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赤ちゃんポスト

H21.9.14 木下 卓男

先日の新聞報道で,熊本県の病院に設置されている赤ちゃんポスト(正式名称は「こうのとりのゆりかご」)で,昨年度1年間で25名の子どもが預けられたというニュースがありました(5月26日読売新聞)。赤ちゃんポストというのは,病院の裏口から入ることができる扉が設けられた保育器に赤ちゃんを入れると,アラームが作動して医師等が駆けつけて保護をするという制度で,内部は36度に保たれているとのことです。

法律的な問題としては,刑法上の保護責任者遺棄行為や児童虐待防止法違反を助長することになるのではないか,そもそも匿名で新生児をポストに託するのは児童福祉法違反になるのではないか等,かなりシビアな議論がありますが,それよりも倫理的・人道的な反対論が多く見受けられました。最も素朴な意見は「赤ちゃんを捨てるなんて許せない」というもので,街頭でのインタビューでも「無責任」「私には理解できない」という意見が多かったようです。昔の貧困からの子捨てや子殺しとは違って,そもそも今のような豊かな世の中でわが子を捨てる行為自体が絶対悪のように喧伝されていました。

そうは言っても,赤ちゃんポストの設置によって,多くの新生児の命が救われてきたのは疑いのないところで,病院側も,最近では制度に対する否定的な意見は聞かれなくなったとしています。ただ,賛成・反対の両意見を聞いていると,親側の心情が「育てられない→捨てる」というような紋切り型でとらえられているのではないかという気がしないではありません。

赤ちゃんポストというセイフティネットがあるだけで,いざとなったらそういう制度があるのだから,という逃げ道が,親の孤独な(ある意味で異常な)心理を変える効果も期待できるところです。2007年5月の運用開始から約2年が経ち,以前のような感情論や短絡的な建前論だけでなく,これまでの事例の分析作業などを通じて,親側の心情にも目をくばった議論について再検証すべき時期に来ているのではないかと思います。

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