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第91回 民法の特別法としてのマンション区分所有法

H24.6.4 平良 夏紀

マンションやアパートに居住していたり,オフィスビルに職場があるという方は多いでしょう。マンションやアパートやオフィスビルには建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」といいます。)という法律の適用があります(第1条参照)。そのため,マンションやアパートに居住していたり,オフィスビルに職場があるという多くの方は,日常生活において何らかの形でこの法律に関わりを持っているということになります。

区分所有法は,一般法である民法の特別法として制定されました。つまり,特別法である区分所有法は,一般法である民法に優先して適用されますが,特別法である区分所有法に規定のない事項については一般法である民法が適用されることになります。具体的にはどういうことでしょうか。

  • 区分所有法が民法に優先的に適用される例としては,次のようなものがあります。

    (1) まず,区分所有法は,民法の特別法として制定された理由でもある一物一権主義という原則の例外を認めています。つまり,民法の物権法においては,一つの物には一つの権利(所有権)が認められるという一物一権主義という原則があり,一つの物の一部だけに一つの所有権を観念することはできないとされています。たとえば,建物の屋根はAさんのもので,壁はBさんのものとすることは,一物一権主義のもとでは許されません。ところが,区分所有法はこの一物一権主義の例外を認め,区分所有法のもとでは,一つの建物であっても,たとえば,建物の一部である101号室はAさんのもので,102号室はBさんのもので…と決めることができます。

    (2) 区分所有法では,この「Aさんのもの」や「Bさんのもの」という権利は「区分所有権」(区分所有法第2条第1項,第1条参照)といい,「Aさんのもの」である部屋や「Bさんのもの」である部屋を,「専有部分」といいます(区分所有法第2条第3項参照)。
    これに対して,一般的にマンションの玄関や廊下はAさんやBさんらの各区分所有者(区分所有法第2条第2項参照)の共有になり,この各区分所有者の共有になる部分を「共用部分」といいます(区分所有法第2条第4項参照)。
    また,区分所有法には規定がありませんが,「共用部分」であるけれども,一人または一部の区分所有者が独占的に使用できる権利を「専用使用権」といいます。典型的には,バルコニーは一般的には「共用部分」ですが,「専用使用権」が設定されているため,それぞれの部屋の区分所有者が独占的に自己の部屋のバルコニーを使用することができるようになっています。

    (3) 次に,民法においては,建物と土地は別々の不動産として扱われ,建物のみや土地のみを売買等したりすることができますが,区分所有法においては,原則として区分所有権と土地の持分権は一緒にでないと売買等したりすることができません(区分所有法第22条参照)。

    (4) また,マンション等では,一つの建物に多くの区分所有者が存在しますので,マンションの様々なルールを規定する「規約」を定めることできます(区分所有法第30参照)。マンションの管理・運営に関する各区分所有者の意思を統一するためには,少なくとも年に一度は「集会」を開かなければなりません(区分所有法第34参照)。

    (5) さらに,ある区分所有者が,他の区分所有者の「共同の利益に反する行為」(区分所有法第6条第1項参照)をしている場合には,他の区分所有者は,その行為を差し止めたり,その行為によって生じた結果を除去するように請求することができます(区分所有法第57参照)。場合によっては,「共同の利益に反する行為」をしている区分所有者の専有部分の使用を禁止したり(区分所有法第58参照),専有部分の区分所有権を競売にかけるように請求することもできます(区分所有法第59参照)。
    これらは,全て民法にはない区分所有法特有の概念です。

  • 区分所有法に規定がないために,原則どおり民法が適用される例としては,つぎのようなものが考えられます。

    (1) たとえば,Aさんの区分所有権の対象となる「専有部分」であるマンションの一室をCさんが長年占有し続けた場合には,民法の取得時効の規定(民法162条参照)が適用され,Cさんの専有部分はAさんに時効取得される可能性があります。

    (2) また,マンションに増築をした場合には,民法の不動産の附合の規定(民法242条参照)が適用され,増築部分はマンションに附合することで「専有部分」または「共用部分」の一部になります。

    (3) さらに,「専有部分」を自己の所有物として,売買したり(民法555条),抵当権等(民法第369条以下等参照)の担保物権を設定することもできます。ただし,この場合には,上記1のとおり,分離処分禁止の規制(区分所有法22条)の適用はあります。
    これらは,全て区分所有法に規定がないため,原則どおりに民法が適用される場面です。

このように,日ごろ何気なく生活しているマンションや,何気なく通っているオフィスは,区分所有法および民法による様々な角度からの規律の中に存在しています。区分所有法や民法をとおして,居住しているマンションや勤務先のオフィスをみてみると,今まで見えなかったものが見えてくるかもしれませんね。

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