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第75回 国際裁判管轄

H23.11.10 松宮 慎

先日,近時の韓流ブームや円高ウォン安等の影響等で,韓国への旅行者数が過去最高になる見込みとのニュースがありました。東方神起やKARAなどのK-POPもすっかり定着した感がありますし,若者を中心に以前よりも韓国が身近になったということなのだと思います。私のまわりにも週末に韓国で買い物を楽しむという人が増えてきました。もっとも,以前より身近になったとはいえ,韓国はやはり外国ですから,旅行中のトラブルには十分気を付ける必要があります。

では,万一韓国での旅行中にトラブルや事故に巻き込まれてしまい,その事件の解決のために法的措置を取らざるを得なくなった場合,韓国で起こった事件について日本で訴訟を提起することはできるのでしょうか。これがタイトルにもある国際裁判管轄の問題です。ざっくり言えば,当事者の一方が外国に居住している場合等の国際的な民事紛争についてどの国で裁判を提起できるのかという問題です。

これまでわが国の民事訴訟法には国際裁判管轄に関する明文規定はなく,国際裁判管轄に関するルールはもっぱら最高裁の判例法理に委ねられていましたが(最判昭和56年10月16日〔マレーシア航空事件〕,最判平成9年11月11日〔ファミリー事件〕),近年の経済のグローバル化に伴い,わが国でも国際裁判管轄に関する法整備を行う必要性が高まってきていました。そのような中,本年4月28日,国際的な民事紛争について日本の裁判所が管轄権を有する場合等について定めた「民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律」(平成23年法律第36号)が,国会で可決成立し,5月2日公布されたことにより,国際裁判管轄に関するルールが法律により明文化されることとなりました(なお,施行日は,公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。)。

上記の判例は,わが国の裁判所が管轄権を有するか否かは,原則として国内の民事訴訟法の土地管轄の規定に従うとしつつ,「特段の事情」がある場合には,管轄権を認めないという一般的準則を示したものにすぎませんでしたが,今回の改正では,具体的な訴訟類型に応じた国際裁判管轄のルールを規定していますので,当事者にとっては,どのような場合に日本で訴訟を提起されるのかについての予測可能性が高まったといえます。

また,消費者契約および労働関係に関する訴えについては,国際的な紛争において消費者や労働者が外国で訴訟提起をすることが困難であることを考慮して,日本の裁判所へのアクセスが容易となるよう,特則が設けられています。

なお,今回の改正は,財産権上の訴え及び保全命令事件の国際裁判管轄について定めたものであり,人事訴訟,非訟事件,家事審判事件等は含まれません。

改正内容について詳しくお知りになりたい方は,法務省のホームページをご確認ください。

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