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第41回 アイドルと有価証券

H22.10.25 松宮 慎

手形,小切手,電車の定期券等の有価証券の記載を改ざんする行為が犯罪になることは誰でも知っていることでしょう。有価証券は,経済社会において,通貨と同様,極めて重要な役割を果たしていることから,これらを偽造する行為は,有価証券に対する社会的信用を失わせるものとして,刑法により,処罰の対象とされています。

刑法162条によれば,有価証券偽造罪とは,行使の目的で,公債証書,官庁の証券,会社の株券その他の有価証券を偽造し,又は変造することをいい,これらの罪を犯した者は,3月以上10年以下の懲役に処せられます。

では,有価証券偽造罪にいう有価証券にはどのようなものが含まれるのでしょうか。いかなる証券が「その他の有価証券」に含まれるのかは解釈に委ねられています。

判例は「財産上の権利が証券に表示され,その表示された権利の行使につきその証券の占有を必要とするものでなければならないが,その証券が取引上流通性を有すると否とは刑法上は必ずしもこれを問わない」(最判昭和32年7月215日刑集11巻7号2037頁)としており,刑法上の有価証券については,必ずしも流通性が要件とはされていません。この点で,流通性が重視される商法上の有価証券よりも,刑法上の有価証券の概念は広いといえます。

ところで,近時,アイドルグループAKB48のメンバーと握手できる券を偽造することが有価証券偽造・同交付罪にあたるかどうかが争われた事件がありました。新聞報道等によれば,弁護人は,この裁判において,握手券は,AKB48と握手することだけを目的としたものであるから,財産的価値はないと主張したようです。しかし,裁判所は,弁護人の主張を退け,握手券がインターネット上のオークションで売買されていること等からすれば,握手券には財産的価値があるとしました。

握手権がインターネット上で売買されていたということには驚かされますが, インターネットでオークションに出されるようなものであれば,流通性があり,財産的価値を有するものであることは明らかであるといえるでしょう。

今や国民的アイドルとなったAKB48。そういえば,数年前にもCDの販売方法が独占禁止法上の不公正な取引方法にあたるのではないかと物議を呼んだことがありました。様々な話題を提供し,ファンだけでなく法律家をも楽しませてくれるAKB48からまだまだ目が離せません。

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