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第181回 国際的相続に関するEU(欧州連合)規則の施行

H27.11.27 上谷 佳宏

日本に居住する外国籍の方が亡くなった場合,誰が相続人となるのか,その相続割合はどうなるのか,どのような財産や債務が相続対象となるのか,遺言の効力や遺言執行の方法はどうなるのか等が問題となります。

そして,これらの問題は,まず,これらの問題にどの国の法律を適用するかを決定し,その後,適用される法律(準拠法)に従って処理されることとなります。各国は,それぞれ独自に準拠法を決定するための法律(国際私法)を制定しており,日本は,「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号,「適用通則法」)を制定しています。

ところで,適用通則法は,「相続は,被相続人の本国法による。」(36条),「遺言の成立及び効力は,その成立の当時における遺言者の本国法による。」(37条1項)と定めており,これらの規定によれば,上記の各問題は,被相続人の本国法に従って処理されることとなります。しかし,同法は,同時に,「当事者の本国法によるべき場合において,その国の法に従えば日本法によるべきときは,日本法による。」(41条本文)と定めています(これを「反致」といいます。)。

適用通則法の規定自体は,明快でありますが,実際の相続処理においては,外国人である被相続人の本国法の内容および本国法が反致を認めているか否かの調査は,外国法の正確な理解を要求されることから,弁護士でも困難を伴うことが多いのが実情です。

ところが,先般,EU(欧州連合)加盟国(英国,アイルランド共和国,デンマーク王国は除く)の国籍保有者(以下「EU国籍保有者」といいます。)の相続について,EUは,2015年8月17日に,画期的な規則「(REGULATION(EU)No 650/2012 OF THE EUROPEAN AND OF THE COUNCIL of 4 July 2012 on jurisdiction, applicable law, recognition and enforcement of decisions and acceptance and enforcement of authentic instruments in matters of succession and on the creation of a European Certificate of Succession)」(以下「EU相続規則」といいます。)を施行しました。

EU相続規則によれば,相続に関する準拠法は,原則として,「被相続人が,その死亡時にその常居所(habitual residence)を有していた国の法」と定められ(21条1項),しかも,この常居所を有していた国の法は,EU加盟国の法でなくてもよいと定められています(20条)。この結果,日本に最後の常居所を有していたEU国籍保有者の相続については,原則として,日本法が準拠法となることになりました。なお,EU相続規則は,例外的に,被相続人が死亡時に常居所を有していた国よりも明らかに密接な関係がある国を有していた場合には,その国の法が準拠法となるとも定めています(21条2項)が,通常,永年日本に居住してきた方について,この例外規定が適用されることは少ないと思われます。

ところで,EU相続規則は,他方で,被相続人は,自らの相続の準拠法として,その選択時の本国法または死亡時の本国法を選択することも認めています(22条1項)。そして,その選択は,一般的には,遺言によって明示的になされることを要求しています(22条2項)。従って,日本に居住するEU国籍保有者のように被相続人が本国以外に常居所を有している場合に,本国法を準拠法としたいときには,遺言で本国法を選択する必要があることとなります。

ところで,遺言については,ハーグ国際会議の「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」(1961年10月5日発効)があり,EU加盟の主要国や日本も加盟していますが,EU相続規則は,遺言の方式が作成された国の法に適合している場合には,その遺言の方式は有効である旨を定めています(27条1項)。その結果,日本に居住するEU国籍保有者は,日本民法に従った遺言をしておけば,遺言の形式的有効性が認められるということになります。

以上をまとめると,日本に居住するEU国籍保有者が遺言をせずに死亡した場合には,原則として,日本法に従って,その相続問題は処理されることとなります。また,日本に居住するEU国籍保有者が遺言をする場合には,日本民法に従って遺言をしておけば,その遺言の形式的有効性は認められ,遺言で適用法として本国法を選択していなければ,その相続には,日本法が適用されることとなります。すなわち,日本に終の棲家を持つ(持っていた)EU国籍保有者の方の相続と遺言は,原則的には,日本人と同じように,日本民法に従って処理すればよいということとなります。

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