客観的にみて会議の目的事項を理解し、合理的に判断することができる状況にあると判断したとき」(中部電力事件・名古屋地裁H5.9.30判決等)にのみ許されると解されていますが、現実の総会の場では、さまざまなファクターがあり、質疑打ち切りのタイミングを一義的に示すことは難しく、これを事前に質問者の数のみをもって制限してしまうことには問題があると言わざるをえません。

結局のところ、上述のような「抽選方式」は、会社側で事前に質問の順番を抽選という分かりやすい形で示し、円滑な議事進行への株主の協力を求めたという趣旨にすぎず、実際に質疑の形式的な打ち切り手続きまでを定めたものではないと理解するほかはありません。
なお、うがった見方をしますと、質疑打ち切りのタイミングをはかる際には、議場の雰囲気といった目に見えない(したがって言葉でも表現できない)状況も一つの考慮事由となりますが、会社側で予め「抽選方式」を明示しておくと、抽選に漏れた株主が重要性の低い質問を繰り返したような場合、他の株主においても打ち切りに賛同するような心理状況に傾きやすいといった事実上の効果を期待しているのではないかとも推察されるところです。

総会担当セクションの皆様、いよいよあと3か月です。
くれぐれも健康に留意され、無事シーズンを乗り切られるよう、心よりお祈り申し上げます。

このページの先頭へ