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第164回 英文契約書の基本の基本(本文の構成編)

H26.10.7 平良 夏紀

今回は,契約書の本文の構成について解説致します。

契約書は,取引の場面においては,契約上の義務を履行するにあたっての指針となり,紛争の場面においては,裁判所や仲裁廷が勝敗を判断するにあたってのルールになるものです。そのため,契約書の内容の「分かりやすさ」や「明確さ」は,如何なる契約書であっても重要です。これは,契約書が英文契約書であれ,和文契約書であれ,その他の言語の契約書であれ,共通していえることでしょう。

  • 契約書のフォーマット(原則型,ボックス型,別紙型)

    契約書の「分かりやすさ」や「明確さ」にとって重要な要素の一つは,そのフォーマットです。

    (1)  3つのタイプ

    英文契約書のフォーマットには,大きく分けて,3つのタイプがあります。

    1つ目は,条項を並べていく最もオーソドックスなタイプです。本コラムでは,これを「原則型」と名付けましょう。

    2つ目は,契約書の表面または1枚目にその取引にとって特徴的な事項(たとえば,品目,数量,納品日等)が記載され,裏面または2枚目以降にその他の一般条項が記載されるタイプです。通常,このようなタイプの契約書の表面または1枚目は,升目になっているので,これを「ボックス型」と名付けましょう。

    3つ目は,契約書本文の各条項の詳細がSchedule(スケジュール)やExhibit(エグジビット)と呼ばれる別紙に記載され,契約書の最後に添付されるタイプです。これを「別紙型」と名付けましょう。

    最近は,英文契約書を和訳したものを和文契約書として利用することも増えてきていますので,和文契約書でも,ボックス型や別紙型の契約書は一般的になってきているといえます。

    それでは,次に,各タイプの契約書の特徴とその利用が適した場面についてみていきましょう。

    (2)  原則型

    最もオーソドックスなフォーマットの契約書です。原則型の契約書には,これまでのコラムで解説した「タイトル」,「頭書」,「Recitals」「Lead-in」が記載され,次に第1条から順番に条項が並べられ,最後に署名欄が設けられています。

    原則型の契約書は,比較的シンプルな契約,条項数が多すぎない契約,単発的な契約に適しています。また,継続的な取引のうち,取引基本契約と個別契約を締結する方法の契約の場合にも,この原則型の契約書は適していると考えられます。

    (3)  ボックス型

    各取引にとって特徴的な事項が頭出しされているフォーマットの契約書です。ボックス型の契約書は,複数の相手と同種の取引を数多く行う場合に適しています。

    たとえば,機械の部品メーカーであれば,各取引先との間で複数の売買契約を締結することになりますので,その都度,原則型の契約書を作成していては煩雑ですし,ひな型がある場合であっても修正する箇所が分散していれば,修正漏れが生じる可能性もあります。

    そこで,契約書の表面または1枚目に,買主名,商品名,商品番号,数量,納期等,取引ごとに内容が異なる事項をまとめ,裏面または2枚目以降に,各取引先に共通する取引条件(瑕疵担保責任条項,品質保証条項,管轄条項等)を記載した契約書を用いれば(裏面または2枚目以降を「General Terms and Conditions」(一般条項)といいます),取引ごとに表面または1枚目のみを作成すれば足りることになるので,契約書の作成も簡便になります。また,大量の契約書を画一的に管理することも可能になります。

    ボックス型の契約書は,契約の相手方にとっても,その取引において最も重要な事項が頭出しされていますので,分かりやすいですし,契約書の内容の確認作業に要する時間も短縮できます。

    (4)  別紙型

    契約書本文の条項の詳細が別紙として契約書の最後に添付されるフォーマットの契約書です。金融取引等の複雑な取引や,契約書本文に詳細まで規定すると長くなり分かりにくくなってしまう場合に適しています。

    たとえば,英文契約書では,第1条に用語の定義条項が設けられることが多いですが,用語のリストが長くなる場合には,そのリストを別紙として契約書の最後に添付する方が分かりやすくなります。また,取引の対象となる商品が大量であったり,仕様が複雑な場合には,対象商品の詳細を別紙に記載して契約書の最後に添付する方が分かりやすいでしょう。このように,本来は,契約書本文に記載されるはずの内容が契約書の最後に別紙として添付される場合,この別紙を「Schedule」(スケジュール)と呼びます。

