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第223回 評価損や買替諸費用は請求できる?

H30.11.14 佐々木 達耶

前回の当職のコラム(第203回「交通事故に遭った場合にすべき4つのこと」)では,交通事故に遭ったときにどのように対処すべきかという点について,主に過失割合の観点からお話しさせていただきました。今回は,損害論の観点から,皆様も一度は耳にしたことがあるであろう「評価損(格落ち)」と「買替諸費用」に焦点を絞ってお話しさせていただきます。

  • 評価損(格落ち)とは?

    交通事故に遭った車両について,修理をしたとしても,修理技術上の限界から,外観・機能に欠陥が生じ,あるいは事故歴・修理歴によって商品価値の下落が見込まれる場合の事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額(自動車の価値の低下)を評価損といいます(なお,本コラムでは,技術上の評価損のみを取り上げることとし,取引上の評価損については別の機会にゆだねることとします。)。

  • 評価損の請求は認められるのか?

    (1)  一般的には,現在の修理技法によれば,修理をした後に外観や機能に欠陥が生じることはないと考えられており,評価損については認められにくい傾向にあります。保険会社の対応としても,基本的には,評価損を認めないという対応をしているものと思われます(もちろん,各保険会社が独自に定めている評価損を認める基準を満たす場合には,評価損の請求が認められることもあります。)。

    (2)  どのような場合に評価損の請求が認められるのかについて,明確な基準はありませんが,判例の傾向としては,初度登録からの期間,走行距離,損傷の部位,車種等を念頭に,評価損が発生するか否かを検討しているものと思われます。この点,初度登録からの期間,走行距離及び車種についても判断の要素にはなっておりますが(新車に近く,高級車であるほど評価損が認められやすく,新車であっても軽自動車等では評価損は認められにくい),一番重要なのは損傷部位であると考えます。すなわち,ボディーの骨格部分に損傷が認められない場合には,部品交換等により修理を行うことが可能であり,事故当時の車両価格と修理後の車両価格に差額が生じにくいため,基本的に評価損が認められない傾向にある一方で,ボディーの骨格部分にまで損傷が及んでいる場合には,当該部分は部品等の交換により修理を行うことができず,事故当時の車両価格と修理後の車両価格に差額が生じる可能性が観念できることから,評価損が認められる可能性があります。

    (3)  評価損に該当するかどうかを判断するに際しては,特に,ボディーの骨格部分に損傷が及んでいるか否かという点がポイントとなりますので,この点については,修理工場等に十分ご確認いただければと存じます。

  • 買替諸費用とは?

    買替諸費用とは,事故車両と同一の車種・年式・型,同程度の使用状態・走行距離等の車両を中古車市場において取得するのに要する諸費用等をいいます(東京地裁平成15年8月4日判決参照)。

    一般的に,現在の修理技法によれば,事故に遭った車両は,修理をすれば元どおりの状態になると考えられており,修理費相当額が損害となると考えられています。しかしながら,修理に要する費用及び買替諸費用の合計額が,当該車両の事故当時の時価額を超える場合には,損害賠償制度の目的は被害の原状回復をすることにあると考えられていることから,経済的全損と扱われ,当該車両の事故当時の時価相当額と買替諸費用が事故による損害であるとされます。

    事故により,経済的全損と評価され,車両の買替えを余儀なくされた方からすれば(もちろん修理を行い,時価額を上回る金額を自己負担とすることも可能です。),買替えのために必要となった費用はすべて請求したいと考えるのが当然だと思います。以下では,どのような費用が買替諸費用として認められるのかについてご説明いたします。

  • どのような費用が買替諸費用として認められるのか?

    (1)  買替諸費用については,経済的全損であると評価され,実際に車両を買い替えた場合に請求をすることが可能となります。この点,車両を買い替えた際に発生した費用であれば何でも買替諸費用として認められるということではありません。

    (2)  買替諸費用として認められる傾向にあるものとしては,[1] 車両の登録,車庫証明の取得及び廃車の手続にかかる法定の手数料相当額,[2] 車両の登録,車庫証明の取得,廃車の手続及び納車をディーラーに依頼した場合の報酬額として相当な金額,[3] 自動車取得税が挙げられます。

    (3)  他方で,事故車両の自賠責保険料については,自動車検査証有効期間の未経過部分に相当する金額については還付を受けることができるため,損害であるとは認められず,買替諸費用として請求することはできません。また,新しく取得した車両の自動車税,自動車重量税,自賠責保険料についても,事故による損害であるとは考えられておらず,買替諸費用として請求することはできません。

  • おわりに

    評価損や買替諸費用について,十分な根拠を示さずに請求をしても保険会社ではなかなか認めてもらえない傾向にあると思われます。また,裁判においても,評価損や買替諸費用について,相当限定的に認められているという傾向にあることからすれば,評価損や買替諸費用を請求することは容易ではありません。

    もし事故に遭われてしまった場合に,「評価損や買替諸費用を請求することはできるの?」と疑問に思われた際には,以上の点をご参考にしていただければ幸いです。

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