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第208回 有期労働契約の無期転換ルール

H29.8.9 虎頭 信宏

先月、高収入の一部専門職を残業代支払などの労働時間規制から除外する「高度プロフェッショナル制度」(「残業代ゼロ制度」とも報道されています)を日本労働組合総連合会「連合」が容認したという報道(その後、容認を撤回)や、厚生労働省が、平成28年度、約1万の事業所で違法な時間外労働を確認し是正勧告を行ったという報道など、労働法制に関する大きな報道が続きました。

そして,おそらく,来年4月前後,これらの報道をはるかに上回るインパクトをもって報道される出来事が,「有期労働契約の無期転換ルール」(無期転換ルール)が実質的にスタートする,ということです。

ご存知の方も大勢おられると思いますが,「無期転換ルール」とは,期間の定めのある労働契約(有期労働契約)が5年を超えて反復更新された場合は,労働者の申込みにより,期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールです(労働契約法18条)。

このルールは,平成24年の労働契約法の改正により制定され,平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象となることから,これ以降,5年間にわたって契約が反復更新される有期労働契約者の多くは,平成30年4月1日から無期労働契約へ転換することを申し込むことができるようになります。

また,この有期労働契約には,契約社員などに多い「フルタイム」の有期労働契約だけでなく,パートやアルバイトなどの「パートタイム」の有期労働契約にも適用されます。つまり,週3,4回,短時間働くような有期労働契約も,無期労働契約に転換することになる,ということです。

このように,来年4月1日以降,多くの有期労働契約者が無期労働契約へ転換する権利を行使することができるようになることから,企業サイドからは,これを「労働契約法の2018年問題」と呼ぶこともあります。

企業が,この「無期転換ルール」に対応する方法は,大きく分けると,(1)無期転換ルールを受け入れ,有期労働契約から無期労働契約に転換する労働者(無期労働契約者)の処遇や労働条件を整備するか,あるいは,(2)無期転換ルールの適用を受けないように,有期労働契約者の雇用を管理する,ということになります。

この点,平成27年に厚生労働省の関連団体が行った統計では,フルタイムの有期労働契約者を雇用している企業の6割以上が無期転換ルールを受け入れると回答しているなど,相当程度の企業において,無期転換ルールを受け入れ,来年4月以降に向けて,その体制を整備しているようです。

また,仮に,企業が,来年4月まで何らの対応を取らず,来年4月以降の有期労働契約の更新時に,「無期転換ルールを適用されたくないから」という理由のみで契約を更新しなかった(雇止めを行った)としても,労働契約法18条や同19条(雇止め法理)違反ということで,当該雇止めが認められず,結局,無期転換ルールの適用を受けることになるリスクは非常に高いと言えます。

したがって,現時点において対応を決定していない企業におかれては,無期転換ルールが適用され,無期労働契約者という新たな従業員のカテゴリーが発生しても混乱が起きないように,最低限の対応をしておくことが望ましいと思います。

そして,無期転換ルールへの対応の根幹となるのは,有期労働契約から無期労働契約に転換する無期労働契約者に適用される就業規則を作成することであり,その中でも,無期労働契約者について,「定年」を定めることが重要とされていますが,この無期労働契約者の「定年」を定めるにあたっては,いわゆる正社員の定年とのバランスや高齢者雇用安定法との関係のほか,当該「定年」(一般的には60歳か65歳が多いように思います)を定めるとしても,無期転換時に当該「定年」(60歳や65歳)を超えるような有期労働契約者がいる場合の措置など,慎重に検討する必要があります。

厚生労働省は、ウェブサイト(「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」)を立ち上げたり、セミナーを行うなど、無期転換ルールが円滑に実行されるよう力を入れていますので、これらの情報を参考に、来年の4月までに、各企業の実情に応じた対応をすることが望まれます。

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