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第33回 賭博罪

H22.7.5 虎頭 信宏

快進撃を続けてきたワールドカップ日本代表も遂に敗退しました。本当に残念でしたが,力尽きるまでボールを追いかけていた選手の姿はもちろん,カメルーン戦に勝利するまでの非難の嵐に耐えて結果を出した岡田監督の姿にもグッとくるものがありました。

さて,ワールドカップと並んで最近のスポーツ界の話題を独占しているのが,相撲界の野球賭博の問題です。報道では,1日1万円から3万円,多い者で1日数十万円という者も数人いるとのことです。
野球賭博が犯罪であることは,皆さんもご存じのことと思います。
すなわち,刑法第185条は,以下のように規定されています。

「賭博をした者は,50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし,一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは,この限りではない。」

「賭博」とは「偶然の事情に関して財物を賭け,勝敗を争うことをいう」とされており,今回の件については,プロ野球の結果という「偶然の事情」に関して(○○と△△のように戦力に差があったとしても「偶然の事情」と言えますが,報道によれば,よりギャンブル性を高めるために,ハンデをつけていたようです。),金銭という「財物」を賭けて勝敗を争っていることから,報道が事実であれば,賭博罪に該当することになるでしょう。
また,上記の賭博罪(単純賭博罪と呼ばれます。)にとどまる場合には,実際には起訴されないケースもありますが,仮に,今回の件で,プロ野球の年間公式試合数(144試合)の全てを賭博の対象とし,これを何年も継続していた場合には,常習賭博罪(刑法第186条第1項)に該当しうることとなり,起訴される可能性も高くなると思います。ちなみに,常習賭博罪の法定刑は3年以下の懲役であり,単純賭博罪(50万円以下の罰金又は科料)に比べて相当重い刑罰を科されます。

ところで,今回の件ではあまり問題にはなりませんが,上記のとおり,形式的には賭博罪(単純賭博罪)に該当する場合であっても,「一時の娯楽に供する物」を賭けたにすぎない場合には処罰されません(刑法第185条ただし書)。
この「一時の娯楽に供する物」とは,一般的に,食事やお菓子などその場ですぐに消費してしまうものがこれにあたるとされています。判例は,賭けた財物の価格の僅少性と費消の即時性の観点から,「一時の娯楽に供する物」かどうかを判断していますが,金銭については,その性質上,「一時の娯楽に供する物」には該当しないとするのが主流のようです(かなり古い判例で,現在の貨幣価値とは単純に比較することはできませんが,常習賭博罪について,賭金が300円でも「一時の娯楽に供する物」とは言えないとしたものがあります(最判昭和23年10月7日))。

以上のような賭博罪の構成要件や判例の考え方からすると,会社のゴルフコンペなどのイベントにおいて,高額な会費を集めて賞金や賞品を出す場合には,賭博罪に該当する可能性は否定できません。また,仮に賭博罪に該当しなかったとしても,会社のコンプライアンス上問題があることは言うまでもありません。
それぞれの会社においても,イベントを企画する際には考慮することをお勧めします。

【追記】
ホームページをリニューアルして1年が経ちました。当初に比べてアクセス数も増加しており,日常業務の合間を縫って原稿を書いている事務所メンバーの励みになっています。
既にお知らせしているとおり,当事務所の法人化に伴い,まもなく再リニューアルいたしますが,今後ともご愛読いただければ幸いです。

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