ホーム > コラム > 一般民事法 > 債権回収 > 人的担保−連帯保証と連帯債務の使い分け

コラム

東町トピックス

人的担保−連帯保証と連帯債務の使い分け

H23.6.14 平良 夏紀

担保とは,大きく物的担保と人的担保に分けることができます。物的担保とは,抵当権や譲渡担保など,ある特定の財産に設定する担保です。人的担保とは,保証人や連帯保証人など,本来の債務者以外の人物の総財産を目当てとする担保です。今回は,人的担保のうち,連帯保証および重畳的債務引受けによる連帯債務の違いについて簡単に解説致します。

まず,連帯保証とは,どのような契約でしょうか。単純保証とは何が違うのでしょうか。保証人と連帯保証人の違いは,連帯保証人には催告の抗弁(民法452条)および検索の抗弁(民法453条)がないところにあります。催告の抗弁とは,債権者が保証人に債務の履行を請求したときは,保証人は主債務者に催告するよう請求できるという権利です。検索の抗弁とは,債権者が債権回収を行う際に,まず債務者の財産から回収するよう請求できる権利です。連帯保証人には,これらの権利がありませんので,債権者は債務者と同時に連帯保証人にも債務の支払いを請求することができます。実務的には,人的担保として保証人ではなく,連帯保証人を徴求することが圧倒的に多いのもこのためです。

次に,重畳的債務引受けとは,どのような契約でしょうか。債務引受には,免責的債務引受と,重畳的債務引受の二種類があります。免責的債務引受は,債務者の債務を消滅させて,債務引受者が新たな債務者になるのに対して,重畳的債務引受は,従来の債務者の債務を残したまま,債務引受者がさらに債務を負う場合です。重畳的債務引受をした者は,債務者としての債務を負うことになりますので,その責任は連帯保証の場合と類似しています。

それでは,どちらの方が債権者にとっては有利でしょうか。連帯保証人と連帯債務者では,その呼び名からして,連帯債務者の方がより強力な担保のように思われるかもしれません。
確かに,連帯保証債務は,主債務が消滅すれば付従性によって消滅しますし,主債務者に生じた事由は連帯保証人にも生じますので,連帯保証債務は主債務に従属する関係であることは間違いありません。
しかし,連帯保証人には,主債務者の債務承認など,履行請求以外の時効中断効も生じますが,連帯債務者の場合には履行請求以外の時効中断効は他の債務者に影響を及ぼしません。また,連帯保証債務の時効が完成した場合や,債権者が連帯保証債務を免除した場合でも,主債務には影響はありませんが,連帯債務者の一人の債務が時効や免除で消滅した場合には,他の連帯債務者の債務もその消滅した債務者の負担部分の割合に応じて,債務が減少することになります。

連帯保証と連帯債務は,どのように使い分けるべきでしょうか。主債務に無効や取消し事由がありそうな場合には,連帯債務であれば主債務が消滅したとしても,影響は受けませんので,このような場合には連帯債務を選択するのがよいと思われます。
他方で,連帯債務は,連帯保証に比べて一人の債務者に生じた事由が他の債務者にも影響を及ぼす場合が少ないため,債権者の債権管理が煩雑になるおそれはあります。
このように,債権者にとっては,連帯保証と連帯債務はいずれも一長一短であり,決定的な差異はありません。

もっとも,債務者の側から連帯保証と連帯債務を比較した場合,前者は負担部分がないのに対し,後者は負担部分があることから,大きな違いがあることになります。また,後者は「債務者」であるので,借入金返済への心理的強制力が強く働くと考えられます。
ただし,稀に連帯保証債務を更に連帯保証する場合,もしくは連帯保証債務を重畳的債務引受する場合もありますが,このような場合には,債務者にとっても実質的に大きな差異は生じないことになります。

人的担保として,連帯保証人を徴求するか,連帯債務者とするかを迷うことがあれば,その事案特有の事情をもとに,それぞれのメリット・デメリットを洗い出して判断することになるでしょう。

このページの先頭へ