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発効1年を迎えたCISG(ウィーン売買条約)

H22.8.23 西川 精一

国際物品売買契約に関する国連条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods (CISG)),ウィーン売買条約(Vienna Sales Convention)とも呼ばれますが,この条約が日本で発効したのは昨年8月1日であり,既に1年が経過しました。しかし,実務対応はあまり進んでいないのが現状です。
CISGは,国際動産取引に関する契約や損害賠償の基本的な原則を定めた条約で,米国,カナダ,中国,韓国,ドイツ,イタリア,フランス,オーストラリア,ロシアなど平成22年7月現在で76カ国が加盟しています。法令の適用順位は一般に,条約→会社法・商法→民法→政令等ですので,単に契約書上「日本法を準拠法とする」と規定しても,まずCISGが適用され,CISGが規定しない部分について日本法が適用される可能性があります(例外は,CISGに加盟していない英国法など)。

CISGの特徴として,売主側は,(1) 物品の適合性について,契約条件だけでなく,契約締結時に売主に対して明示的又は黙示的に知らされていた特定の目的に適した物であることまで含みうること,(2) 買主からのクレーム提起期間は日本法(商法526条で6ヶ月)より長い2年とされていること,買主側は,(3) 実行可能な限り短い期間内での物品検査義務が課されていること,(4) 買主の解除権より売主の追完権が優先するため,買主はなかなか解除できないこと,などに留意する必要があります。
そうすると,国際動産取引をする企業にとって,CISGは多大な影響を及ぼすようにも見えるのですが,CISGは全て任意規定ですので,当事者間で別の合意があれば,当該合意が優先します。したがって,取引基本契約書や個別の売買契約書で個々の条件を定めたり,「本契約における貿易条件は,インコタームズ2000によって解釈する」などと合意すれば,CISGではなく当該合意によって解釈することになります。ただし,CISGとインコタームズの守備範囲は以下のように異なりますので,インコタームズだけで「CISGは関係ない」とは言えません。

  CISG Incoterms
契約当事者の権利義務
危険移転時期
契約成立の要件 ×
契約違反における救済 ×
契約の有効性 × ×
所有権移転時期と効果 × ×

結局,通常の企業間取引では,以前からIncotermsなどを取り込んだ取引基本契約書や個別の売買契約書がしっかり整備されていることが多く,結果的にCISGの各条項が問題となるケースが少ないことから,旧来の契約内容を見直すとか,CISG排除条項を付け加えるなどの実務対応もあまり進んでいないのが現状です。
しかし,CISGは,国際取引条件におけるスタンダードという建前がありますので,新たに契約を締結する際などに,自社に不利な条項について,「CISGではこうなっている,CISGは国際スタンダードなのだから,これに沿った修正をすべきだ」などと主張したり,準拠法をめぐる意見対立においてCISGを持ち出すなど,自社に不利な条件となることを防ぐ材料として利用することもできます。
当事務所でも,英文契約書のドラフティングをはじめ,国際取引をめぐる案件についても積極的に取り扱っておりますので,何なりとご相談ください。

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