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第157回 中国で企業が労働契約をする際における注意点(二)

H26.4.28 張 麗霞

今回は,中国における労働契約作成の注意点を解説するコラムパート2です(パート1は,「第114回中国で企業が労働契約をする際における注意点(一)」です。)。

今回は,従業員の違法離職,企業秘密漏えいリスクへの対応,競業行為への対応について解説していきたいと思います。

  • 従業員が事前の通知もなく会社を辞めた場合,会社は従業員に対して損害賠償請求できますか?

    労働契約法第37条により,「従業員が辞職する場合,30日前までに会社に届けなければならない」と規定し,同法第90条により,「労働者は本法の定めに違反して労働契約を解除し…,使用者に損害を負わせた場合,損害賠償責任を負う」と規定されています。しかし,実務上,届出なしで会社を辞めてしまうケースが頻発しています。そして,企業はこのような従業員の違法離職によって被った損害金額を通常,立証できず,当該従業員と連絡が取れないことも多いため,事実上,損害賠償を請求できないことが多いです。一方,労働契約法第25条により,「使用者は任意に労働者に対して違約金を課すことができない」と規定されているため,会社にとっては,かなり悩ましい問題です。

    それでは,この上記のような行為を規制する方法はないでしょうか?

    対策としては,労働契約書にあらかじめ損害の計算方法を決め,従業員の離職後において,離職従業員の穴を埋めるために他の従業員に残業させたときの残業代,または臨時に生じた新人採用にかかる費用等を明記して,かかる損失を給与から差引くということを定めることです。こうすることにより,従業員が違法離職した場合においても,従業員の給与から差引くこと可能となるため,万が一,訴訟になった場合であっても,裁判所が適法と判断する可能性が高くなります。裏を返せば,あらかじめ契約に規定せずに従業員の給与を差し引くことは,法的根拠がないため,裁判所に給与支払いを命じられる可能性が極めて大きいということになります。

  • 離職従業員による企業秘密の漏えいリスクにはどのように対応すれば良いですか。

    中国では,正当な方法で企業秘密を入手し使用する行為は違法とされていないため,従業員が会社在職中に入手した企業秘密を用いて,会社を辞めた後に会社と競業行為を行った場合,会社は当該従業員に対して法的手段をとることはできません。これに対して,中国不正競争防止法第10条(三)において,「(経営者は)約定又は関連権利者が有する秘密保持の要求に違反して,当該営業秘密を公開,使用又は他人に使用させることによって営業秘密を侵害してはならない。」と規定しています。条文からすると,秘密保持の約束があることが,会社が従業員の責任を追及する前提条件となります。

    もう一つ,「営業秘密」と認定される要件の一つとして,「権利者が守秘措置をとったこと」が要されます(不正競争防止法第10条)。「最高人民法院が不正競争民事行為案件の審理における法律の適用に関する若干問題解釈」第11条(五),「秘密保持条項が設定されることは権利者が秘密保持の措置をとったことに該当する」と規定し,労働契約で秘密保持を義務付けることは,「営業秘密」の認定を有利にします。もちろん,営業秘密の範囲等を契約で詳細に約定することが望ましいといえます。

  • 離職従業員による競業リスクにはどのように対応すれば良いですか。

    会社法上は,会社の董事と高級管理者のみ競業避止義務を負い,一般の従業員に対して競業避止義務を課す規定はありません(会社法第148条1項(四))。同時,労働契約法は,二重労働関係を禁止していないので,一般の従業員が在職中に競業関係にある他社に勤務するケースがしばしばあります。これは,実に大きな問題です。これに対応するためには,事前に労働契約において,在職中の競業避止義務を定め,違反する場合における損害の計算方法を決めておけば,トラブルを未然に防ぐことができます。

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