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第137回 会員権預託金返還請求の問題点

H25.8.13 村尾 卓哉
  • はじめに

    夏だ!海だ!リゾートだ!

    ということで,今回は,夏恒例(?)のリゾートに関する法律のお話をしたいと思います。

    リゾートクラブやゴルフクラブに入会する際に,預託金を支払うことが一般的です。預託金は,当該クラブを会員が退会する際に返還することを前提として,入会に伴って支払う金銭で,通常は一定の返還期限(据置期間)を定めて,同期限が経過すれば,退会時に返還するという決まりとなっています。

  • 据置期間の延長の可否

    通常,据置期間が経過し,会員が退会を希望すれば,預託金は返還されるということになります。しかしながら,リゾートクラブやゴルフクラブ側は,会則に記載のある「理事会の決議による据置期間の延長」を主張することがよくあります。このような理事会の決議による一方的な据置期間の延長について,最高裁昭和61年9月11日判決は次のように述べています。

    「会員は、右の会則に従ってゴルフ場を優先的に利用しうる権利及び年会費納入等の義務を有し、入会の際に預託した預託金を会則に定める据置期間の経過後に退会のうえ返還請求することができるものというべきであり、右会則に定める据置期間を延長することは、会員の契約上の権利を変更することにほかならないから、会員の個別的な承諾を得ることが必要であり、個別的な承諾を得ていない会員に対しては据置期間の延長の効力を主張することはできないものと解すべきである。」

    東京地方裁判所平成15年3月27日判決においても同様に「会員の個別的な承諾を得ることが必要である」と述べています。

    預託金の法的性質は,民法666条に定める消費寄託であると考えられ,会員は一定期間を定めたうえで,クラブ側にお金を預け,クラブ側は,期間中,自由にこれを利用できる,という契約が成立しているものと考えられます。そうすると,会員は,あくまで一定期間,クラブ側にお金を預けることを合意したに過ぎず,いくら会則に定めているとしても,一方当事者の意向で預託期間を延長することは許されない,と考えることができます。ですから,会員としてこのような通知を受けたとしても,その有効性について十分に争う余地がある,ということになります。

    他方で,据置期間の延長を主張するクラブ側としては,全ての会員から個別に同意を取ることが望ましいということになりますが,現実的には,すべての会員に対して,一定期間の異議申述期間を設けた据置期間延長通知を行い,一定期間内に異議がなければ同意したものとみなす,という形で同意を取ることが考えられます。

  • 据置期間の延長の理由

    (1)  預託金の据置期間の延長の理由については,「天災,地変,経済環境の激変,その他会社の経営基盤を損なうような事由が生じた場合,理事会の決議のもとで延長することができる」と定められていることが通常です。据置期間の延長を理事会の決議で決定すること自体が認められるとしても,「天災,地変,経済環境の激変,その他会社の経営基盤を損なうような事由」に該当するかどうかについて,問題となります。

    この点について,東京地方裁判所平成14年11月19日判決は,阪神大震災による経営の悪化を理由にして保証金返還に応じなかった会員制クラブ側の主張を「被告の主張する事情は,概ね経済情勢の変動によるものであり,据置期間を延長しなければならない合理的な必要性が肯定されるものということはできない」として退けています。

    阪神大震災や東日本大震災が「天災,地変」に該当することには争いがないところでしょうが,「天災,地変」が原因で経営基盤を損なうような事態が生じていることが必要です。つまり,「天災,地変」によって,客足が遠のいたという程度の事実では足りず,所有する物件などが実際に大きな被害を受け,修繕に多額の資金を投入したという具体的な事実が認められなければ,据置期間の延長という会員にとって大きな不利益を受忍させることは許されないと考えるべきです。

    (2)  さらに「経済環境の激変」については,バブル経済の崩壊やリーマンショックが理由として挙げられることがありますが,これについても同様に,単に景気が悪くなり,客足が遠のいたということでは足りず,やはりバブル経済の崩壊やリーマンショックによるクラブ経営への影響を個別具体的に主張しなければ,延長の理由として認められないのではないかと思います。

  • おわりに

    リゾートクラブやゴルフクラブについては,日本の景気の低迷により,苦しい経営が続いており,当初の据置期間内に預託金を返還できないという事態が恒常的に生じているところです。

    そのため,クラブ側は,当然のように据置期間の延長を行うのではなく,あくまで据置期間の延長は,例外的な措置に過ぎないことに留意し,慎重に検討すべきでしょう。他方,会員側としては,据置期間の延長通知があっても十分に争う余地がありますからその通知内容について,十分に吟味すべきだと思います。

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