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第169回 中国におけるコンプライアンス違反とそれに対する処罰

H26.12.16 麦 志明

2014年8月ころから、中国において外資企業に対するコンプライアンス違反の事件が相次ぎ、高額な賦課金や罰金が課される事件が相次いでいます。これまで、中国は「人治」の国と言われ、当局の担当者・責任者と良い関係を続けていれば、多少のレギュレーション違反は見逃してもらえていたというのが従来の実務でしたが、習近平国家主席就任後における「質素倹約」「公務浄化」の方針とも相まって、従来の実務が通用しないような状況も生じてきています。

特に、外資に対する賦課金や罰金は高額になる傾向がありますので、今後、一層の注意が必要となってきます。そこで、今回のコラムでは、中国において、日本企業が設立した現地法人が知らず知らずのうちに陥ってしまうコンプライアンス違反行為を紹介したいと思います。

  • 経営範囲の逸脱

    日本では、ほとんどの会社が、会社の目的(中国における会社の経営範囲に相当)として「その他上記に関連する一切の事項」と定めることが可能であるため、会社の経営範囲はほとんど制限がないと言っても過言ではありません。

    ところが、中国では、会社の設立に当たっては、会社の経営範囲を明確に定めなければなりません。特に、外資系企業の設立に当たっては、会社の設立に際して、行政当局の批准や営業許可を取得しなければならないので、会社の経営範囲は、より一層厳格に解釈される傾向があります。

    中国では、例えば、工場で商品を生産することを目的とする会社が、並行して、ビルの賃貸借を業務としたような場合は、経営範囲を逸脱することになるので、注意が必要です。私が過去に経験した事案には、ある外資企業が、生産縮小に伴って、従来使用していた自社工場の半分くらいが空き家になったので、これを他の会社に賃貸して賃料を収受していたところ、数年経過した後に、現地の行政当局から、この工場の賃貸は経営範囲の逸脱であると指摘されたというものがあります。

    行政当局から経営範囲の逸脱という認定を受けますと、これにより得た違法所得が没収されたり、違法所得の額に基づいた罰金が賦課されたり、情状が悪い場合には、現地法人の営業許可まで取り消されたりしてしまいますので、現地法人の存続にかかわるような重大な影響を受けかねません。

    以上の通りですので、中国において、現地法人が「副業」を行おうとする場合には、経営範囲を逸脱していないか、確認を怠らないようにする必要があります。

  • 商業賄賂

    従来、中国では、実務上、「儀礼」と称して、実質は賄賂に近いような贅沢な接待や贈答が行われる傾向にありました。

    ところが、前述した通り、習主席は就任後、このような贅沢な接待や贈答は禁止する方針を打ち出しましたので、これにより、このような「儀礼」的な賄賂の収受は厳格に取り締まられることになりました。現在の状況(2014年末ころ。以下同じ)を見る限り、日本企業や現地法人が、行政の担当官や責任者に対して、贅沢な接待や贈答を行うのは控えた方が良いという状況にあります。

    また、特に注意すべきであるのは、日本と異なり、中国では、公務員に対する贈賄のみならず、民間人に対する贈収賄も違法とされていることです。日本では、民間での接待や贈答は、ある程度「派手」であっても贈収賄としては処罰されませんが(但し、極端な場合、商法上の任務違背、背任等その他の責任が追及される可能性はあります。)、中国では、このような民間での接待や贈答も、儀礼の範囲を超える場合は「商業賄賂」として処罰されます。

    私が過去に経験した事案には、ある日本企業の現地法人が、民間の総合病院に自社の製品を売り込むため、当該病院のお医者様等に過剰な接待を行ったり、出張費や研究費等の名目で多額の利益供与を行ったりしていたところ、事後、現地の司法当局・行政当局から、これは商業賄賂であるとの指摘を受け、処罰されたというものがあります。

    2014年の8月ころには、英国のグラクソ・スミス・クラインが中国国内で設立した現地法人が、商業賄賂行為を行ったことにより、経営幹部らに有期懲役刑が科され、また、現地法人に対しても30億元(2014年末のレートで約580億円)の罰金が課されたのは、記憶に新しいところです。

    司法当局や行政当局から商業賄賂として認定を受けますと、現地法人の責任者が刑事罰(懲役刑・罰金)に問われたり、現地法人に罰金が課されたりする等の厳しい処罰を受けてしまいますので、現地法人の経営に大きな影響を及ぼしてしまいます。

    従って、中国の現地法人が、民間での接待や贈答をしたり、されたりする場合には、儀礼の範囲を超えて、贅沢にならないようにする必要があります。

  • 価格拘束

    中国では、2008年まで独占禁止法が制定されておらず、それまでは単行法規(「価格法」等)により、価格拘束等の処罰が規定されていましたが、現実に処罰を受けることは稀でした。ところが、2014年に入ると、価格拘束を監督している国家発展及び改革委員会の担当部門により、相次いで独占禁止法違反に基づく処罰がなされ、日本企業の現地法人もその処罰の対象になってしまいました。

    日本企業やその現地法人に関連する事案としては、ベアリングの価格カルテルに基づく処罰(水平方向での価格拘束)や、自動車メーカーによるメンテナンス部品に関するディーラーに対する希望小売価格の指定に関する調査(垂直方向での価格拘束)は、記憶に新しいところです。

    また、国家発展及び改革委員会が公表した内容によれば、今後もこのような行為を引き続き取り締まっていく、と表明されていますので、このような価格拘束行為は、今後も重点的に取り締まりを受けることが予測されます。

    日本企業の現地法人担当者・責任者は、現地での情報が少ないことから、日本人同士で会合を行って情報交換を行うことが多く、これが発展して、同業種における研究会等の定例的な会合となり、この会合内で、気軽に、価格についての情報交換(事実上の価格合意)が行われ、価格カルテルにつながるような場合もあるので、情報交換を行う場合には、このようなカルテルに至らないように注意をすることが必要になってきています。

    現在のところ、中国では、独占禁止法に関連して、ガイドライン等、違反行為の類型を細かく示すようなものは公開されていませんが、基本的には、日本における違反行為と同様の行為は、中国においても違反行為と解釈されるものと思われますので、日本のガイドラインで「黒」「灰色」類型に分類されているような行為については、中国国内でも行わないようにする必要があります。

    また、現在のところ、価格拘束の事案においては、前年度の売上高の1%〜10%の割合により計算された賦課金の納付が命じられるのみですが、法文上は、違法所得の没収も併科することが可能になっているので、今後の実務においては、違法所得の没収が併科される可能性についても、注意をすることが必要になりそうです。

    なお、中国の独占禁止法においても、リーニエンシー制度による処罰の減免(但し、行政当局に減免の裁量が与えられている。)は規定されていますので、独占禁止法違反の行為を発見した場合は、処罰の減免を求めるため、早期に違法行為の是正、行政当局への報告、行政当局への調査の協力を検討することをお勧めいたします。

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