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事業を第三者に任せる方法と注意点

H23.4.21 西川 精一

事業を第三者に任せる方法として最も端的な方法は,事業の所有権を移転させる「事業譲渡」(会社法第467条第1項第1号等)ですが,事業の所有権を移転させない方法として,同項第4号に「事業の賃貸」とか「経営の委任」といった文言があります。今回はこの事業賃貸借や経営委任についてご説明します。

  • まず,「事業」とは,物的施設だけでなく従業員等の人的要素やノウハウも含む概念で,会社法施行以前は,「営業」と呼称されていました。そして,事業賃貸借や経営委任の区別の上で,(1)誰の名義で事業を行うか,(2)誰に損益が帰属するか,が重要な要素となりますが,「Aに損益が帰属する」ということを「Aの計算で行う」と言います。
  • さて,事業の賃貸借とは,事業の所有者がその事業を他人に賃貸する契約をいい,事業活動は,(1)賃借人名義で,(2)賃借人の計算で行われます。 事業の所有者は,事業賃借人から「賃料」という形で支払いを受けます。
  • 次に,経営委任とは,事業の所有者がその事業の経営を他人に委託する契約をいい,事業活動は,(1)事業の所有者(委任者)名義で行われます。この点が,事業の賃貸借と異なる点です。そして,経営委任は,損益の帰属主体によって,さらに「狭義の経営委任」と「経営管理」とに2種類に分かれます。

    (a) 事業活動が,(1)事業の所有者(委任者)名義で,(2)受任者の計算で行われる場合を「狭義の経営委任」といいます。対外的には事業の所有者名義のままで,対内的には受任者の裁量と計算で事業が行われる場合です。そして,事業の所有者は,受任者から「売上or収益の何%」という形で支払を受けます。

    (b) 事業活動が,(1)事業の所有者(委任者)名義で,(2)事業の所有者(委任者)の計算で行われる場合を「経営管理」といいます。対外的には事業の所有者名義のままで,対内的にも事業の所有者の裁量と計算で事業が行われる場合です。受任者は単に「事務処理」を委託し,一定の報酬を受け取るのみです。

  • 以上のように,事業の所有権を移転させずに事業を第三者に任せる方法は,(1)名義と(2)計算によって,3種類に分類することができますが,いずれについても,株式会社がこれらを行うには,株主総会の特別決議(会社法第467条第1項第4号)が必要な場合があること,また,「狭義の経営委任」の場合は,名義だけを使わせているとはいっても,名板貸人としての責任(商法第14条)を負う可能性があることに注意する必要があります。

    また,賃借店舗でおこなっている事業を第三者に委ねる場合,店舗の家主の承諾を得ずに,事業の賃貸借や狭義の経営委任によって,実質的な事業主体が変更されると,賃借店舗の「転貸」となり,店舗賃貸借契約の解除事由となり得ます。逆に,店舗の家主の承諾を得ることができない場合でも,純然たる経営管理,つまり事業の所有者(委託者)の名義において事業活動を行い,実態としても事業の所有者(委託者)に経営指揮権があると言うことができれば,賃借店舗の「転貸」とはなりません。

    このように,どのような形式をとるか,どのような実質を備えるべきかについて,微妙なケースが多いと思われますので,判断に迷われましたら,何なりと当事務所までご相談ください。

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