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第84回 「商標調査」大丈夫ですか?

H24.3.12 張 麗霞

中国で行われているiPad商標権をめぐる訴訟に,世間の注目が集まっています。世界のアップル社でも紛争になってしまう中国への進出に高いリスクを感じる方もおられると思いますが,今回の事件は,アップル社が事前に十分な「商標調査」をしさえすれば,紛争を回避できた可能性があったと思います。では,案件の経緯を見てみましょう。

訴訟の一方当事者の「深圳シェンチェン唯冠プロビュー」は,「唯冠国際控股有限公司(Proview International Holdings Ltd)」(以下「唯冠国際」といいます)の中国広東省深圳市にある子会社です。「唯冠国際」は本部が台湾にあり,香港で上場しているIT機器メーカーです。かつては,液晶テレビの生産量が世界第3位だったグローバル企業です。そして,訴外「台湾唯冠」は,「唯冠国際」の台湾にある子会社であり,本部としての機能も果たしているそうです。

「台湾唯冠」は,2000年に,世界の複数の国と地域でiPad商標を登録しました。2009年,アップル社はiPadを発売する前に,英国に設立したIP会社を通じて「台湾唯冠」とiPadの商標権譲渡ライセンス契約を締結し,3.5万ポンドで「台湾唯冠」が有する全世界のiPad商標権を買い取りました。しかし,中国におけるiPad商標権は「台湾唯冠」ではなく,「深圳唯冠」が2001年に登録していました。アップル社は,深圳市中級人民法院に訴訟を提起し,「台湾唯冠」と「深圳唯冠」との一体性を主張し,「唯冠国際」が契約違反をしていると主張しましたが,第一審の裁判所は,「同じグループ会社に属してもそれぞれ違う法律の下で設立された会社であり,独立した法人格を持っている」として,アップルの主張を退けました。

そこで,アップル社は控訴し,第二審がつい先日,広東省広州市高等法院(高裁に相当)で開かれました。アップル社の弁護士団には,元最高人民法院(最高裁に相当)第三小法廷の裁判長であった蒋志培氏(Jiang Zhipei)が参加しました。最高人民法院の第三小法廷は知的財産法廷であって,蒋氏は,まさに,中国知的財産法界の重鎮と言える人物です。

「深圳唯冠」は,中国のiPadの商標権者である以上,有利であるように思われますが,「商標を3年間連続して不使用」であれば,商標登録が取消されるというリスクもあります(中国商標法44条4号)。また,報道によれば,第1回期日において,双方代理人が和解について明確に否定しなかったとのことであり,和解の可能性も十分にあると思います。いずれにしても,今後の訴訟の行方が注目されます。

商標には,商標使用者の多大な労力と費用が使われています。商標は,使用者が長期・継続的に使用することによって,信用が蓄積され,高いブランド価値が付加されていくものです。そのため,商標を使用しようとするときや,商標を出願する前には,十分な商標調査を行うことが重要です。

例えば,商標を使用しようとしても,すでに他人がその商標と同一・類似の商標を出願して登録を受けていたら,その他人の商標権を侵害することになってしまい,商標を使用できません。また,商標を出願しても,他人の登録商標と同一・類似と判断されると,商標の登録を受けることができません。仮に商標が登録できたとしても,先願商標と同一・類似する場合には,商標登録が取消される恐れもあります。

外国で商標登録する場合には,日本で予想しないトラブルに巻き込まれる可能性がありますので,商標調査が特に重要です。中国では,登録された商標は基本的にすべて公開されており,中国の商標局にて調べることができます。簡単な商標登録情報の調査なら,商標局のホームページで商標調査の専用ページを利用することもできます(http://sbcx.saic.gov.cn/trade/index.jsp)。当然のことですが,実際に中国で商標登録しようとする場合には,さらに詳しい調査が必要なので,現地の専門家である中国の弁護士や弁理士に相談することをお勧めします。当事務所では,知的財産案件を取り扱っている中国の法律事務所と提携しておりますので,中国での商標案件についてご相談がありましたら,ぜひ当事務所にお問い合わせください。

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