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第35回 契約書の一般的知識〜用語の使い方

H22.8.3 林 智子

今回は,契約書作成にあたっての一般的な用語の使い方について,ご紹介いたします。

契約は,日常生活の中で,頻繁に行われています。パンを買うときには売買契約,お金を借りるときには消費貸借契約,等々…。契約の際に契約書が取り交わされることもありますが,原則として契約を成立させるために,契約書を取り交わす必要はありません。「パンをください。」「はい。どうぞ。」というように,口頭で合意があれば契約は成立します。なぜ契約書を作成するのかというと,当事者が締結した契約の効力を確実にするためです。そして,契約の効力を確実にするためには,合意の内容が一定の私法上の効果を生じさせるに関して,疑問がない又は疑問が少ない契約書を作る必要があります。このような契約書を作るためには,用語の使い方にも一定のルールがあります。以下では,一例をご紹介いたします。

  • 「及び」と「並びに」の使い方
    両者は,並列的な並びを表すという意味では同じです。英語でいう「&(アンド)」です。もっとも,並列的接続が二段階になる場合は,大きい方の接続に「並びに」を使用し,小さい方の接続に「及び」を使用します。例えば,「A+(B+C)」という場合,「A並びにB及びC」と表します。
    3つ以上の語句を同じ意味の並べ方で接続する場合は,「A,B及びC」というように,はじめの方の接続を読点でつなぎ,最後の語句を「及び」で接続します。

  • 「又は」と「若しくは」の使い方
    両者は,語句を選択的に並べる場合に使用します。英語でいう「or(オア)」です。もっとも,選択的接続が二段階となる場合は,大きい方の接続に「又は」を使用し,小さい方の接続に「若しくは」を使用します。
    3つ以上の語句を選択的に並べる場合,「A,B又はC」というように,はじめの方の接続を読点でつなぎ,最後の語句だけを「又は」で接続します。

  • 「とき」と「時」の使い方
    「とき」は,仮定的条件を示す場合に使用します。
    「時」は,時点又は時間が問題となる場合にのみ使用します。
    例えば,
    「相続人は,単独相続したときは,無限に被相続人の権利義務を承継する。」(民法920条)
    「遺産の分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」(民法909条)
    などです。

  • 「直ちに」,「遅滞なく」及び「速やかに」の使い方
    「直ちに」とは,遅れは許さないという意味で,一番時間的即時性が強いものです。
    「遅滞なく」とは,時間的即時性は求められていますが,合理的理由に基づく遅滞は許されるという意味が込められています。
    「速やかに」とは,訓辞的に早くしてほしいという要請がある程度です。

これらの用語の使い分けをきちんと理解することによって,一定の私法上の効果を生じさせるのに疑問がない又は疑問が少ない契約書を作成することができますし,取引相手から提示された契約書の内容をチェックする際にも役立ちます。 なお,株式会社ぎょうせいから発行されている「契約書式実務全書」(第1巻)には,これらの契約書における用語の使い方を含めた契約書の一般的知識が書かれており,とても参考になります。

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