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債権者による破産申立

H23.8.29 小野 法隆
  • 債権者による破産申立も可能
    一般に,破産(民事再生や会社更生も同様ですが,破産を前提に話しをすすめてまいります。)の申立と聞くと,債務者,すなわち,借入金を借り入れている本人が,弁護士等の代理により,裁判所に申し立てることを想定されるのではないかと思いますが,ご承知の方も多いかもしれませんが,破産法上,破産手続開始の申立は,債権者でも可能であるとされております(※破産法第18条第2項は「債権者又は債務者は,破産手続開始の申立てをすることができる。」としており,債権者が申し立てることが出来る旨,明確に規定されております。)。
    しかし,いわゆる債権者申立による破産があまり一般的でないのは,(1)そもそも,破産手続開始の申立をしても,結局,「回収」という観点から見れば,申立をした債権者も,破産手続における配当にあずかれるだけであり,申立をした債権者に一定の回収上の優遇措置があるわけではないこと,(2)税務上の無税償却をするのであれば,いわゆるサービサーへの売却によれば実現できることが大半であり,わざわざ破産の申立といった「重たい」手続をとる必要性に乏しいこと,(3)弁護士報酬や予納金といった金銭的負担が大きいこと等があげられます。
    とはいえ,実際には,債務者が不誠実な対応に終始する事案であったり,いわゆる財産隠匿の可能性がある事案の場合には,債権者による破産手続開始の申立がなされる事案がないわけではありません。

  • 申立時の特殊性
    通常,債務者自身が破産手続開始の申立をする場合,申立を代理する弁護士としては,債務者自身から,自身の債務や自身の財産について,事情聴取,資料提出等により,その詳細を容易に知ることができますので,申立書の作成等で,困難な事情が生じるケースはほとんどないといえます。
    しかし,債権者により申立をする場合,当然ですが,債務者自身からの資料提供や事情聴取ができないため,種々の困難が生じることとなります(なお,破産法上も,債権者による濫用的な破産申立を牽制する趣旨で,「債権者が破産手続開始の申立てをするときは,その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。」《破産法第18条第2項》とされており,通常の債務者申立よりも,ハードルが高くなっております。)。
    上記の「破産手続開始の原因となる事実」については,支払不能や(法人の場合)債務超過の事実とされていますが,これらの事実を疎明するためには,債務者の協力が得られないなかで,債務者の「資産」と「負債」を疎明する必要があります。
    まず,負債についてですが,当然,申立をしようとする以上,自身の債権が存在することの疎明は,比較的容易であるといえます(債権者申立を検討するような事案では,通常,債務名義(確定判決等)を有している場合がありますので,その判決等を提出すれば,自身の債務の疎明は容易です。)。しかし,金融機関であればともかく,通常の事業会社の方であれば,債務者が法人である場合を例にとれば,その決算書等を入手していることはそれほど多くないと思われますので,申立債権者以外の債権の存在を疎明することは容易ではありません。この場合には,債務者所有の不動産の登記事項証明書を入手し,設定されている(根)抵当権の内容から,債務者の負担する負債を疎明するという方法等が考えられるところです。
    つぎに資産についてですが,資産の疎明については,負債以上に困難であると考えられます。一つの方法としては,財産開示手続,すなわち,確定判決、和解調書、調停調書があるのに相手方が支払いに応じない場合、裁判所に申し立てて相手方の財産を開示させる手続を利用する方法が考えられるところです。かかる財産開示手続については,その実効性を疑問視する意見もあり,あまり利用がすすんでおりませんが,仮に債務者が自己の財産を正確に開示し,資産が(ほとんど)ないとの開示内容であった場合には,申立債権者が有する債権を疎明するだけで,破産手続開始の原因となる事実を疎明できる場合があります。
    なお,申立時の特殊性としてさらにあげられるのは,予納金の額です。通常の債務者による破産申立にくらべ,約1.5倍程度の金額が必要になる運用がなされているようです。

  • 申立後の特殊性
    通常の債務者申立の破産の場合は,書面審理で破産手続開始決定が発令されるのですが,債権者申立の場合には,通常,裁判所は,申立債権者と債務者への審尋(破産法第13条,民事訴訟法第87条第2項)がなされる運用となっております。当然,債務者の意に反してなされている申立ですので,裁判所としても,その判断を慎重にする必要があり,このような運用がなされているようです。
    債務者としては,かかる審尋の際に,自己に破産手続開始の原因となる事実が存在しない旨の反論を行ったり,分割払いの提案をしたりして,徹底的に抵抗することが多く,通常の債務者申立の破産と比較すれば,申立後開始決定が発令されるまで,時間がかかることが多いですし,仮に,一旦破産手続開始決定が発令されても,債務者が即時抗告を行うことも多く(破産法第9条),かかる即時抗告への対応という点からも,時間がかかる事案が多いといえます。

  • 開始決定後の特殊性
    開始決定により破産者となった債務者としては,債権者により強引に破産させられたという思いが強く,通常の債務者申立の事案と異なり,破産管財人への協力姿勢に乏しいため,破産管財人の呼出に応じない,資料提供を積極的に行わない等,就任した破産管財人も,かかる破産者の取扱いに苦慮することが多く,終結までに時間がかかる事案が多いといえます。

  • 結語
    以上のとおり,あまり実務的には見られない債権者による破産申立の概要と実務的な問題点等を説明して参りました。
    上記1の(1)ないし(3)等の問題点があるとしても,かかる債権者申立の破産が存在することを認識していただくことは,(広義の)債権回収の選択肢が増えるという意味で有用かと考えております。もし,実際に,そのような申立をお考えの場合には,ご相談いただければと存じます。

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