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第43回 日本海法学会報告

H22.11.12 手塚 祥平

去る2010年10月9日,田中庸介弁護士とともに,札幌の北海学園大学にて開催された,第60回日本海法学会に出席し,社団法人日本海運集会所により2007年12月に制定された内航運送基本契約書(以下「本書式」といいます。具体的内容についてご関心のある方は,社団法人日本海運集会所のウェブサイトhttp://www.jseinc.org/index.htmlより,サンプルをご確認ください。)を題材とする,ディスカッションの基調報告を行いましたので,本コラムにて報告させていただきます。

当日はちょうど,北海学園大学の学園祭が開催されており,学会会場となった校舎の目の前の露店では,鮭(もちろん丸々1尾)や活きのいいイカなどが販売されており,北海道ならではの雰囲気を体感することもできました。

さて,本題です。

本書式は,「基本契約書」との文字どおり,船名・積揚港・貨物の数量・運賃率等の具体的条件を定める個別の運送に関する契約書式ではなく,荷主(荷主に近い側のオペレーターを含みます)と運送人(船主に近い側のオペレーターを含みます)との間で,個別の貨物についての運送契約が締結されることを想定した上で,その基本的な条件を包括的に定めておくことを目的とした契約書式です。

本書式が制定される以前にも,基本的な条件を包括的に定めておくために用意された契約書式もありましたが,実務上,あまりそのような用途に用いられず,各社が独自の基本契約書を作成・使用していたため,例えば二次オペレーターが複数の一次オペレーターとの間で運送契約を締結する際,契約の相手方により契約条件が異なり,責任関係等の把握が困難であるという実情があったことから,集会所に対し,書式制定の要望が寄せられ,本書式が制定されるに至りました(制定経緯の詳細等についてご関心のある方は,社団法人日本海運集会所のウェブサイトhttp://www.jseinc.org/index.htmlよりご確認ください。)。

学会においては,本書式のうち,内航運送に適用される法律である商法の規定との関係が問題となりうる,堪航能力・航海上の過失の取扱・甲板積み貨物に関する条項について基調報告を行い,研究者・実務家の方々等との意見交換を行いました。

例えば,堪航能力については,商法では第738条に規定がありますが,同条の責任の性質を無過失責任と解するか,過失責任と解するかについて学説上の対立があり,前者の見解を前提とすると,外航海運における責任(国際海上物品運送法第5条参照)に合わせて過失責任とする旨定められた本書式との関係が問題となることから,学会の場においても,上記商法の規定の性質論等について活発な意見交換がなされました。

商法のうち,海商に関する規定(商法第三編)は,明治時代の改正以来,実質的な改正がなされておらず,未だに片仮名が用いられていますし,現在の海運実務との乖離についても常々指摘がなされているところです。現実に改正作業を行うとなると,その大変さには想像を絶するものがありますが,早期に改正が実現することを願ってやみません。

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