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第95回 地方公務員の政治活動 〜橋下市長提案の「市職員の政治活動への罰則条例」は違法〜

H24.6.26 幸寺 覚
  • 大阪市の橋下徹市長が検討していた市職員の政治活動(政治的行為)に罰則(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金の刑事罰)を設ける条例に対し,政府は閣議で,地方公務員の政治活動を規制する条例に罰則を設けることは地方公務員法に違反し許容されないとする決定をし,総務省も同様の見解を大阪市に伝えました。橋下市長は,閣議決定を踏み越えた条例化はできない,基本的に従うと条例制定を断念する考えを表明しました。

    そもそも,公務員の政治活動は一般の民間のサラリーマン等とどのように違うのか,国家公務員と地方公務員で違いがあるのか,さらに地方の実情に応じた条例で法律と違うことを決めてはいけないのか,などを考えてみることとします。

  • まず,憲法では,表現の自由は広く保障されており(憲法21条),政治活動をする自由も当然この保障の中に含まれます。従って,民間のサラリーマン等は,政治活動をする自由を広く享受していますが,公務員の場合は違います。すなわち,行政の中立的運営が確保され,これに対する国民の信頼が維持されることは,憲法の要請にかなうものであり,公務員の政治的中立性が維持されることは,国民全体の重要な利益にほかならず,公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは,それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り,憲法の許容するところであると判例は言っています(最高裁昭和49年11月6日)。又,公務員の政治的中立性を確保することは,職員自身を政治的影響から保護し,その身分を保障することにもなるのです。そして,政治的行為の制限は,公務員の種類によって異なります。まず,国家公務員は,人事院規則で制限する政治的行為が定められ,政治的行為の違反に対しては,刑事罰の制裁があります(国家公務員法102条,110条1項19号,人事院規則14-7)。一方,一般の地方公務員は,地方公務員法で定める政治的行為の制限を受けますが(地方公務員法第36条),刑事罰の制裁はありませんし,職員所属地方公共団体の区域外で政治的行為の許される行為もあります。そのような法律の規定がある中で,橋下市長は,地方公務員にも罰則(刑事罰)規定を設けようとしたのです(教育公務員,現業職,公営企業職員も同様に条例改正提案)。

  • すなわち,橋下市長は,大阪市として,過去の選挙の経験を踏まえ,政治的行為の制限を実効あらしめようとして,法律にはない罰則規定を設けようとしたのです。

    そもそも,条例とは,地方公共団体がその自治権に基づいて制定する自主法又は自治法の形式をいうとされており,憲法では,地方公共団体は,「法律の範囲内で条例を制定することができる」(憲法94条)と定めています。そして,条例に違反した者に対し,2年以下の懲役若しくは禁錮,100万以下の罰金,拘留,科料,若しくは没収の刑又は5万以下の過料を科する旨の規定を条例に設けることができると定めています(地方自治法14条3項)。そうすると,そのような範囲の罰則なら大阪市も規定してもいいのではないかとも考えられます。

    しかし,地方公務員法で罰則を設けていないのは,同法律を制定するときに,政治活動制限に対する違反を「懲戒処分をもって足る」として罰則を設けなかった経緯があるのです。法律には,地方公務員について,国家公務員と違って,政治活動の違反には罰則まで設けて規制しないという趣旨が含まれていることとなって,大阪市が今回検討した条例を制定するとしたら,法律の趣旨に反した条例ということになり「法律の範囲内で条例を制定することができる」とした憲法の趣旨に違反してくることになるのです。従って,橋下市長が考えた条例は違法ということになりました。

  • そうすると,橋下市長がこのような条例を制定するためには,どうすればいいのでしょうか。それは,法律を改正するしかなく,橋下市長が,国政に打って出て,法律を改正するということになるのでしょうか。

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