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第50回 自炊してますか?

H23.2.1 福元 隆久
  • 皆さんは自炊してますか?「いや〜。コンビニ弁当や外食ばっかりで・・」などの答えを頭に思い浮かべた人は古い世代の人ですね。今どき流行りの「自炊」とは,書籍や雑誌を自ら裁断してこれをスキャナなどで読み込んでデジタルデータに変換することを言うようです。自らデータを吸い込む様をとらえて「自炊」と呼ばれるようになったそうです。

    昨年以降各社から電子ブックリーダーが発売されています。マスコミ等では,これまで紙媒体であった出版物がデジタル化され電子書籍が本格的に普及するのではないかと言われ,「電子書籍元年」ということまで言われるようになりました。しかしながら,パソコンや電子ブックリーダーで読むことができる電子書籍の流通量は,まだまだ少ないのが現実です。私自身も某社の電子ブックリーダーを買ってみようかなと思い,まずどのような本が読めるのかと電子書籍ストアをのぞいてみたのですが,読みたい本がほとんどなく,購入に二の足を踏んでいる状態です。

    そこで,買いたい電子書籍がないなら自分で作ってしまえということで前述の「自炊」が行われるようになっているのです。

  • さて,ご承知のとおり,書籍等については作者や出版者に著作権が認められています。それではこの「自炊」は著作権を侵害しないのでしょうか。著作権者は,著作物の複製権を独占的に有していますので,書籍等を著作権者に無断でデジタルデータに変換することがこの複製権を侵害するのではないかということが問題になります。

    この点,著作権法30条1項は「著作権の目的となっている著作物(中略)は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という)を目的とするときは,次に掲げる場合を除き,その使用する者が複製することができる。(以下,略)」と規定し,私的使用のための複製については著作権侵害行為とはならない旨規定しています。「複製」とは「印刷,写真,複写,録音その他の方法により有形的に再製すること」(著作権法2条1項15号)と定義されており,書籍等をデジタルデータに変換することも複製に該当することになりますので,「自炊」が著作権法第30条1項の私的使用のための複製と言えるかが問題となります。

    なお,書籍等を裁断する行為は,書籍等に何か特別な思いを有する者からすると(例えば,私は本を足で踏むなどということはできません),ぎょっとする行為であることは違いないのですが,著作権の侵害の問題は生じません。

  • まず,純粋に自分自身が電子ブックリーダーで本を読むために「自炊」することは,個人的に使用することを目的として複製する行為と言えますので,私的使用のための複製の範囲内であると言えます。また,電子データを家族や数人の親しいグループ内で共有することも「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」にあたりますので,私的使用のための複製の範囲内であると言えます。

  • また,著作権法30条1項の「その使用する者が複製する」との要件は,厳格に解釈されるべきであるとして使用者自らが単独で複製する場合を言うものと解されています。そうだとすると,他人に書籍等を電子データの変換を委託する行為は,例えその書籍等が正当に所有権を有する場合であっても,許されないことになります。もっとも,これについての,司法判断は未だなされていません。現在,自炊代行サービスもなされているようですので,将来的にどのような判断がなされるのか注目です。

  • 電子ブックリーダーの普及に伴って,自炊を巡る問題は,いろいろな広がりを見せるのではないかと思います。違法か適法かが微妙な問題も多く今後の動向に注意が必要だろうと思います。

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