    また,たとえば,食品メーカーであれば,各取引先から日常的に注文が入ることが予測されますので,決まった様式の注文書の提出を求めたいでしょう。そのような場合には,売買契約書に注文書の様式を別紙として添付することも考えられます。この注文書のように,添付書類自体が独立した文書の場合には,この別紙を「Exhibit」(エグジビット)と呼びます。

    その他,「Schedule」や「Exhibit」の代わりに, Appendix(アペンディックス),Annex(アネックス), attachment(アタッチメント)という言葉が用いられることがありますが,これらは,いずれも,「別紙」や「添付資料」を意味する用語で,「Schedule」および「Exhibit」の総称です。

  • 各条項の構成およびナンバリング(Articles, Sections, Sub-sections,Clauses)

    前記のいずれのタイプの契約書においても,契約書本文の条項の構成を分かりやすく,明確にすることは,契約書全体の「分かりやすさ」「明確さ」にとって重要です。

    契約書本文の条項の構成を分かりやすく,明確にするためには,(1)関連する条項をまとめる,(2)分かりやすい順序に条項を並べる(この順序は,契約の内容により,時系列であったり,重要度順であったりします)(3)原則と例外がある場合には,原則を先に記載することを意識するとよいでしょう。

    そして,契約書の条項を分かりやすくナンバリングしていくことも重要です。

    和文契約書においては,一般的に,契約書の各条項を条,項,号でナンバリングします。つまり,大項目は,「第1条,第2条,第3条…」(これらを「条」といいます)と記載し,中項目は「1,2,3…」(これらを「項」といいます)と記載し,小項目は「(1),(2),(3)…」(これらを「号」といいます)と記載します。

    英文契約書では,一般的に,各条項をArticles, Sections, Sub-sections,Clausesに分けてナンバリングします。つまり,大項目は「Article 1,Article 2,Article 3…」(これらを「Articles」といいます)と記載し,中項目は「1,2,3…」(これらを「Sections」といいます)と記載し,小項目「(a),(b),(c)…」(これらを「Sub-sections」といいます)と記載し,小項目をさらに分ける場合は「(1),(2),(3)…」(これらを「Clauses」といいます)と記載します。もっとも,条項の数が25以下の契約書においては,「Articles」は使用せず,大項目を「Sections」,中項目を「Sub-sections」,小項目を「Clauses」とすることが多いように思われます。

    なお,英文契約書においては,Articlesの上位概念としてSectionsという言葉を使うこともありますので,この点はご留意下さい。

  • 各条項の見出し(Heading)

    契約書本文の各条項に見出し(Heading)を付けることは,契約書の「分かりやすさ」「明確さ」を助けますので,英文契約書においても,見出し(Heading)を付けることが望ましいです。

    見出し(Heading)には,その条項の内容を端的に表わす用語を選択することが重要です。たとえば,「Buyer’s Obligations」(買主の義務)や「Confidentiality」(秘密保持)や場合によっては「Miscellaneous」(その他)等の見出し(Headings)を付けることが考えられます。ミスリーディングな用語を選択すると,却って分かりにくくなってしまいます。たとえば,「Buyer’s Obligations」(買主の義務)という見出しの条項に,買主の権利に関する条項が記載されていたら,分かりにくいですし,誤った解釈をされてしまう原因にもなります。

    なお,英文契約書には,「Headings in this agreement are provided for convenience only and do not affect its meaning」(本契約の見出しは,便宜上記載されているものであり,内容に影響するものではない)という条項が設けられることがあります。このような条項を設けることには,見出し(Heading)がミスリーディングなものであっても,それによる不利益を防止しようとする意図がありますが,先ほども述べたように,ミスリーディングな見出し(Heading)は,解釈の誤りを誘発してしまうおそれがあり,それが紛争に発展してしまうおそれもありますので,契約書の「分かりやすさ」「明確さ」という観点からは,適切な見出し(Heading)をつけることが重要です。

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