ホーム > コラム > 一般民事法 > 交通事故 > 第24回 交通事故における3つの責任

コラム

コラム

第24回 交通事故における3つの責任

H22.3.24 幸寺 覚

あなたが,自動車を運転していて,前方不注意等の過失により,交差点等で歩行者と接触し,怪我をさせてしまった場合,あなたは,どんな責任を負うのでしょう。

まず,あなたは,自動車運転過失致傷罪という犯罪を犯したことになり,警察等の捜査機関の捜査の対象となって,裁判を受けさせられ,罰金や懲役刑等の刑罰を科せられる可能性があります(刑法第211条第2項)。これが刑事上の責任です。歩行者が死亡したような重大な結果となった場合は,執行猶予が付かず実刑となり刑務所へ行かねばならなくなることがあります。近年,特に飲酒運転,さらに飲酒運転による事故に対する刑罰が厳しくなり(刑法第208条の2,危険運転致死傷罪),裁判所の判決も厳しくなっていますので,注意が必要です。

次に,被害者である歩行者から,事故により入院したことによる治療費,会社を休んだために給料をもらえなくなったことによる休業損害,その他慰謝料等の損害賠償金を支払うよう請求される可能性があります(民法709条)。これが民事上の責任です。なお,歩行者にも横断歩道を渡らなかった等の責任がある場合には,過失相殺と言って,その分損害賠償金が減額されることがあります。このような損害賠償金は,歩行者の怪我の程度によりかなり高額になる場合があり,自分の経済能力では支払えないこともありますので,予め保険に入り,事故の場合は,その保険から支払ってもらうことが普通です。

最後に,運転免許を持っているあなたは,この事故により,運転免許の点数が減点され,事故の程度によっては,免許停止,取消等の処分を受け,しばらく免許がなくなり,運転できなくなる可能性があります(道路交通法第103条)。これが,行政上の責任です。軽い違反で1ヶ月の免許停止等の処分のときは,講習を受けて,免許停止の期間を短縮(その講習後が免許停止期間満了等)できるようになっています。

このように,交通事故を起こした場合は,刑事,民事,行政上の3つの性質の異なる責任を問われることになります。これらは,互いに密接な関係がありますが,本来別々の手続きで行われますので,たとえばあなたが歩行者を怪我させたとしても,何ら不注意はないとして争っている場合には,稀ではありますが,場合により,刑事裁判では無罪となり刑事上の責任は発生しませんが,民事裁判では損害賠償義務が認められ,民事上の責任は問われると言った結果になることもあり,3つの局面での裁判所の判断が分かれることがあります。なんとなく不思議な感覚をお持ちになるでしょうね。これに関しては,日本の話しではありませんが,以前アメリカのO・J・シンプソン事件(殺人)で,刑事上は陪審が無罪としましたが,民事上は損害賠償請求権が認められたことがありました。これと,良く似ています。

このページの先頭へ