ホーム > コラム > 一般民事法 > 交通事故 > 第203回 交通事故に遭った場合にすべき4つのこと

コラム

コラム

第203回 交通事故に遭った場合にすべき4つのこと

H29.4.20 佐々木 達耶

警察庁交通局のデータによれば,平成28年に発生した交通事故件数は49万9201件にもなるそうです。このように,毎年多くの交通事故が発生しており,自分がどれだけ気をつけて運転していても交通事故に遭う可能性はあります。もし,交通事故に遭ってしまったら,どのような対応をとれば良いでしょうか?交通事故に遭ったときにどのように対処すべきかについてお話いたします。

  • 交通事故案件において問題となる点

    交通事故案件の多くは,双方の保険会社同士又は保険会社と事故当事者との間で話し合いをし,示談をして解決しています。もっとも,損害額や過失割合についての双方の主張に大きな差異がある場合には,保険会社同士又は保険会社と事故当事者との間で示談をして解決することが難しく,弁護士費用特約を利用して弁護士に相談又は依頼をするということが多くなっています。

    過失割合について双方の主張に大きな差異がある場合というのは,双方の事故状況についての認識が大きく異なっているのが原因です。事故状況については,車両の損傷状況からどのような事故であったかを判断することが可能な場合もありますが,損傷状況から判断できない場合(特にセンターラインオーバーの事案)もあります。このような場合,裁判においてどちらの主張が正しいのかということが判断されることとなりますが,裁判官がどちらかが嘘をついている(又は間違った認識をしている)ということを見極めることは困難であり,事故状況についての主張を裏付ける客観的な証拠が重要となります。また,客観的な証拠がある場合には,裁判をしても負ける可能性が高いということで,相手方がこちらの提案に応じ,早期解決を図ることも可能になります。

  • 過失割合はどうやって決まるのか

    交通事故の過失割合は事故状況から判断されます。そして,交差点内における出会い頭の事故といった類型的な事故状況については,『別冊判例タイムズ』という本に事故類型ごとに過失割合がまとめられています。裁判においても,この過失割合を基準として,事故状況に応じて修正が加えられたうえで,過失割合が定められます。

    このように,過失割合を決めるにあたって事故状況というのは重要なものであり,交通事故に遭った直後に事故状況をできるだけ記録できるかがポイントになってきます。

  • 交通事故に遭った場合にすべきこと

    (1)  警察に必ず通報する

    軽い物損事故の場合,警察を呼ぶと時間がかかってしまう等の事情から,警察に通報せず,当事者同士で話し合って解決しようとする方もいるようですが,必ず警察に事故についての通報をするようにしてください。その場で話し合ってとりあえず解決したつもりになっていても,後から,多額の修理代を請求されたり,実は怪我をしていたとして治療費等を請求されたりして,後々揉めるということはよくあります。また,自分自身も,事故直後は身体に痛みを感じていなくても,数時間後に首等に痛みが出てくるということもありますので,事故直後に当事者同士で話し合って安易に解決をするということは絶対にしないでください。なお,警察への通報については,道路交通法において義務づけられており,これを怠った場合には3カ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられることになっています(道路交通法第19条)。

    また,事故による修理費等を保険会社に請求する場合には,保険会社から「交通事故証明書」の提出を求められます。同書面は,警察が作成するものであり,交通事故の通報をしていない場合には,もちろん作成されません。

    このように,交通事故について通報していない場合には,様々な弊害も生じてくることからしても,交通事故に遭った場合には,自分が加害者か被害者かに関わらず,必ず警察に通報するようにしてください。

    (2)  事故状況の写真を撮る

    交通事故状況の写真は,どのような事故状況であったかを客観的に示すことができるものであり,証拠としてとても有用なものです。特に,センターラインオーバーの事案については,どちらがセンターラインをオーバーしていたかということを車両の損傷状況から判断することは困難であり,事故直後の写真はとても重要となります。

    もっとも,事故直後は気が動転していますし,すぐに車を移動させないと他の車の通行を阻害してしまうことにもなるため,なかなか事故状況の写真を撮ることは難しいかもしれません。

    事故状況の写真があれば,客観的に事故状況を明らかになり,相手方と揉める可能性も低くなりますので,交通量が少なく,すぐに移動しなくても交通を阻害しないような場合には,可能な限りスマートフォン等で事故状況についての写真を撮影しておきましょう。

    また,車を動かした後でも,事故直後の自車の損傷状況や相手方の車の損傷状況をしっかり撮っておきましょう。通常,写真は,任意保険会社で撮ってくれるものですが,写真は多い方が良いですし,事故後に新たな傷が発生する可能性もゼロではありません。

