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第28回 遺言の基礎知識

H22.5.11 林 智子

私達が,日頃ご相談やご依頼を受ける業務の中に,遺言(一般的には「ユイゴン」と読むことが多いですが,法律の分野では「イゴン」と読みます。)の作成があります。
日本公証人連合会の調べによりますと,平成18年の遺言公正証書の作成件数は7万件を超え,昭和56年の約2倍になっているとのことで,遺言の件数は増えているようですし,各地の弁護士会でも,遺産や相続に対する関心を高めるため,「良い遺言(ヨイイゴン)」の語呂合わせで毎年4月15日を「遺言の日」とし,記念行事等を行っていますが,それでも,「遺言なんて大げさだ」と思われる方も多いかもしれません。
そこで,今回は,遺言(普通方式による遺言)の基本的な事項について,分かりやすくご説明したいと思います。

◆ 満15歳以上であれば,誰でも書ける
遺言書を書くためには,遺言の内容と法律効果を理解判断できる能力(遺言能力)が必要ですが,満15歳に達した者は,この遺言能力が認められています。
したがって,満15歳以上であれば誰でも遺言書が書くことができます。未成年者でも法定代理人の同意なくして一人で書くことができます。
なお,成年被後見人が事理弁識能力を一時回復した場合の遺言については,医師2人以上の立会いが必要です。

◆ 「普通方式による遺言」は3種類。
遺言には大別して,「普通方式による遺言」と「特別方式による遺言」の2つの方式がありますが,前者の遺言には,(1)自筆証書遺言,(2)公正証書遺言,(3)秘密証書遺言の3つの方式があります。

◆ 簡易に作成できる自筆証書遺言
自筆証書遺言であれば,遺言者が,遺言の全文,作成年月日,氏名を自書し(パソコンではだめ。),印(認印でもかまいません。)を押すだけで完成です。どんな紙に書いてもかまいません。他の遺言の方式に比べて,ほとんど時間も費用もかかりません。
ただし,例えば作成年月日を書き忘れたりすると,遺言の法律上の効力は認められません。また,遺言書の紛失,毀損,偽造などの問題が生じる可能性もあります。さらに,自筆証書遺言は,家庭裁判所による「検認」という手続が必要です。
このように,自筆証書遺言は,手軽に作成できますが,無効になりやすいというデメリットがあります。

◆ 確実な公正証書遺言
公正証書遺言とは,遺言者の口述する遺言の趣旨を公証人が筆記し,遺言者および証人が承認して署名押印し,公証人が署名押印する方式で作成される遺言のことです。
証人の立会いや,公証人の関与が必要とされ,原本は公証役場で保管されるので,自筆証書遺言と異なり,後日,方式の不備が問題となったりするおそれは少ないといえます。また「検認」手続も不要です。
このように,公正証書遺言は方式などの不備の可能性が低く,また,破損や紛失のおそれもないことから,遺言書として確実なものを求める場合には,最適な方法と言えますし,実際,私達が作成に関与する遺言も公正証書遺言の場合が多いです。
ただし,原則として公証役場に出向かなければならない,証人2人を探さなければならないなど,手間と費用がかかります。

◆ 遺言内容を誰にも知られたくない場合には秘密証書遺言
遺言内容は秘密にしたいが,遺言書を確実に保管したい場合には秘密証書遺言という方式があります。
遺言者は,遺言書に署名・押印し,遺言書に押印した印で封印し,公証人1人および証人2人の前で,自己の遺言書であること等を申述するだけです。遺言の全文をパソコンで書いても有効です。公証人役場で保管されることから,紛失等を防ぐことができます。
ただし,秘密証書遺言は,公証人がその内容まで確認するものでないことから,方式の不備などで無効になる危険はあります。

◆ 遺言はいつでも撤回は可能
いったん遺言をしたとしても,その後,遺言者の意思が変わることもあると思います。このような場合には,遺言者は,新たな遺言((前回と同一方式である必要はありません。)で,「…旨の前の遺言は撤回する。」などと書くことにより,撤回することができます。
また,そのほかにも,以下のような場合には,前の遺言は撤回されたものとみなされます。

(1) 後に書いた遺言が,前に書いた遺言と抵触する場合(例えば,「自宅は,Aに相続させる。」と遺言した後に,「自宅はBに相続させる。」と遺言する場合),後の遺言が有効となり,前の遺言を撤回したものとみなされます。

(2) 遺言者が遺言をした後に,遺言の内容と抵触する行為をした場合,その抵触する部分については,前の遺言を撤回したものとみなされます(例えば,「自宅は,Aに相続させる。」と遺言した後に,遺言者が自宅をBに売却した場合)。

(3) 遺言者が,遺言書そのものを破棄してしまえば,撤回したものとみなされます。

このコラムを読んで,「遺言」に少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
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