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第70回 法曹への新しい道のり

H23.10.3 平良 夏紀

平成23年8月23日には,「司法修習生の卒業試験(通称「二回試験」)の不合格率が過去最悪」というニュースが流れ,平成23年9月8日には,「新司法試験合格率過去最低」というニュースが流れました。また,司法修習生の給料を給費制にするか貸与制にするかという議論が行われていることをご存知の方も多いでしょう。

法曹(裁判官,検察官,弁護士)になるためには,司法試験に合格し,その後,研修期間である司法修習を経て,司法修習の卒業試験である二回試験に通る必要があります。近年,司法試験制度および司法修習制度について大きな改革が行われ,現在は新制度への過渡期であるため,司法試験および二回試験の合格率や新制度の運用が注目されています。今回のコラムでは,法曹になるための新司法試験制度と新しい司法修習制度について,簡単に内容をご紹介いたします。

新司法試験制度は,平成16年に司法制度改革の一環として開始した新しい制度です。それまでは,旧司法試験制度(別名「現行司法試験制度」ともいいます。)といわれている従来の司法試験制度が60年以上にわたり行われていましたが,平成23年度をもってこの制度は終了しました。平成24年度からは新司法試験制度に一本化されるわけですが,旧司法試験と新司法試験の最大の違いは,旧司法試験は誰でも受験することが可能であったのに対し,新司法試験を受験するためには法科大学院(別名「ロースクール」)に2年間(既習者コース)または3年間(未修者コース)通う必要があるところです。なお,平成23年度からは,予備試験という試験が実施されており,予備試験に合格した者にも新司法試験の受験資格が与えられることになります。

法科大学院は,法律実務家としての基礎を学ぶ大学院として位置付けられています。したがって,法科大学院の授業では,法律の理論を学ぶことはもちろんですが,法律実務家の教員による法律相談の演習や模擬裁判などの実務的な教育も行われています。法科大学院の通常の授業は,教員と学生が法律問題について議論をする形式で進められますので,授業への予習は欠かせません。場合によっては,90分の授業のために,10時間以上予習をするということもあります。

法科大学院を卒業すると,その年の5月に行われる新司法試験から受験することができます。旧司法試験は何回でも受験することができたのに対し,新司法試験は5年間で3回しか受験することができません。したがって,新司法試験の合格率は,受験生にとっては切実な問題なのですが,冒頭でもご紹介したとおり,新司法試験制度がはじまって以来,合格率は毎年下がっているのが現状です。

新司法試験に合格したらすぐに法曹になれるわけではありません。司法修習と呼ばれる研修期間を経なければなりません。この司法修習制度も新司法試験制度に合わせて内容が改革され,期間も1年に短縮にされました。新しい司法修習制度では,毎年11月末に司法修習が開始し,翌年12月に卒業することになっています。司法修習生は,全国の都道府県にそれぞれ分散し,配属になった都道府県内の裁判所,検察庁,弁護士事務所で研修を行うことになります。司法修習では,進路に関係なく,民事裁判,刑事裁判,検察,弁護士のそれぞれの職務を経験します。民事裁判修習,刑事裁判修習では実際の裁判官から指導を受け,実際の裁判に裁判官の視点で立ち会い,裁判官の職務を学びます。検察修習では,実際の検察官から指導を受け,実際の被疑者の取調べを行い,検察官の職務を学びます。弁護士修習では,実際の弁護士について,弁護士の様々な職務を学びます。また,これらの実務修習とは別に,現在は埼玉県和光市にある司法研修所で,法律実務家として必要な知識を学びます。新しい司法修習制度では,司法修習期間の終わりの方の約2ヵ月間を和光で過ごすことになります。

1年間の司法修習を終えた後には,司法修習の卒業試験である二回試験を受験しなければなりません。二回試験は4日間にわたって行われ,民事裁判,刑事裁判,検察,弁護士の各科目の試験が1日1科目ずつ朝から夕方にかけて行われます。二回試験に通らなければ,裁判官,検察官,弁護士の法曹にはなれませんので,二回試験に合格することは司法修習生にとっては切実な問題です。二回試験は,かつては,ほとんどの司法修習生が合格する試験でしたが,冒頭でもご紹介したとおり,最近では不合格者の数が増えてニュースになっています。なお,新しい司法修習制度になってからは,二回試験も3回までしか受験することができなくなりました。

法科大学院,新司法試験制度および新しい司法修習制度については,現在も色々と議論がされており,今後見直される点もでてくるでしょう。新しい制度が施行されてから,弁護士の人口もここ数年大幅に増えましたし,弁護士の資格を得て企業に就職するインハウスロイヤーも増えています。今後,新司法試験制度や新しい司法修習制度によって,日本社会がどのように変化していくか注目が必要です。

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