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第52回 建築基準法による私道の交通の自由

H23.2.21 芳田 栄二
  • 私道という言葉がありますが,その定義は様々です。最も狭い意義においては,その道路敷地を個人が所有し私的に利用している道路と考えられています。

    そして,私道は,私人が所有する土地に設置するものですから,原則として公法上の規制は受けず,その開設・廃止は自由ですし,道路の通行についても,私人間の権利義務の問題となり,原則として民法により規律されることとなるのです。

    私道を通行するための権利として考えられるものとしては,囲繞地通行権,通行地役権,賃貸借・使用貸借等の契約による通行権,慣習上の通行権,占有権等が考えられます。

  • ところが,建築基準法上,建築物の敷地は,幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないとされており(接道義務・建築基準法第43条第4項),建築基準法上の道路(建築基準法第42条)とされている私道については,一般交通の用に供され,権利が制限されることとなります。具体的には,私道内の建築は制限され,また私道の廃止,変更が制限される等の効果が生じるのです(建築基準法第44条,45条)。

    これに伴い,一般の第三者もその私道を通行するのに,障害が無くなります。ただし,一般の第三者が通行できるのは,あくまで建築基準法という公法上の目的(交通の確保,防災活動や災害避難に対する備えのための道路の確保等)を達成するための公法上の義務(接道義務)を課した反射的利益であって,建築基準法により,上記囲繞地通行権や通行地役権等の民法上の権利が発生したからではありません。

  • もっとも,このように反射的利益として,一般第三者についても私道の通行に障害がなくなることから,私道の敷地所有者との間で,上記1記載の権利を有していない人でも,一定の範囲で通行の自由が認められる可能性があります。通行の自由が認められるとは,具体的には,私道の敷地所有者が私道上に建物や工作物を設置したりした場合等に,妨害排除等の請求が認められるということです。

    1)  その理論的根拠および成立要件については議論がなされており,下級審の判断は,様々でしたが,最高裁平成9年12月18日は,「建築基準法42条1項5号の規定による位置指定を受け,現実に開設されている道路を通行することについて,日常生活上不可欠の利益を有する者は,右道路の通行を敷地の所有者によって妨害され,または妨害されるおそれがあるときは,敷地所有者が右通行を受忍することによって,通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り,敷地所有者に対して右妨害行為の排除および将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格的利益)を有する」との判断を下しました。

    上記最高裁の判断においては,(1)現実の道路の開設,(2)日常生活上不可欠の利益,(3)敷地所有者が通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情がないこと,という要件を満たす場合には,妨害排除・妨害予防請求が認められることを明らかにしました。

    2)  また,車両による通行について,最高裁平成12年1月28日判決は,上記(1)の平成9年の最高裁判決を前提にして,原告による,車両の通行のための道路内の金属製ポールの撤去の請求を否定しました。最高裁は,当該私道が,もっぱら徒歩または二輪車による通行に供されてきた未舗装のものであり,原告(撤去請求者)が当該私道に隣接した土地を賃貸駐車場として利用する目的で金属製ポールの撤去を求めているに過ぎないことを指摘して,自動車で通行することについて,日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえないとして,撤去請求を却下しました。

  • このように,私道だからといって,自由に通行を遮ることはできませんし,反対に,建築基準法上の道路扱いされているからといって,通行が保証されているわけではないのです。土地を取得する際に,何の負担もしていないのに,他人の土地を通って公道に出ているような土地は要注意ですね。 

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