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第14回 弁護士と「広告」

H21.12.4 虎頭信宏

少し前から,電車・バスの車内や,新聞・雑誌・タウンページで,法律事務所の出している「広告」が増えたなあと思う方がおられるかもしれません。そればかりでなく,最近では,テレビコマーシャルもしている法律事務所もあったりなんかして,ちょっとビックリされている方や,逆に,なぜ今まではコマーシャルがなかったんだろうと思っている方もおられるかもしれません。

実は,それまで原則禁止とされていた弁護士の広告は,平成12年の「弁護士の業務広告に関する規程」(以下,「弁護士広告規程」といいます。)の改正により,原則として自由化されました。したがって,約10年近く前から,その気になれば,テレビコマーシャルも含め,広告自体を行うことは可能だったわけです。では,なぜ,これまで弁護士の広告が現在ほど活発ではなかったのでしょうか。

一つには,弁護士業界が保守的で,弁護士間の競争意識も希薄だったことから,弁護士が「広告」というものに注目をしていなかったという点があります。しかし,それだけなく,次に述べる点も,これまで弁護士の広告が活発でなかった大きな理由の一つだと思います。

弁護士の広告が自由化されているといっても,どんな広告をしてもいいというわけではありません。弁護士広告規程においては,一定の広告を行うことを禁止しており(弁護士広告規程第3条),その中には,以下のようなものがあります。

 ・誘導又は誤認のおそれのある広告(弁護士広告規程第3条第2号)
 ・誇大又は過度な期待を抱かせる広告(同条第3号)
 ・弁護士の品位又は信用を損なうおそれのある広告(同条第5号)

例えば,「割安な報酬で事件を受けます」などの曖昧で不正確な表現は「誤認のおそれのある広告」になりますし,「当事務所ではどんな事件でもたちどころに解決します」などという広告は「過度の期待を抱かせる広告」にあたるとされています。そのほか,「取り扱い分野」という表現は問題ないけれど,「専門分野」という表現は,「本当に専門なのか」という客観的な判断が担保されていないから差し控えることが望ましい,などと言った細かい問題もあります(これらの問題については日本弁護士連合会が「運用指針」を出しています。)。

その中でも,弁護士が広告をする場合に一番アタマを悩ませる(だろう)問題は,その広告が,「弁護士の品位や信用を損なうおそれがあるか」というところです。というのも,広告の「内容」はもちろんのこと,広告の「媒体」や「方法」についても,弁護士の品位や信用を損なうと評価される可能性があるからです。例えば,上記の運用指針の中では,新聞や雑誌について,「低俗な風俗雑誌,総会屋その他の反社会的勢力の疑いがある者の発行する新聞・雑誌等に広告を掲載すること」が,弁護士の品位や信用を損なうおそれがあると評価されるとされていますし,テレビやラジオについても,「低俗又は社会的に非難を受ける番組等,国民から見て弁護士に相応しくないと考えられる番組における広告」が,弁護士の品位や信用を損なうおそれがあると評価されることがあるとされています。

しかし,そもそも,弁護士の「品位」「信用」の概念自体が抽象的ですし,「低俗な風俗雑誌」や「国民から見て弁護士に相応しくない番組」などの概念も,曖昧といえば曖昧です。最終的には広告の受け手である国民の視点から,個々の事案ごとに判断されることになるのですが,このような制限があることから,弁護士も,これまでは,思い切った広告を行うことを躊躇していたというのが正直なところだと思います(今のコマーシャルなども,相当慎重に内容を検討して作成しているのではないでしょうか。)。

債務整理をはじめとして弁護士のニーズが高まっていることや,弁護士業界の競争も激しくなり,広域的に債務整理等を取り扱う新しいタイプの法律事務所が現れてきたことに加え,コマーシャルなどの先例もでき,今後,弁護士の広告はますます増加すると思われますし,それにより,閉鎖的だ,敷居が高い,と思われがちな弁護士に対する一般の認識が変化することは必要だと思います。ただ,どのようにして時代のニーズと弁護士の品位や信用(個人的には「品位」より「信用」が重要だと思います。)をマッチさせていくか,難しい問題に直面していることを実感します。このコラムを読んでいただいて,弁護士の広告を見てみれば,これまでと違った印象を持たれるかもしれません。

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