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DV保護命令の概要

H23.9.16 山下 和哉
  • はじめに
    かつては、「DV」と聞いても、その意味を理解される方はさほど多くはなかったと思いますが、今日では、「DV(ドメスティック・バイオレンス)」とは、親密な関係における一方パートナーから他方パートナーに対する暴力のことを指すと一般的に認知されてきています。
    このようにDVという言葉が認知されてきた背景には、DVが、決してテレビの中だけで起きることではなく、身近な人も現にDVの被害に遭っている又は加害者であるという現状があります。内閣府男女共同参画局から発表された平成21年「男女間における暴力に関する調査」では、結婚したことがある人のうち、これまでに “なぐったり、けったり、物を投げつけたり、突き飛ばしたりするなどの身体に対する暴行を受けた” ことが『あった』という人は、女性 24.9%、男性 13.6%であったと報告されており、DVが日常的に起こりうる出来事であることは明らかであるといえます。

  • DVへの対応
    ではDVを受けた場合には、どうすればいいのでしょうか。
    第一次的には、警察に相談する、又は、家を出て避難することが大事です。
    しかし、たとえば、夫の暴力から逃れるために家を出て実家に避難していたら、夫に居場所を突き止められたというような場合には、どのように対応すればよいでしょうか。
    DV防止法(正式には、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)は、DV被害者を加害者から守る手段として、裁判所の保護命令を定めています。
    保護命令には、次の5種類があります。

    1)  被害者への接近禁止命令(法10条1項1号)
    6ヶ月間、被害者の身近につきまとい、又はその通常所在する場所付近を徘徊してはならないことを命ずる命令です。

    2)  退去命令(法10条1項2号)
    2ヶ月間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及びその住居の付近を徘徊してはならないことを命ずる命令です。

    3)  被害者への面会要求、電話等、特定の行為を禁止する命令(法10条2項) 上記 1) 接近禁止命令の発令とともに、6ヶ月間、被害者との面会要求、被害者の行動の監視、連続したメール・電話、乱暴な言動、その他嫌がらせ等を禁止することを命ずる命令です。

    4)  被害者の未成年の子への接近禁止命令(法10条3項) 上記 1) 接近禁止命令の発令とともに、6ヶ月間、被害者と同居する子の住居、就学する学校等において、その子の身近につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊してはならないことを命ずる命令です。

    5)  被害者の親族等への接近禁止命令(法10条4項) 上記 1) 接近禁止命令の発令とともに、6ヶ月間、被害者の親族の住居等において、その親族の身近につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊してはならないことを命ずる命令です。

    このような保護命令によって、被害者はDVを受けないようにすることができます。
    また、裁判所は、保護命令の申立後、速やかに裁判をすることになっており、具体的事情により異なりますが、多くの事件は申立後2週間ほどで発令されていますので、緊急性のニーズも満たしているといえるでしょう。
    ただし、DV防止法にいう「被害者」には、配偶者からの暴力を受けている人、及び、婚姻中に配偶者からの暴力を受けており、離婚後においても元配偶者から暴力を受け続けている人に限られます。

  • 保護命令の効力
    加害者が上記 1)〜5) の保護命令に違反した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(法29条)。

  • 保護命令申立事件の現状
    このように実行性、有用性のある保護命令ですが、近時、離婚条件を自らに有利なものとすることを目的に濫用的に保護命令の申立がなされるケースが散見されます。
    すなわち、原則として、加害者とされる者も裁判官の面前で話す機会は与えられますが(もちろん被害者とされる者とは別の機会に)、被害者を一刻も早くDVから守らなければならないという緊急性が求められることから、通常の訴訟のような厳格な手続きを経ずに、保護命令を発令するか否かが決まってしまいます。この点を利用して、実際にはありもしないのに、夫から度重なる暴力を受けたと主張し、その主張を信じた裁判官が保護命令を発令してしまい、その後の離婚調停、離婚訴訟等で保護命令が出ていることを理由に多額の賠償金を請求する、という例が見受けられます。
    しかし、度重なる暴力があったことをでっち上げている場合には、被害者とされる者の証拠や供述には何らかの矛盾点が潜むことはままある話です。たとえば、被害者とされる者からは、診断書等暴力があったことを示す客観的な証拠が出されず、他方、証拠として日記が提出されているが、暴行があったとされる日の記述のみ厚く書かれ、それ以外の記述が極めて薄い場合等です。このような矛盾点を指摘することにより、保護命令が発令されることを防ぐことができます。
    また、保護命令発令の要件の一つに「配偶者からの更なる身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと」があり、これは、被害者が受けてきた暴力の回数、頻度、程度等により判断されます。暴力をふるうこと自体は決して許されることではありませんが、単発的で暴力の程度が比較的軽い場合には、上記要件を満たさず、保護命令の申立が却下されることもあります。
    このように、保護命令が申し立てられた場合であっても、常に保護命令が発令されるわけではなく、濫用的な申立、保護命令発令の要件を満たさない申立についてまで保護命令が発令されるべきではありませんので、保護命令の申立をしたい場合のみならず、保護命令の申立を受けた場合にも、直ちに、我々弁護士にご相談していただきたく思います。

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