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第130回 中国労働契約法の改正(労働者派遣に与える影響)

H25.5.17 張 麗霞

昨年12月28日,中国全国人民代表大会常務委員会において「中華人民共和国労働契約法」に関する改正の決定が公布され,同改正労働契約法は2013年7月1日より正式に施行されることになりました。

今回の法改正における最大のポイントは,労働者派遣制度に関する「同工同酬」(同一職位・業務において派遣労働者は正規従業員と同一賃金を得るべき)原則が確立されることと,労働派遣には臨時性(6ヶ月を超えないこと),補助性(主たる業務ではないこと)または代替性(正規社員が病気,妊娠,出産等の理由によって勤務できない間に替わりに勤務すること)を備えた職務でなければならないことを明確にしたことです。

通常,企業にとって派遣を利用するメリットは,募集・採用費コストの抑制,労働・社会保険の手続が不要である等,事務管理コストが節約できる点にあります。また,とくに,労働派遣会社が従業員とのコミュニケーション,労働紛争の予防の面で重要な役割を果たしていることからも,多くの外資企業は派遣労働者を使用しています。

今回の法改正により,これらの企業に多大な影響に与えることが十分に予想され,より具体的には,主に以下の2点が考えられます。

  • 従来,派遣労働者は正規雇用労働者より低い賃金で雇えることから企業に積極的に採用されていました。しかし,2012年12月28日以降に締結されている労働者派遣契約には,「同工同酬」の原則が適用されるため,正規社員と同等の職位・業務に務める派遣社員には,正規社員と同額の給与を支払わなければならないことになります。よって,これから派遣労働者を使用する予定がある企業は,正規社員と締結する労働契約と労働者派遣契約について,上記原則に基づき,同等な労働報酬制度を策定する必要があります。

    ちなみに,改正労働法が頒布されるより以前に締結された労働者派遣契約については,契約期間が終了するまでの間は継続的に有効とされます。

  • 改正労働法が正式に施行された後は,中国現地法人は,臨時性,補助性及び代替性の3つの性質を備えていない職務に,派遣労働者を使用してはならないことになります。しかし,現在,現地外資企業の中では,重要な職位を含め従業員の大部分が派遣労働者である企業が少なくありません。これらの企業は,人材を確保し又は通常の業務を保持するために,現在まで使用していた派遣労働者とは労働契約の締結を迫られています。しかし,これらの派遣労働者と労働契約を締結することには,一つ問題があります。中国労働法規により,使用者は同一の労働者と2回「有期労働契約」を締結した場合,3回目に労働契約を締結するとき,労働者から「期間の定めのない労働契約」の締結の申込があれば,使用者は当該労働者と「期間の定めのない労働契約」を締結しなければなりません。通常,この労働法規が適用されるためには,労働契約の締結主体が「同一の使用者」と「同一の労働者」であることが必要とされますが,下記の場合には,この要件が具備されていない場合でも,例外的に,適用が認められることがあります。

    (1)派遣会社がある企業に労働者を派遣するため,労働者と2回以上労働契約を締結した場合で,かつ(2)当該労働者をその企業にのみ派遣した場合です。

    これに該当する場合,派遣会社と労働者との間で締結される労働契約の終了により,派遣元と派遣先の労働者派遣契約が終了したとき,当該企業が労働者に直接雇用を申入れれば,この労働契約は3回目の労働契約とみなされる可能性が極めて高いことになります。そして,この際,労働者が「期間の定めのない労働契約」を締結したいと申し込んでいれば,企業は労働者と「期間の定めのない労働契約」を締結しなければならないことになります。

    そのほか,駐在員事務所に関しては,中国会社法,労働契約法上における独立した法人格を有するものではないため,今回の法改正に影響されません。駐在員事務所が労働者を雇用するときは,今まで通り,所在地にあるFESCO等中国政府が指定する労働派遣会社に委託すればよいということになります。

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