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第36回 楽しいゴルフのはずが? 〜被害者も6割の責任〜

H22.8.12 幸寺 覚

暑い日が続きますが,ゴルフ好きの皆さんは,この暑さの中でも熱心にゴルフをしておられることでしょう。私もその一人です。この連日35度を超える暑さの中で,集中力を欠き,思わぬショットが出て,ハッとすることはありませんか。いつも一緒にプレイする仲間にボールが当たってしまったら?
同伴プレーヤーに打球を衝突させてしまったら,誰に責任があるのでしょうか? 
ある判例では,ショットをする者の義務として,以下のようなことを言っています。

  • 同伴プレーヤーが自己の前方にいるか否かを確かめる義務を負うのは当然である。
  • 自己と同伴プレーヤーとの距離が離れていて,自己のボールが同伴プレーヤーの方向に飛んで行ったとしても,同伴プレーヤーがボールの行方を見てさえいればボールの衝突を回避できる距離にいる場合には,自己がボールを打つところを同伴プレーヤーが見ていることを確認する義務を負うにとどまる。
  • 自己と同伴プレーヤーとの距離が近く,自己のボールが同伴プレーヤーの方向に飛んで行ったならば,同伴プレーヤーがボールの行方を見ていたとしてもボールの衝突を回避できない可能性がある距離にいる場合には,同伴プレーヤーを安全な場所まで下がらせる義務を負う。
  • ボールが同伴プレーヤーに当たるまでの間に,ファーなどの大声を掛けて警告を発すれば,警告を聞いてボールの飛来に気付いた同伴プレーヤーがボールの衝突を回避できる可能性がある場合には,自己のボールが同伴プレーヤーの方に向かって飛ぶとすぐに,ファー等の大声を掛けて警告を発する義務を負う。

上記判例の事案では,ショットをした加害者は,ゴルフ歴54年,ハンディキャップ21,9番ウッドでショットすると130ヤードを飛ばすことができ,ボールが当たった被害者は,ゴルフ歴38年,ハンディキャップ16で,加害者と100回以上一緒にラウンドしており,お互いの技量は良く理解していました。被害者は,加害者のショットの地点から43.5メートルやや左前方の位置に居ました。このような状況で,加害者が9番ウッドでグリーンを狙ってショットしたところ,前に居た被害者の側頭部にあたり,脳挫傷の傷害を負ったというものです。

この事案で判例は,43.5メートルしか離れていない位置にいる被害者には,ボールの行方を目で追えたとしても,衝突を回避でない場合は十分あり得ることから,加害者は,被害者を安全な場所まで下がらせる義務があったというべきであり,その点に過失があるとしています。ただ,被害者は,加害者の技量は良く知っており,深いラフに入っていることを認識していて,ミスショットをする可能性が高くなること,ミスショットをすればわずか数秒で被害者の位置まで飛んで来て,ボールを回避できない場合があることを,十分予測できたのであり,加害者の前に立っていた被害者の過失は大きいとして,さらに,同伴プレーヤーがショットをする加害者よりも前に出てはいけないことを基本的なマナーとされており,それを加害者ひいてはプレーヤー全体の信頼をも保護すべきことを考慮すると,6割の過失相殺をするのが相当であるとして,被害者に6割の過失相殺を認めました。過失割合は,加害者4割,被害者6割という結果になっています。

この判例を見ても分かるように,ゴルフをする皆さんがマナーとして常日頃学んでおられるルールは,事故の場合の民事損害賠償を考える上で(場合により刑事責任を考える上で)非常に重要な要素となるのです。すなわち,ショットをするときは,前にプレーヤー等人がいないか確かめる,人がいるときはショットをすることを告げて注意を促し,近くて危ないときは安全な場所まで下がらせることも必要となり,ショットが危険な方向に飛んだときはすぐにファーと言って注意を促す,などの注意義務を果たすことで責任を軽減することが可能となります。一方は同伴プレーヤー等は,ショットをする人の技量なども考慮して,打球の方向等を予期して,ショットするのを注視し,決して近距離前方に出ないということです。これらを守らなければ,ボールが当たってしまった被害者と言えども,かなりの割合の責任を取らされるということです。

深刻な事故も起きていますので,上記のような注意義務を守って,事故を起こさないようにし,万が一の事故のときには注意義務違反の程度を少しでも軽減し,逆に被害者とならないように注意義務を尽くし,楽しいゴルフができるようにしたいものです。

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