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第69回 優越的地位の濫用−課徴金納付命令−

H23.9.21 木下 雅之

公正取引委員会(以下「公取委」といいます。)は,平成23年6月22日,中国地方・近畿地方を中心に総合スーパーを展開する株式会社山陽マルナカ(以下「山陽マルナカ」といいます。)に対し,独占禁止法違反(優越的地位の濫用)で排除措置および課徴金(2億2,216万円)の納付を命じました。
平成21年の独占禁止法改正によって,優越的地位濫用の違反行為に対して課徴金が課せられるようになりましたが,本件は,法改正後初めて,優越的地位の濫用について課徴金納付命令が行われた事案です。

公取委によって認定された本件における山陽マルナカの違反行為は,次のとおりです。

  • 従業員等の不当使用
    山陽マルナカは,新規開店等の際の商品の陳列,補充,接客等を行わせるため,派遣条件の合意や費用の負担等をすることなく,商品の納入業者に対し,従業員を派遣するよう要請していた。

  • 協賛金等の支払強要
    山陽マルナカは,自社の主催するテニス大会等の催事等の実施に要する費用を確保するため,納入業者にとっては販売促進効果等の利益がないにもかかわらず,納入業者に対し,金銭を提供するよう要請していた。

  • 不当な返品
    山陽マルナカは,食品商品のうち,自社が独自に定めた「見切り基準」と称する販売期限を経過したものについて,納入業者に対し,不当に返品していた。

  • 不当な減額
    山陽マルナカは,在庫整理等を理由に割引販売を行うこととした商品について,割引販売による自社の損失を補填するため,割引額に相当する額を,納入業者に対して支払うべき代金額から不当に減額していた。

  • 購入強制
    山陽マルナカは,クリスマス関連商品の販売に際し,納入業者に対し,最低購入数量を示したうえで,購入を強制するなどしていた。

上記のとおり,平成21年法改正によって優越的地位の濫用にかかる違反行為が新たに課徴金の対象とされたことに伴い,公取委は,平成22年11月30日,優越的地位の濫用規制の考え方を明確化することによって法運用の透明性を一層確保し,事業者の事業活動に過度な萎縮効果を与えないよう,事業者の予見可能性をより向上させることを目的として,「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「優越的地位濫用ガイドライン」といいます。http://www.jftc.go.jp/dk/yuuetsutekichii.pdf)を公表しています。
本件において公取委の認定した山陽マルナカの上記各行為は,独占禁止法上問題のある行為類型として,優越的地位濫用ガイドライン上も列挙されている行為にそれぞれ該当します。

公取委は,優越的地位の濫用の違反行為について,必ず課徴金を課さなければならず,課徴金を課すか否かについての裁量は認められていません(独占禁止法20条の6)。
課徴金の額は,「違反行為をした日から違反行為がなくなる日までの期間(最長3年間)における,当該違反行為の相手方との間における売上額または購入額(当該違反行為の相手方が複数ある場合は当該違反行為のそれぞれの相手方との間における売上額または購入額の合計額)に1%を乗じて計算する」ものとされています。

本件では,遅くとも平成19年1月以降から,公取委の立入検査が入る平成22年5月18日までの間,違反行為が継続していたと認定されましたが,課徴金の対象となるのは最長3年間の取引に限定されることから,課徴金算定の基礎となる違反行為期間は平成19年5月19日から平成22年5月18日までの3年間とされたうえ,平成21年改正法の施行日が平成22年1月1日であったことから,違反行為期間のうち改正法の施行日である平成22年1月1日以後における山陽マルナカの納入業者(165社)との間の取引(約5か月間)における購入額合計の1%に相当する額が課徴金として課されました。

したがって,仮に改正法の施行日との関係が問題とならなければ,3年間の違反行為期間における納入業者との取引における購入額の合計額に対する1%が課徴金として課されることとなるため,違反事業者に与える影響は,さらに大きくなるものと考えられます。

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