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第149回 経営者保証に関するガイドライン

H26.1.28 平良 夏紀
  • はじめに

    中小企業・小規模事業者が金融機関等から融資を受ける際に経営者が個人保証を行うことは,これまでも広く一般的に行われてきました。この経営者の個人保証(以下「経営者保証」といいます。)につき,平成25年12月5日,「経営者保証に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」といいます。)が公表されました。本ガイドラインでは,新たな保証契約の締結や既存の保証契約の履行に関する指針が示されています。なお,本ガイドラインは,平成26年2月1日から適用が開始されますが,適用に関する準備が整った金融機関については,先行して本ガイドラインに即した対応が求められています。

    本ガイドラインは,一般的なガイドラインと同様に法的拘束力を有しませんが,主債務者,保証人,金融機関等の各当事者の自発的な尊重・遵守を求めており,既に多くの金融機関はホームページ等において本ガイドラインに従った運用をしていく旨の文書を掲載しています。

    このように,今後,経営者保証については,多くの金融機関で本ガイドラインに従った対応がされていくことが予想されるため,本コラムでは,その概要を簡単にご紹介いたします。

  • 背景

    本ガイドラインが作成された背景には,経営者保証は,資金調達の円滑化に寄与する反面,早期の事業再生を阻害する要因となっている等の課題が存在しました。本ガイドラインは,このような課題による弊害を解消し,中小企業の活力を引き出すことにより延いては日本経済を活性化すべく,中小企業庁および金融庁が共同で設置した研究会の報告書に基づき,日本商工会議所と全国銀行協会が共同で設置した「経営者保証に関するガイドライン研究会」により作成されました。

  • 本ガイドラインの概要

    (1)  本ガイドラインの対象となり得る保証契約
    本ガイドラインは,対象となる保証契約の要件として次のような基準を示しています。

    ア   主債務者が中小企業・小規模事業者であること
    個人事業主も含むとされています(以下,併せて「中小企業等」といいます。)。

    イ   保証人が個人であり,主債務者である中小企業等の経営者であること
    「経営者」には,実質的な経営権を有している者,営業許可名義人,経営者と共に事業に従事する当該経営者の配偶者,経営者の健康上の理由のため保証人となる事業承継予定者等も含まれます。

    ウ   主債務者および保証人双方が弁済について誠実であり,対象債権者の求めに応じて,それぞれの財産状況等について適時適切に開示していること
    対象債権者には,中小企業に対する金融債権を有する金融機関等,既存の債権者から保証債権の譲渡を受けた債権回収会社,公的金融機関等も含まれます。なお,保証履行をして求償権を有することとなった保証人は含まれません。

    エ   主債務者および保証人が反社会的勢力ではなくそのおそれもないこと

    (2)  経営者保証なしの融資の場合
    本ガイドラインは,中小企業等が経営者保証なしで融資を受けることを希望する場合に,次のような基準を示しています。

    ア   主債務者に求められる経営状況

    [1]  法人と経営者との関係の明確な区分・分離
    たとえば,会社資産については,経営者の個人所有とはせず,法人所有とすること,事業上の必要が認められない会社から経営者への貸付は行わない,個人として消費した飲食代等につき法人の経理処理をしない等が挙げられています。また,仮に,店舗が自宅を兼ねている場合等,法人所有とすることができない事情が存在する場合には,法人が経営者に対して賃料を支払うこと等で実質的に法人と個人を分離することが求められます。なお,信頼性を向上のため,外部専門家による整備・運用の状況の検証を行うことが望ましいとされています。

    [2]  財務基盤の強化
    法人のみの資産・収益力で返済が可能と判断し得る財務状況が期待され,具体的には,十分なキャッシュフローの確保や内部留保が潤沢であることとされています。

    [3]  財務状況の正確な把握,適時適切な情報開示等
    たとえば,貸借対照表,損益計算書の提出のみならず,決算書上の各勘定明細の提出をすること,年に1回の本決算の報告のみならず,試算表・資金繰り表等の定期的な報告をすること等の対応が求められています。なお,信頼性を向上のため,外部専門家による情報の検証を行うことが望ましいとされています。

    イ   対象債権者に求められる対応

    金融機関としては,上記アの[1]から[3]の要素を判断した上で,経営者保証に代替する手法を活用する可能性について検討することが求められます。経営者保証に代替する手法としては,停止条件付保証契約(主債務者が特約に違反しない限り保証債務の効力が発生しない保証契約),解除条件付保証契約(主債務者が特約を充足する場合は保証債務が効力を失う保証契約),ABL(会社が保有する在庫や売掛金等を担保にする融資手法)等が挙げられています。

    (3)  経営者保証がやむを得ない場合
    本ガイドラインは,経営者保証がやむを得ない場合につき,対象債権者に次のような対応を求めています。

    ア   経営者保証の必要性,保証履行時の履行の範囲,保証契約の変更・解除の見直しの可能性等についての丁寧かつ具体的な説明
    たとえば,上記(2)ア[1]から[3]の要素のどの部分が十分でないために保証契約が必要であるか,どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性があるか等を具体的に説明することが求められています。

    イ   適切な保証額の設定
    対象債権者は,保証金額を形式的に融資額と同額とはせず,保証人の資産および収入の状況,融資額,主債務者の信用状況,物的担保等の設定状況等を総合的に勘案して設定することが求められています。

    (4)  保証債務の整理

    ア   保証債務の整理の申出のための要件
    保証人が本ガイドラインに基づく整理の申出をするための要件として,次の点が定められています。

    [1]  上記(1)アからエの要件を充たす保証契約の保証人であること

    [2]  主債務者が法的債務整理手続(破産,民事再生,会社更生,特別清算等),または,準則型私的整理手続(事業再生ADR,特定調停等の利害関係のない中立かつ公正な第三者が関与する私的整理手続)を行っているか,もしくは終了していること

    [3]  対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

    [4]  保証人に免責不許可事由(破産法第252条1項(10号を除く))が生じておらず,そのおそれもないこと

    イ   保証債務の整理を図る場合の対応

    [1]  保証債務の履行基準
    保証人の手元に残すことができる残存資産の範囲については,対象債権者は,「破産手続きにおける自由財産の考え方」や「民事執行法に定める標準的な世帯の必要生計費の考え方」との整合性を勘案して検討することとされています。
    「破産手続きにおける自由財産の考え方」とは,破産法第34条3項,4項に定められている金額(金99万円)を指し,「民事執行法に定める標準的な世帯の必要生計費の考え方」とは,民事執行法第152条,同法施行令第2条1号に定められている金額(一月金33万円)を指しています。
    また,一定の合理性が認められる場合には,一定期間(雇用保険の給付期間の考え方を参考にするとしています)の生計費に相当する額(一月金33万円)や華美でない自宅等を保証人の残存財産の範囲の決定に含めることを検討することとされています。

    [2]  保証債務の減免,期限の猶予その他の権利変更の内容
    保証人が保証債務の一部履行後に残存する保証債務の免除を受ける場 合等については,保証人の資力に関する情報を誠実に開示すること,開示した情報の内容の正確性について表明保証を行うこと,支援専門家(弁護士や税理士等)が適正性についての確認を行い対象債権者に報告すること,自らの資力を証明するために必要資料を提出すること,弁済計画に経済合理性があること,表明保証を行った資力の状況が事実と異なることが判明した場合,免除した保諸債務及び免除期間分の遅延利息も付した上で,追加弁済を行うことについて,合意書面を締結すること等の要件を充たすことが求められています。

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