    さらに,路面の状況も写真に収めることも忘れないようにしましょう。タイヤ痕やガウジ痕(タイヤ以外の車体が路面と接触した痕)は,意外とすぐに消えてしまいますから,写真を残しておくことは大事です。また,後日,写真に撮っても別の車両がつけたものだと言われる恐れがあります。その他,路面に落ちている部品等の状況から接触位置を推認できる可能性がありますし,当時の路面の状況,現場の明るさ等,後から重要になってくる可能性があります。事故当時の状況は,その時にしか写真に残せませんので,必ず写真は撮るようにしましょう(勿論,お怪我で動けない場合には,この限りではありません)。

    (3)  怪我をした場合には,軽傷でも必ず人身事故の届出をする

    交通事故を起こした場合,警察官から物損事故として届け出るか,人身事故として届け出るかということを確認されます。この際,少しでも身体に痛みを感じているようであれば,人身事故として届け出るべきです。

    なぜなら,物損事故か人身事故かによって,警察官が作成する書類に大きな違いが出てくるからです。物損事故の場合には「物件事故報告書」といった事故状況を簡単に記載した書面が作成されますが,人身事故の場合には,警察官が実況見分を実施したうえで,「実況見分調書」という書面が作成されます。物件事故報告書は,事故状況を聞き取った警察官が手書きで事故状況を記載するといった程度のものであり,事故状況を立証するための資料として効果的なものではありません。他方で,実況見分調書の場合には,警察官が事故現場の道路の測量等を行ったうえで,道路状況や当事者から聞き取った事故状況が詳細に記載されています。

    なお,警察官によっては,明らかに軽症の場合などには物損事故で処理したがるということもあるようですが,どのような事故でも後々揉める可能性があることを考えれば,事故状況についてきちんと記録化しておくことが重要ですので,たとえ軽症であっても,怪我をした場合には,人身事故として処理してもらうように警察官にはっきり伝えることが必要です。また,後々,物損事故から人身事故に切り替えることもできますが,事故から時間が経っている分,例えば事故現場のタイヤのスリップ痕といったような証拠も無くなってしまっていることもありますので,最初から人身事故として届け出て,しっかりとした捜査をしてもらうことが重要です。

    (4)  相手の車にドライブレコーダーがあるかを確認する

    自車にドライブレコーダーを取り付けている場合には,ドライブレコーダーによって録画された映像が事故状況を示す客観的な証拠となります。もっとも,自車にドライブレコーダーを取り付けていなくても,相手車にドライブレコーダーがある場合には,その映像を証拠として提出するよう求めることになります。裁判において,こちらがドライブレコーダーの映像を提出するよう求めているにもかかわらず,あえてその映像を提出しない場合には,裁判官に相手方の事故状況に関する主張が正しくないのではないかとの心証を抱かせることができます。

    このように,相手車にドライブレコーダーが取り付けられている場合には,その映像が事故状況を示す客観的な証拠となることはもちろんのこと,相手がその映像をあえて提出しないことをもって,相手の主張が疑わしいとの心証を裁判官に抱かせることもできることから,相手車にドライブレコーダーが取り付けられているかについては確認しておきましょう。出来れば,相手方の車両の損傷状況を撮るついでに,ドライブレコーダーの有無も確認し,ドライブレコーダーがわかるような写真を撮ると良いでしょう。

  • 警察官の役割

    よくご相談に来られた方が「警察官の方が話を事故直後に相手方の話を聞いているはず」,「警察官の方が事故直後の状況を見ているはず」,「警察官の方が写真を撮ってくれているのでは?」とおっしゃることがありますが,民事訴訟手続に警察官が出てきて証言をしてくれることは,まずありません。また刑事事件の捜査となるような重大事故でない限り,警察官が作成する書面で取得可能なものは物件事故報告書又は実況見分調書しかありません。警察官は,あくまで双方の主張を聞いて,それをもとに書面を作成するだけであり,捜査をするわけではないのです。ですから,事故が起こった状況等については,きちんと自分で証拠を残していくことが肝要になるのです。

    また,警察官が作る書面(特に実況見分調書)は,裁判の基礎資料となるものですから,誤記があれば,その誤記を前提に訴訟が進められる可能性が高くなります。警察官への説明については,正確を期すようにし,曖昧な表現や誤解を招くような表現は避けるようにし,最後に自分の認識と警察官の認識に齟齬がないことを確認した方が良いでしょう。

  • おわりに

    交通事故に遭った場合には,誰しも気が動転してしまうものですが,落ち着いて上記の対応をとっておけば,自分の主張を裏付ける客観的な証拠が残ることとなります。

    まずは,交通事故を起こさないよう注意して運転することが重要ですが,もし事故に遭ってしまった場合には上記の点を心掛けた初期対応をとることが重要であると考えます。

このページの先頭へ