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第49回 長崎ハウステンボスでカジノ?

H23.1.21 幸寺 覚
  • 長崎のハウステンボスでカジノができるの? と聞いてびっくりしておられませんか。
    これには,法的なからくりが少し隠されているのです。

  • まず,身近なところでアメリカのラスべカスや中国マカオ,私は韓国済州島のカジノへ行ったことがありますが,日本では何故カジノができないのでしょう。カジノをすれば,日本では,カジノを開いた者は,賭博場開帳等図利罪(刑法186条2項),カジノに参加した人は,賭博罪(刑法185条)で刑罰を科せられることになっています。競馬や競輪などは,特別法で許されています。

  • 又,何故,海外でカジノをしても日本の法律で罰せられないのでしょうか。たとえば,海外で良くある保険金殺人等の犯罪を日本人が犯せば日本の刑法で罰せられますよね,賭博罪は,何故罰せられないのでしょうか?

  • 日本の刑法は,自国の領域内で犯された犯罪に対しては,犯人の国籍如何を問わず,自国の刑罰法規を適用する建前(属地主義,刑法1条1項)を基本とし,さらに,自国の国民によって犯された犯罪については,その犯罪地の如何にかかわらず,自国の刑法を適用する建前(属人主義,刑法3条,4条)及び犯人の国籍及び犯罪地の如何にかかわらず,自国又は自国民の利益を保護するのに必要な限りにおいて,自国の刑法を適用する建前(保護主義,刑法2条,3条の2)も補充的に採用しています。すなわち,海外のカジノについては,属地主義の適用からははずれ,さらに殺人のように日本人の国外犯を処罰する規定を設けていませんので(刑法3条),海外では犯罪にならないことになるのです。

  • そして,佐世保市等は,政府に働きかけて,ハウステンボスで構造改革特区としてカジノ特区を設けて,合法的にカジノをやろうとしました。しかし,残念ながら,政府の答えはNOでした。そこで,考えられたのが,日本から中国上海へ船を運航し,その中でカジノをやるというものです。しかし,単純に船の中なら合法という訳ではありません。先程の属地主義で言う日本国内とは,日本国の領域内の意味であり,領土内はもちろん,領海内及び領空内も含まれます。そして,日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者にも,日本の刑法が適用されますので(刑法1条2項,旗国主義),公海上でも日本国籍の船舶内では,カジノは違法なのです。

  • そこで,考え出されたのが,船の所有会社を設立し,パナマ船籍の船を購入して,その船を長崎―中国上海で運航し,公海を航行中にカジノを営業するというものです。なかなか,うまく考えたものです。これなら,日本の刑法は適用されなさそうですね。

    昔から,カジノ構想は,日本では盛んでした。神戸でも埋立て地でカジノなんて言う話も,私が所属していた当時の神戸青年会議所で議論していたことを思い出しますし,最近では石原知事がお台場でカジノなんてことを言っています。若者のギャンブル離れから,将来性があるのか疑問ですが,この不景気の中一度やってみるのも良いかも知れません。そのためには,ハウステンボスのような苦肉の策もいいでしょうが,そもそもお堅い政府の考えを少し和らげるのが先かもしれませんね。

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