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第226回 夢の後先 〜宝くじ当せん金は夫婦のもの?〜

H30.11.29 今井 陽子
  • 今年もいよいよやってきました,そうです,年末ジャンボ宝くじ発売のシーズンです。平成ラストの年末ジャンボの最高賞金額は1等・前後賞あわせ10億円!

    宝くじは,「当せん金付証票法」に基づいて発行されており,最高賞金額も同法において限度が定められていますが,法改正により,あれよあれよという間に最高賞金額は高額化してきました。平成元年の年末ジャンボ宝くじの最高賞金額は1億円だったので,この平成時代の30年間で,最高賞金額は10倍も跳ねあがったことになります。

    この時期のTVの情報番組では,高額当せんが多く出る全国各地の宝くじ売り場の行列の生中継や名物販売員・高額当せん経験者による必勝法の紹介,また,「もし宝くじ1等があたったら,何に使いますか」と,誰もが一度は夢見る妄想を街ゆく人に投げかけるコーナー等がよく流されます。そして,そんな夢を見続けて久しい人間がここにも1人(私・・)。

  • さてさて,今日は,そんな夢を現実に引き当てた高額当せんにまつわる裁判例をひとつご紹介させていただきます。

    (1)  婚姻中に夫が小遣いで購入した宝くじで高額当せんして約2億円の当せん金を得た後,妻と離婚することとなりました。離婚に際しては,夫婦が婚姻中に協力して築いた財産(夫婦共有財産)があれば清算・分配(財産分与)することになり,その分与割合は裁判実務において原則2分の1とされています。

    そこで,本事案では,次の2点が争われることになりました。

    争点1:宝くじの当せん金又はこれを原資とする資産(当せん金をもとにした預貯金・保険等)は,夫婦共有財産として財産分与の対象となるか。
    争点2:夫婦共有財産である場合,分与の割合をどうするか。

    (2)  同事案の原審である前橋家裁高崎支部平成28年9月23日審判は,上記各争点について,おおむね以下のとおり判断しました。

    【原審(前橋家裁)の判断】
    争点1:宝くじ購入の原資が夫婦共有財産である家計の収入であったとしても当せん金が当然に夫婦共有財産となるものではなく,当せんした宝くじを購入した当事者(夫)には当せん金について一定の優位性・優越性が認められるとして,当せん金で得られた資産のうち7割は夫の固有財産で,夫婦共有財産は残り3割相当額のみ
    争点2:原則どおり分与割合は2分の1

    (3)  しかし,その抗告審である東京高等裁判所平成29年3月2日決定は,上記各争点についておおむね以下のとおり判断し,原審の判断を変更しました。

    【抗告審(東京高裁)の判断】
    争点1:宝くじの購入代金は婚姻後に得られた収入の一部である小遣いから拠出されたこと,当せん金の使途も自宅の住宅ローン返済や夫退職後の生活費に充てられたことから,当せん金を原資とする資産は夫婦共有財産である
    争点2:夫が小遣いの一部を充てて宝くじの購入を続け(具体的には,月2〜3万円程度の小遣いの中から,毎月2000円程度を宝くじ購入),偶々とはいえ当せんして当せん金を取得し,これを原資として資産が形成されたこと等に鑑み,資産形成については妻より夫の寄与が大きかったというべきで,分与割合については,夫6:妻4の割合とするのが相当

    (4)  仮に当せん金をもとにした資産で残っているものが1億円として,上記各判断にあてはめて計算してみますと,以下のとおりとなります。つまり,抗告審の方が,原審よりも,宝くじ購入者である夫の取り分を少なくしたわけです。

    原審(前橋家裁)
    → 夫婦共有財産はその3割相当である3000万円
    妻への分与額はその2分の1である1500万円(残り8500万円は夫のもの)
    抗告審(東京高裁)
    → 夫婦共有財産は1億円
    妻への分与額はその4割である4000万円(残り6000万円が夫のもの)

    (5)  上記裁判例はひとつの事例判断です。具体的状況・諸条件が異なれば(例えば,独身時代に貯めていた預金で宝くじを買っていたら・・,初めていったカジノで小遣いをもとでに一攫千金を得た場合だったら・・等々),裁判所の判断も色々変わってくるでしょう。

  • 上記裁判例,皆さまいかが思われたでしょうか。「はぁ,宝くじあたるとかありえないでしょ。そもそも,離婚とかうちには関係ないわ。」と思われた方,いえいえ,宝くじを買う限り,また,結婚している限りは,未来において何が起こるかは分かりませんので,どうぞご用心(?)くださいませ。

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