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第182回 2012年の中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)の分裂に関連する管轄権争いの終焉 〜最高人民法院による2015年7月15日付司法解釈

H27.12.14 麦 志明

第138回のコラムでも紹介させていただきましたが、2012年ころにおける中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)の分裂(以下「本件分裂」といいます。)は、中国国内の渉外仲裁実務に与えた影響が大きいことから、日本国内においても、これまで多数の論考・検討がなされてきました。

特に、本件分裂前に中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会、同上海分会を仲裁機関として指定した仲裁条項については、本件分裂後、関係する各仲裁機関は、それぞれ自らが管轄権を有すると主張し、複数の法院において、その管轄権について跛行的判断が行われたため、渉外仲裁実務に大きな混乱を及ぼしました。

このような状況に対して、今般、最高人民法院は、2015年7月15日付で「上海市高級人民法院等による中国国際経済貿易仲裁委員会およびその分会等の仲裁機構が行った仲裁裁決に関する司法審査案件についての質問に対する最高人民法院の回答」(以下「本回答」といいます。)を公布し、関係する各仲裁機関の管轄権争いについて事実上終止符を打ちました。

本回答により、(例外的な場合を除き)本件分裂後における各仲裁機関の管轄権争いは決着すると思われるので、本コラムでは、その内容を紹介したいと思います。

以下、本件分裂に関係する各仲裁機関を、便宜上、下記の通り呼称します。

  • ・中国国際経済貿易仲裁委員会(新たに上海に設置された上海分会、深圳に設置した華南分会を含む。):CIETAC
  • ・元・中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会(現・上海国際経済貿易仲裁委員会/上海国際仲裁センター):SHIAC
  • ・元・中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会(現・華南国際経済貿易仲裁委員会/深圳国際仲裁院):SCIA
  • 管轄権を有する仲裁機関についての原則(今後、仲裁を申し立てる場合を含む。)

    (1)  SCIAが現名称に名称を変更する以前・SHIACが現名称に名称を変更する以前(※注)(いずれも変更日を含まない。)において、仲裁条項で仲裁機関を「中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会」・「中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会」と指定した場合における管轄権の所在

    SCIA・SHIACが管轄権を有する、とされました。

    (2)  SCIAが現名称に名称を変更した以降・SHIACが現名称に名称を変更した以降(いずれも変更日を含む。)から本回答の施行前の間に、仲裁条項で仲裁機関を「中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会」・「中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会」と指定した場合における管轄権の所在

    CIETACが新設した華南分会・上海分会が管轄権を有する、とされました。

    但し、上記にかかわらず、申立人がSCIA・SHIACに仲裁を提起し、被申立人が当該仲裁においてSCIA・SHIACの管轄権について異議を提起しなかった場合、その仲裁裁決後、当事者は法院においてSCIA・SHIACの管轄権を争うことができない、とされました。

    (3)  本回答の施行日以降(施行日を含む。)に、仲裁条項で仲裁機関を「中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会」・「中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会」と指定した場合における管轄権の所在

    CIETACが新設した華南分会・上海分会が管轄権を有する、とされました。

  • 既に受理されている仲裁について管轄権を有する仲裁機関

    (1)  本回答の施行前に、関係する各仲裁機関のいずれかによって既に仲裁が受理されている場合における管轄権の所在

    当該仲裁の受理が上記1の内容に反する場合であっても、仲裁を受理した各仲裁機関が管轄権を有する、とされました。

    (2)  本回答の施行前に、関係する各仲裁機関に同一の仲裁が重複して受理されている場合における管轄権の所在

    (i)   第1回仲裁期日までの間、当事者は法院に対して確認訴訟を提起し、上記1の(1)〜(3)の内容に基づき、各仲裁機関の管轄権の有無を確認することができる

    (ii)   第1回仲裁期日までに、当事者が上記の確認訴訟を行わなかった場合、先に当該仲裁を受理した仲裁機関が管轄権を有する

    とされました。

上記の通り、本回答は、本件分裂に関係する各仲裁機関が管轄権を有する場合をかなり具体的に規定しておりますので、それぞれの案件においてどの仲裁機関に管轄権が帰属するかについては、例外的な場合を除き、本回答を参照すれば、ほぼ確定できると思われます。

なお、本回答が公布・施行される以前に、当職が行った本件分裂に関連する管轄権争いについての論考・検討には、本回答の内容と異なる部分がございますので、本回答の施行日以降は、本回答を基準として、各仲裁条項における管轄権について、ご判断くださいますようお願い申し上げます。

(※注)
SCIAが現名称に名称を変更した日は、SCIAによれば2012年10月22日(同年12月6日公告)、SHIACが現名称に名称を変更した日は、SHIACによれば2013年4月17日(同日公告)、とされていますが、この「名称の変更」については、これらの仲裁機関が内部で決定した日であるのか、それを公告によって宣言をした日であるのか、それともその変更を管轄の行政機関に届出を行った日であるのか、解釈の余地は残されているように思われます。

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