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第47回 取得時効の要件

H22.12.24 林 智子

先日,大阪の道頓堀にある有名なたこ焼き屋「大たこ」が,40年近く営業していた屋台を自主的に撤去しました。報道によりますと,「大たこ」は,大阪市の市有地上で営業をしていたのですが,平成18年に,大阪市に対して,取得時効を理由に当該土地の所有権の移転登記を求める訴訟を提起しました。他方,大阪市は,翌19年,「大たこ」に対し,所有権に基づいて土地の明け渡しを求める反訴を提起しました。今年7月,最高裁が「大たこ」側の上告を退けたことにより,「大たこ」は,不法占拠している(取得時効は成立しない。)との高裁の判断が確定しました。私もかつてはよく「大たこ」でたこ焼きを買いましたので,少々さみしい気持ちがあります。
そこで,本日は,「大たこ」裁判をきっかけに,取得時効について,お話します。

【長期取得時効】

(1)  所有の意思をもって占有すること(所有権の取得時効の場合)
(2)  平穏かつ公然と占有すること
(3)  他人の物を占有すること
(4)  20年間占有すること

【短期取得時効】

(1)  所有の意思をもって占有すること(所有権の取得時効の場合)
(2)  平穏かつ公然と占有すること
(3)  他人の物を占有すること
(4)  10年間占有すること
(5)  占有開始時に善意無過失であること

まず,(1)「所有の意思をもって」占有するとは,自分の物とする意思をもって占有することをいいます。したがって,例えば,他人からダイヤモンドを盗んできた泥棒であっても,当該ダイヤモンドを自分の物とする意思があれば,取得時効を主張することが可能です。逆に,当該ダイヤモンドを他人から借りている人は,他の人の物を借りているだけ(自分の物ではない)ですので,原則として,この要件が充たされません。

つぎに,(2)「平穏かつ公然と」占有するとは,暴行もしくは強迫または隠匿による占有でないことをいいます。また,(3)民法は,「他人の物」を占有することと規定していますが,自分の物であっても時効取得することは可能と解されています。

そして,(4)「20年間」(長期取得時効の場合)または「10年間」(短期取得時効の場合),当該物を占有し続ける必要があります。

さらに短期取得時効の場合には,(5)当該物の占有を開始する時に,「善意無過失」であることが必要です。「善意無過失」とは,自分に所有権があるものと信じ,かつ,そのように信じることに過失がないことをいいます。例えば,Aは,Bから不動産を購入したが,その不動産は元々Bのものではなく,Cのものであったというような場合です。Bは,当該不動産の所有者ではないのですから,その所有権をAに移すことはできません。その場合に,Aが,当該不動産の所有者はBであり,そのBから譲り受けたからこの不動産の所有権は自分にあると過失なく信じ込んでいた場合には,この要件が充たされることになります。

最後に,取得時効が認められるためには,上記に加え,「時効取得をする」旨,意思表示をする必要があります(これを「援用」といいます。)。

以上により,取得時効の成立が認められると,時効取得者は,当該物の所有権を取得することができます。

なお,上記(4)の10年または20年の時効期間進行中に,本来の所有者から,「ダイヤモンドを返せ。」,「土地を立ち退け」等言われた場合には,時効の進行はストップし(これを「時効の中断」といいます。),また,一から時効期間をカウントすることがあります。

早いもので,2010年は,あと1週間で終わりです。今年も大変お世話になり,ありがとうございました。来年も皆々様のお役に立てますよう,当事務所員一同,一丸となって邁進していく所存でございますので,お引き立てのほど,何卒宜しくお願い致します。

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