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第98回 董事長,総経理=代表取締役?中国会社法上の代表者は,一体誰?

H24.7.23 張 麗霞
H25.10.30 改訂

中国の会社と取引関係のある方は,「董事長」や「総経理」という言葉をよく聞かれるかと思います。そして,董事長と総経理は「中国の会社の代表者であって,日本の会社でいう社長に相当する」と理解されている方が多いようですが,これは必ずしも正しくありません。

もともと,日本で一般的に言われる社長とは,代表取締役のことであって,会社の代表者という意味も含まれています。これに対して,中国会社法においては,董事長,総経理というだけでは必ずしも会社の代表者を意味しないということを,説明しておきたいと思います。(なお,以下は中国の内資企業についてのご説明です。中外合弁,外資独資の場合は仕組みが異なります)

中国においては,取締役会は「董事会」と呼ばれ,董事会設置会社には董事長を1名設置しなければなりません。董事会は,「董事」と呼ばれる取締役によって構成され,株主総会に対して責任を負う最高業務執行機関です。董事会は株主総会の決議を実行し,会社の予算・決算案や合併・分割・解散案などを立案し,内部管理機構の設置や総経理の任命などを行います。董事長としての主な責務は,董事会会議を招集・主宰する等であり,「董事会」の長としての役割です。すなわち,董事長は,董事会の議長的な存在であることを意味し,常に,代表権を有するわけではないのです。

董事長の選出方法としては,有限責任会社の場合においては定款で定め,株式会社の場合においては全董事の過半数で選出されます。このように,選任方法が日本の代表取締役と類似していることが,「董事長は代表取締役である」と誤解される理由の一つであると思われます。

一方,総経理は,会社の日常の経営管理機関の責任者で,董事会により任命・解任され,董事会の決議事項等を実施するという役職です。総経理は,董事会の決議事項を実施する点で,日本の代表取締役と類似していますが,董事長と同じく,常に代表権を有するわけではない等,代表取締役と異なる点も多くあります。

それでは,中国において,会社の代表者になれる者は誰なのでしょうか?

それは,「法定代表人」です。中国会社法の法定代表人は,日本法上の代表取締役にあたります。法定代表人は,一会社に一人しか置くことができず,定款に定められ,工商行政局(営業免許証)に登記されなければなりません。法定代表人には,董事長,執行董事または総経理のいずれかがなることができます。具体的に誰が法定代表人であるかは,営業許可証を見ればすぐに分かります。営業許可証には,会社の名称,所在地,登録資本,経営範囲,法定代表人の氏名等の事項が記載されており,変更が生じれば再度,登記をする必要があります。

つまり,会社の代表者は,董事長,執行董事または総経理のいずれかであって,そのうち,定款に定められ,営業許可証に「法定代表人」として氏名が登記されている者なのです。実務上,董事長が,会社の法定代表人となることが多いです。

なお,執行董事とは,規模が比較的小さい会社又は株主の人数が比較的少ない会社に置かれる役職であり,董事会を設置しない代わりに,一名の執行董事をおきます。

最後に,もう1つ注意していただきたいのは,「法人代表」についてです。「法人代表」と「法定代表人」とは,似ているように見えますが,全く異なる概念です。法人代表は,法定代表人から任命を受けて権利と義務を行使する者であり,独立の法律概念ではありません。法人代表は,法定代表人の委任等によって,一定範囲内で契約締結権を付与されることになります。特に,大会社の場合,法定代表人は董事長で,総経理が法人代表になるケースが多く見られます。また,法人代表の人数制限はありません。

商取引において,契約書や協定書等は極めて重要なものであり,権限のない者と契約が締結されれば,重大な損失を被ることは言うまでもありません。特に,渉外取引の場合,法制度が異なるため,契約の相手方について権限の有無を確認することは,最も重要なことといえます。無用なトラブルを避けるためにも,「董事長」と「総経理」という肩書だけにとらわれず,真の代表権がどこにあるのかを確認することに心がけましょう。

上記の内容は,事業展開や契約締結する際の一つの注意点として説明させていただきました。当事務所には協力関係にある中国の法律事務所もあり,私自身,中国の弁護士資格を有していますので,中国法に関してご疑問の点がございましたらお気軽にご相談ください。

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