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第25回 症状固定?

H22.4.5 福元 隆久
  • 皆さんは「症状固定」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?「症状固定」は交通事故の人身事故の場合に良く使われる言葉です。字面を見ると「症状」が「固定」するということですが,日本語として意味をなさず,何のことやらさっぱり分かりませんね。私自身も弁護士となってとまどった法律用語の一つです。

  • 「症状固定」とは,医学上一般に承認された治療をしても改善しない状態になったことを言うとされています。

    例えば,Aさんがバイクに乗っていて交通事故に遭い,足を骨折したとします。Aさんは骨折という怪我を負ったので,病院で治療を受け骨が元通りに接合しました。このような状態になれば治療が完了したというのは分かり易いですよね。では,Aさんが先の事故で腰を打撲したので,打撲の治療のため通院することになりました。この場合,腰の痛みが治まらなければ治療は完了しないのでしょうか。Aさんとしては,事故が原因で腰が痛くなってその痛みを和らげるために治療を受けている,実際,病院に行けば鎮痛剤を処方されるなどして痛みが和らいでいるのだから治療の実があがっているのではないかということになります。他方で,事故の加害者側としては,治療がいつまでも継続し治療費を支払い続けなければならないというのはおかしいではないかということになります。

    このような場合に,症状固定という概念を用い,被害者の傷病が症状固定するまでの治療費を支払い,症状固定以後の治療費の支払をしないというのが,保険実務,裁判実務の取扱です。治療行為という概念を,交通事故等で負った怪我を治す,交通事故等がなかった状態に戻すという意味として捉え,もうこれ以上治らない,元に戻らないという状態を症状固定と考えるわけです。

  • そして,症状固定という概念は,症状固定以前の治療費が損害賠償請求できるが,症状固定以後の治療費は損害賠償請求できない(但し,例外もあります)というように治療費を損害として認定する基準となる他にも機能が認められています。交通事故等により負った傷害がこれ以上治らないという状態が症状固定ですから,症状固定時に残った障害が後遺障害ということになり,このように後遺障害の基準時となる機能を有しています。また,症状固定は治療費を損害として認定する基準,後遺障害の基準時となる結果,症状固定時に被害者の損害額が確定することになりますので,不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点(消滅時効の期間の開始時)ともなります。

    このように,症状固定は法的には重要な意義を有していますので,症状固定しているかどうかについては,治療を受けている医師や相談している弁護士がいれば弁護士と良く相談して決める必要があります。

    もっとも,症状固定という言葉は,医学用語ではなく,法律用語であり,医師は症状固定と言われても上記のような機能を有していることまで十分に把握していない場合があることにも注意が必要です。

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