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一票の価値

H22.5.24 木下 卓男

そろそろ参院選挙です。
毎度のことですが,選挙後は,議員定数の不均衡,一票の格差の問題で訴訟が起こります。だいたい2年くらいで最高裁の判決が出ます。

前回2007年の参院選での4.86倍の格差については,最高裁は合憲とし,今から18年前の1992年参院選での6.59倍は「違憲状態」との判断でした。衆院選についてみると,1972年の4.81倍が「違憲」,1980年の3.94倍が「違憲状態」で,1993年の2.82倍以降は,一応「合憲」ということになっています。

数字だけ見ると,何となく「衆院は3倍まで,参院は6倍まで」というのが判断の分かれ目になっているようですが,学説的には「2倍以上は違憲」というのが多数説で,おそらく通常人の社会通念に適合しているように思われます。

ただ,どうして「2倍」なのか,2.1倍でも1.9倍でもないのか,と言われると,ハタと答えに窮します。このあたりが行政区画・地理的状況・人口密度・住民構成・交通事情などの非人口的要素を加味してもよいとする合憲論を利しているゆえんです。

この点については,やはり普通の投票者の,ごく普通の皮膚感覚を尊重すべきではないかと思います。たとえばAさんが投票用紙を1枚持っていて,Bさんが2枚持っていたら,それは一見して不公平だという感覚になりますが,Bさんの投票用紙がAさんの投票用紙の1.9倍の価値(重み)がありますよと言われても,なかなかピンとこないということです。この,「目に見える」「見えない」という基準こそが生身の人間が固有に持つ投票権なるものの「一人一票」の原則の根幹をなすもので,最高裁(昭和60年7月17日判決など)のいう「国会において通常考慮し得る諸般の要素」によっても左右されないというか,左右されてはならない絶対的な基準ではないかと思います。

とはいえ,重くても軽くても一票は一票です。くれぐれも棄権などしないで投票率100%を目指しましょう!そうすれば最高裁も少しは考え直してくれるかもしれません。

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