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第177回 葬儀費用はだれが負担するの?

H27.9.3 林 智子
  • 「父が亡くなりました。私が喪主を務めたので、葬儀費用はとりあえず私が支払っておいたのですが、

    ・この費用は父の預金(遺産)から返してもらってもよいでしょうか?
    ・(仮に遺産から返してもらえないのであれば、)ほかの相続人に負担をお願いすることはできますか?
    ・お香典は葬儀費用に充ててもよいのでしょうか?

    ・お寺に支払った戒名料やお通夜のときに参列者に振舞った食事代はどうなりますか?

    相続人同士の仲が良くないので、法律に従ってきっちり処理しておきたいのです。」

    こういったご相談をよく受けます。日本消費者協会の『葬儀についてのアンケート調査』報告書(2014年)によれば、葬儀にかかる費用の全国平均は、約189万円とのことで、これら費用の負担者が誰になるのかについては、確かに重大な関心事と思われます。

    そこで、今回は、故人に関して発生した葬儀費用やお香典などの帰属について、法的に整理してみようと思います。

  • まず、最初に押さえておく必要があるのは、「故人の相続財産は、相続発生時(=故人の死亡時)に保有していたものに限られる。」ということです。したがって、葬儀費用や香典など、故人が死亡した後に発生したものについては、たとえ故人に関する支出や収入であっても、故人の相続財産とはなりません。

  • 葬儀費用の帰属について、明確な法律上の規定はなく、学説判例上も判断が分かれていますが、名古屋高裁平成24年3月29日判決は、次のように判断しています。

    『亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては,追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者,すなわち,自己の責任と計算において,同儀式を準備し,手配等して挙行した者が負担するのが相当である。

    なぜならば,亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては,追悼儀式を行うか否か,同儀式を行うにしても,同儀式の規模をどの程度にし,どれだけの費用をかけるかについては,もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し,実施するものであるから,同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当であるからである。』

    すなわち、上記判例は、葬儀費用の負担者は、原則として儀式の主宰者(≒喪主)であると判示しています。したがって、この判断に従えば、冒頭のご相談の葬儀費用については、喪主である相談者が負担し、ほかの相続人は負担しないということになります。

    もちろん、相続人間で話し合いのうえ、(相続財産に関する費用(民法885条)として)故人の相続財産から支出することは可能です。上記判例も、(1)故人があらかじめ自らの葬儀に関する契約を結んでいたり、(2)故人の相続人等の間で葬儀費用の負担について合意していた場合、は例外である、と判示しています。

  • また、香典とは、一般に、葬式費用に充てることを目的として葬式の主宰者である喪主に対し贈与されるものと解されていますので、これについても葬式の主宰者(≒喪主)に帰属し、冒頭のご相談についても、相談者が香典を葬儀費用に充てることに特段問題ないものと考えます。

  • 最後に、「葬儀費用」とはどこまでを含むのか(寺院に支払った戒名料等や通夜のときなどに参列者に振舞った食事代など)についても、法律上、明確に定めた規定はありません。したがって、仮に相続人間で、「葬儀費用は相続財産から支出する」との合意ができているとしても、当該「葬儀費用」が何を指すかまで合意しておくほうが、後日の争い事を避けられると思います。

    なお、相続税法は、相続税の計算上、故人の死亡に関して発生した相続財産から差し引ける「葬式費用」について、次のように定めていますので、ご紹介しておきます(国税庁ホームページより)。

    【1】葬式費用となるもの

    (1)  死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用

    (2)  遺体や遺骨の回送にかかった費用

    (3)  葬式や葬送などを行うときやそれ以前に火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)

    (4)  葬式などの前後に生じた出費で通常葬式などにかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)

    (5)  葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用

    【2】葬式費用に含まれないもの

    (1)  香典返しのためにかかった費用

    (2)  墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用

    (3)  初七日や法事などのためにかかった費用

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