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第78回 海賊問題の現状

H23.12.27 田中 庸介
  • アデン湾・ソマリヤ沖で多発する海賊についての事件は、未だ、終息の気配を見せず、他方、この問題に関する司法上の議論も進化して、これに対応する特別な条項が作成されたり、また、英国の裁判所でも数個の判例が出るなど、複雑な様相を呈しています。
  • 上記の判例の中では、海賊に拿捕された期間もオフ・ハイヤーとはならないとした判例(The “Saldanha” ([2011] 1 Lloyd’s Rep 187))が着目されます。
    これは、NYPE Form(46年版)の印刷文言の解釈として、海賊による拿捕は、オフ・ハイヤー事由に該当しないと判示したものですが、ここでは、アデン湾への航行を命じたのがそもそも傭船者であるのだから、その結果についても、船主だけでなく、傭船者も共に、公平に負担をするべきであるとの観念が働いていたものと思われます。
  • さらに、近時、アデン湾の航行を指示してきた傭船者の意向に反し、喜望峰回りを選択した船主について、多く要した航海日数についてオフ・ハイヤーを主張した傭船者の主張を否定する仲裁判断が出されました。
    もっとも、傭船者からの不服申立てを受けたロンドンの裁判所は、事実の審理が不十分であるとして、事実の判断について再度の審理を命じて、事件を仲裁に差し戻しています(Pacific Basin IHX Limited v Bulkhanding Handymax AS ([2011] EWHC 2862))。
  • しかしながら、上記の事件においては、海賊問題のために作成された特別の条項、すなわち、CONWARTIME 1993が審理の対象とされた点が着目されます。
    上記の条項では、船主は、War Riskにさらされる危険性がある場合に、そこへの航行を拒否できる文言がありますが、英文の表現として、上記の危険性が「… may be or likely to be exposed to War Risks…」との表現が取られ、この「may be」がどの程度の危険性を意味するのか、明確化されていない状況でした。
    仲裁では、本件ではこれを満たすとの判断がなされましたが、裁判所では、その点に係る事実認定が未だ不十分であると判断されました。
    上記の差戻し後の判断が、来年早々に出される模様ですから、その判断が待たれるところです。
  • 海賊に関する問題は、近時の海事における重大な問題ではありますが、航海中において生じた事件について、いかに公平な観点からそのリスク分配を 図るかという、古くから海事法の分野において行われてきた利益考量に従い、問題の解決を図るべきものと思います。

最後に、私のコラムでは、海事に関する最新の話題を提供することに努めてきたつもりです。また、これには、多くの方々より反響を頂戴し、とてもありがたく感じております。来年も、同様に、最新の情報の掲示に努める所存ですので、弊事務所宛て、お気軽にご意見ご質問を頂戴できれば幸甚です。
本年中の皆様方からのご厚誼に感謝し、かつ、新年の皆様方のご多幸をお祈りいたします。

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